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私の猫はバレてません!〜猫又であることを隠して、ご主人さまと子育てしますニャ!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第43話 皮算用するヴィルヘルムにゃ

 当時、なかなかハルトたち夫婦に子どもが出来なかった為、ハルトの父親が、妹を嫁がせるのではなく、妹の子をハルトたち夫婦の養子にする可能性を考えて、婿養子をとったのだ。


 嫁がせて、二番目の子どもを養子にもらう、というやり方もよくあるが、その場合婚家が口出しをしてくる。

 だから男爵家の三男を選んだのだ。単なる種馬として。


 だが、婿養子、という時点で、ヴィルヘルムは、このままハルトたち夫婦に子どもが出来なければ、自分がグランディック伯爵家を継ぐことになるのだ、と、逆玉のような気分で婿入りした。


 もちろん、娘しかいなかった場合はそういうケースもある。

 その場合は、当然縁戚の中から選び、婿に据えるか、養子にするかのどちらかを選ぶ為、なんのゆかりもない男爵家から婿を取ったりはしない。


 それでも、グランディック伯爵家に親戚が少なく、次期当主であるハルトが死ねば、そういうケースもなくはなかった。


 だが、ハルトの妹が先に死んだ時点で、ヴィルヘルムがグランディック伯爵家の縁戚でいられるのは、当主の胸先三寸ということになる。


 夫に先立たれた貴族婦人は、その相手が現在の当主ではなく、次代の当主であった場合、なんの権利も与えられない。


 貴族籍すらも、実家でも婚家でもない、宙に浮いた状態となる。婚家か実家が受け入れなければ、貴族ですらいられなくなる。


 それと同じで、次期当主ですらない女性の配偶者には、なんの権利も与えられない。ヴィルヘルムも同じ状況であるのだ。


 貴族は後継者以外は、どこかの貴族に嫁ぐか婿入りしない限りは、貴族でいられなくなる。実家の財産を継ぐ立場にない、三男のヴィルヘルムを、実家が受け入れることはない。


 だから貴族の娘は必至で結婚相手を探すし、平民落ち確定の次男三男も、せめて食うに困らないよう、騎士団などに就職できるように、剣の腕を磨くのだ。


 親が教えてくれる場合もあるし、そうでなくとも、貴族が通う学校の授業で教えてもらえるものであるのだが、学生の時点で婿入りが確定していたヴィルヘルムは、まともに授業など受けてはいなかった。貴族の学校や実家で当然のように教えられるそれを、まるで頭に入れずに過ごしてきた。


 法に従えば、当然次の当主はランディスになるし、ランディスが死んだ場合は、既にグランディック伯爵家との縁が切れかけたヴィルヘルムではなく、縁戚の中の誰かが選ばれるか、爵位を国に返上するかのいずれかとなる。


 だが、種馬としてもらわれたにもかかわらず、ヴィルヘルムは妻との間に子をなすことが出来なかった。

 せめて息子がいれば、ハルトとランディスがいなくなれば、その子どもの後見人として、グランディック伯爵家を手中におさめることは出来ただろう。


 どちらにせよ、今のヴィルヘルムの手に、グランディック伯爵家の爵位は転がり込んでは来ない。それを理解していないヴィルヘルムの存在に気付いたルナが、オーデンハルム公爵を操り、ハルトたちを亡き者にする為の隠れ蓑として、ヴィルヘルムをそそのかしたのだった。


 オーデンハルム公爵家を後ろ盾につけたと思っていたヴィルヘルムは、ある午後には、オーデンハルム公爵家出入りの商人に向かってこうまで言った。


「近い将来、グランディック伯爵家の商売ルートは大幅に変える。そのときはお前にも優先的に口を利いてやるから、今のうちに俺に顔を売っていて損はないぞ。うちの商会と優先的に取引をしてやる。」


 商人は「は、はあ……」と曖昧に返事をしつつ、後でこっそり同僚に「あの方、最近おかしいぞ」と漏らしていた。ヴィルヘルムに爵位がわたる筈などないことを、商人ですら理解していたからだ。


 ヴィルヘルム自身は、そんな周囲の温度差に全く気づいていなかった。

 オーデンハルム公爵家という絶対的な存在に「認められた」気でいたからだ。


「あの方が俺を使っているということは、俺に価値があるということだ。単なるハルトの妹の入り婿だった頃とは違う。もう、落ちぶれた傍流なんかじゃない。」


 次に、服装にも気を配り始めた。これまで以上に派手な服やカフスなどをつけ、髪にも香油をつけ、通行人の視線を意識するようになった。


 鏡の前で何度も自分を確認しては「次期伯爵の風格が出てきた」と呟く。

 夜になると、彼は一人で未来の計画を練った。


 伯爵の座に就いたら、まずハルトをどこか遠い領地に追いやる。

 子どもたちは施設か、遠くの親戚に預ける。オーデンハルム公爵にはハルト一家を始末するよう言われているが、何も殺さなくてもよい。それは最終手段だ。


 ハルトの父親の葬式が行えない時点で、ハルトはグランディック伯爵家を正式に継ぐことは出来ない。その間に婚外子であるミシェルと結婚し、オーデンハルム公爵の後押しで、後継者を自分にするよう、他の貴族たちに根回ししてもらえばいい。


 貴族の後継者は最終的に国王が認めなければなることが出来ない。

 オーデンハルム公爵家程の力があれば、貴族たちに自分の方がふさわしいと言わせることが出来る。そうすれば、国王さまはハルトを後継者として認めない。


 グランディック伯爵家を継いだら、屋敷は自分の趣味に合わせて改装し、アマンダを正式に愛人の座に置くか、あるいはもっと身分の高い女を迎えるか——。

 考えれば考えるほど、興奮で眠れなくなった。




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