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悪化する世界

 貴族が魔法を使えなくなってから半年がたとうとしていた。この国は不穏な空気に包まれている。

 強い魔法を使えていた貴族ほど立ち直りが遅く、その領地では犯罪が多発していた。魔物を退治できずに壊滅に追い込まれた村も多いそうだ。

 逆に魔法の使えない元父の連盟は力を増している、と思いきやそこまでうまくは行っていないらしい。軍部の勢力が強くなりすぎて、そちらの発言力が増している。もともと魔法が使えなかったわけだが、他の貴族も同じ状態になったということで、軍や傭兵達が貴族全体を侮るようになってきたのだそうだ。


 貴族は領地を守れなくなっているし、軍部は自分たちこそ領地を治めるにふさわしいと増長するし、領民にとっては安心できない雰囲気だ。

 ことここに至って、王は必死になって国内の安定を図っているそうだ。遅いというかなんというか。まあ魔法が使えちゃってたから、それに頼ってしまうのも仕方ないというものだが。


 軍の発言力が高まっている、とはいうものの、軍も損耗率が高まっており、やはりこちらも追い込まれつつある。

 そういう八方塞がりになりかけた人の世にさっそうと現れた救世主、それはエルフ!なんとあのエルフの若者たちが小精霊を連れて救援にやってきたのだ。

 最初は、没交渉だったエルフが何をしにきたのかと疑っていたものの、その強さで一躍英雄と言われるようになっているそうだ。主に民衆の間に、だけど。

 軍も貴族も、手柄を奪っていくエルフには内心恨みを持っているだろう。でも魔物に対抗するために仕方なく参加してもらっているというところ。実際は助けてもらってるんだけど。

 エルフは何の見返りも求めず、助けては去っていくそうだ。これは英雄と呼ばれちゃうわ。軍も王も評価だだ下がりってもんだ。

 でも僕だけは知っている。あれは英雄願望でも奉仕の心でもない。ただの贖罪なのだ。自分たちが信仰する大精霊の願いを踏みにじったことへの罪悪感。

 ……まあでも、それをわざわざ指摘することもないか。助かっていることは本当だしね。


 なお、僕はと言うと、人死が増えた結果として増えた仕事、墓掘り人をやっている。大精霊の居た地下の部屋には、城から少し離れたこの墓地の、隠された通路から行く必要があるからだ。墓掘り人なら、いつ何時ここに居てもおかしく思われないからね。

 墓掘り人の仕事だけだと食っていけないので、引き続き冒険者もやっている。えっちらおっちら墓を掘りつつ、魔物をなんとか倒して売って、という元貴族とは思えないような落ちぶれっぷりだ。

 今日も多くの人々が死んでいく。そして墓碑も作られず、この町外れの共同墓地へと埋葬される。


 絶望が静かに広がっていた。


 ……そろそろ、いいかな。


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