変化
「まったく、魔物どもの氾濫続きでやってられねぇぜ。」
「本当にな。貴族様も、魔法が使えない無能なんだから、せめて前に出て体を張って魔物を止めてみせろってんだよ。」
「権力にすがりつく無能どもめ。魔法が使えないなら、誰がお前たちを持ち上げるかっての。守ってくれないなら、お前らなんて居ないほうがマシだ。」
軍人も、雇われた傭兵も、皆が貴族を恨んでいた。守られていたころの安寧を覚えているからこそ恨む。
守ってくれていたから崇める、守ってくれないなら崇めない、そういう割り切った考えとも言えるし、今まで頭を押さえつけられていた恨みがあるせいかもしれない。
何にせよ、魔物に押されている現状をなんとかしたいということだけは共通していた。
「あ~あ、俺も魔法が使えたらなぁ。魔物なんて一瞬で燃やしてやるのに!」
気晴らしの冗談とともに、傭兵の男が近くの木を指差す。その瞬間、木がいきなり燃えだした。
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それは不思議な日だった。
人々の間で、魔法が使える人間が現れたのだ。
軍人や傭兵は驚きつつも喜び、魔物に対して攻勢をかけた。普通の人々は、魔法が使えることを喜びつつも、貴族に目をつけられるのではないかと不安になった。
貴族の中にも魔法が使える者が現れた。ただ問題なのは、魔法が使えなくなっていたはずの一族にも使える者が現れたことだ。
使えない者が使えるようになる、なんと奇妙なことだろう!
もっと奇妙なのは、次の日には魔法が使えなくなっていたことだ。使えたり、使えなかったり。その不安定な現れ方に、人々は戸惑った。
教会の神父の中には、これを神の恩寵だと言うものもいた。使えなくなるのはその者の信仰心が薄れたからだと。
しかし信仰心が篤い神父自身が使えなくなるのだ。説得力の無さに誰もが呆れた。
どんな理由にせよ、魔法が使えることに変わりはない。不安定ではあるものの、人々は魔法で生活を支えようと変化を始めた。
軍人や傭兵は魔物相手に少しずつ魔法を使い始めた。貴族は魔法が使えることで優位を取り戻そうとしたが、平民でさえ使えるようになってしまった今、むしろその滑稽な言動でさらに信頼を落としていった。
一番変化が激しかったのは悪人たちだろう。魔法で悪事を働くことをすぐに思いついた。しかしあっという間に後悔することになる。人に向けて魔法を使うと、一度目は魔法が使える。しかしそれ以降、どんなに努力しても魔法が使えなくなってしまったのだ。
不思議な日はそれ以降毎日続き、それが日常と感じるまでに長くはかからなかった。




