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死亡扱いの最強冒険者、13歳の姪として再登録しました ――“故人”のままバレずに現役復帰します――  作者: HIME-HIRO


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第3話 面影と影(中編)①

本日は二話更新いたします。


長くなったので分割したため、全13話になります。

★第3話 面影と影(中編①)


 マキは、クルドの街で“新人”として順調に実績を積んでいた。


 ――順調すぎるほどに。


 もっとも、本人にしてみれば、別に急ぐ理由などどこにもない。

 長年の蓄えは十分――

 正直、何もしなくても数年は遊んで暮らせる。


 だからこそ今は、あえて“新人冒険者”の気分を味わっていた。


 薬草採取。 

 低級魔物の討伐。 


 朝から依頼を受け、夕方に戻ってくる――そんな駆け出しらしい日々。


 ……ただし。


 採取のついでに少しだけ森の奥へ足を伸ばし、そこで出くわした中位や高位の魔物と、ちょ〜っとばかり“遊んで”いるだけだ。


 その結果、換金用の素材が増えてしまうのは――まあ、仕方のないことではないだろうか。


「……またあの子よ」


 受付の女が露骨に顔をしかめる。


「――討伐数、おかしくない?」


 横で、クラン〈翼〉の娘たちもひそひそと姦しい。


「新人の働きじゃないわよね」

「絶対なにかからくりがあるって」


 マキは聞こえているが、にっこり笑って無視する。


(なんだか、懐かしいねぇ……)


 心の中で笑う。

 昔も、同じだった。


 ――できる奴は、煙たがられる……

 やれやれ。


「――で、今日は何持ってきたの?」


 棘のある声――


 マキは軽く肩をすくめる。


(前から思ってたが、ギルドもいつまで放置プレイを続けるのやら……よっぽど人材不足なんだろうか……?)


「期待するほど大したもんじゃないですよ?」


 そう言って、素材を入れた袋をカウンターへ置く。


 どさり、と重たい音。


 また空気がざわついた。


「……ほんと、可愛くない」


「もう、可愛らしいって歳でもないですからね。褒め言葉として受け取っとくきますよ」


 軽く返す――


 別に、そろそろ棘だらけの薹が立ちそうな受付嬢を当てこすったわけではない。


 ……たぶん。


 だが、どうやら綺麗にカウンターが入ったらしい。


「~~〜〜っ」


 ぴくぴくしている。


(……まっ、これでいい)


 おちょくりがいはあるし、深入りされるよりはよほどマシだ。


 その様子を、少し離れた場所から見ている男がいた。


 ライアン・ローデン。

 クラン〈翼〉の代表。


 そして、カウンターの近くでは――


「また見てる……」

「最近あの新人ばっか気にしてない?」


 クランのかしまし娘たちが、不満げにひそひそ声を交わしていた。


 面白くない――

 それが顔に出ている。


 確かに、ライアンは昔から面倒見がいい。

 だが、最近は妙にマキへ視線を向けることが多かった。


「ライアン様なら普通じゃない?」

「どこがよ」

「この前だって、素材運ぶの手伝ってたし」

「私らにはそんなことしないのに」


 完全に拗ねている。

 ライアンはそんな声を聞き流しながら、無意識にマキへ目を向けていた。


 剣を振る時の踏み込み。

 肩をすくめる癖。

 少し意地の悪い笑い方。


「…………」


 胸の奥が、妙にざわつく。

 もちろん別人だ――

 年齢は違う。

 背丈も違う。


 それなのに。


 ふとした瞬間、“あの人”が重なる。


「……似すぎなんだよな」


 ライアンが、ぼそりと漏らす。


「え? 誰にですか?」


 近くにいたクランの娘が首を傾げた。


「……なんでもない」


 ライアンは短く返す。


 だがその後も、視線だけは無意識にマキを追っていた。




 ――そんなある日。


 雨の日が続き、野暮用も重なって、気づけば一週間以上も森から遠ざかっていた。

 久しぶりの森に鼻歌まじりで足を踏み入れたマキは――その直後、ぴたりと足を止めた。


「……違うな……なんか変だ」


 木々のざわめきに混じる空気が、いつもと違う。


やけに重苦しい。


 魔物の気配自体は珍しくない。

 この森では日常だ。


 だが――妙だった。

 気配が散っていない。


 マキはゆっくりと目を閉じる。


 体内を巡る魔力を、静かに外へ広げた。


 十カ月――森の深層で積み重ねた修行の中で、いつしか身につけていた魔力探査。

 その感知範囲は、並の魔術師などとは比較にならない。


 波紋のように。

 薄く、広く………………


 放たれた魔力が木々の間をすり抜け、森の奥深くへと染み込んでいく。


「……多い」


 大物の反応が次々と返ってくる。

 一つや二つではない。

 十。

 二十。

 その先にも、まだいる。

 しかも位置が偏っていた。


 本来なら縄張り争いで散っているはずの魔物たちが、同じ流れに沿って動いている。


「統率……されてる?」


 マキは眉をひそめた。

 ありえない話ではない。


 ――上位種。

 ……あるいは、群れを率いる特異個体。


 だが、それならなおさら、おかしい。


 統率されているなら、本来こういう移動はもっと秘匿されるはずだ。

 気配を殺し、散開し、悟られぬよう進む――それが“率いる者”のやり方だ。


 それなのに――


 遠くから伝わる振動。

 重い足音。

 しかも、それは止まらない。

 ゆっくりと、だが確実に――こちらへ近づいてきている。


 まるで、見つけられることを前提にしているかのように。


「……いや、待て」


 マキの目が細まる。


 ――わざと、見せている?

 なら――


「……もしかして……陽動か?」


 ぽつりと漏れる。


 西へ意識を向けさせるための動き。

 だとすれば、本命は別にある。


 もし守備を西へ寄せれば、その隙を突かれる。


 ――いや、仮にそうでなくても、この規模の群れを正面から受ければ、街が持ちこたえられる保証はない。


 どちらに転んでも、まずい。

 ただの魔物の群れでは済まない。


 マキの表情から、軽さが消えた。


 この規模。

 この統率。


 勘違いで済ませていい話じゃない。

 もっと詳しく調べる必要がある。

 しかも――一刻も早く。


「ったく……面倒なことになってきやがったなぁ」


 小さく舌打ちすると、マキはそのまま急ぎ街へと引き返した。

次は14時10分に更新いたします。

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