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『塾が不動産になった日』 ――子どもは減った。でも、子ども一人に乗る不安とお金は増えた。その日、駅前の塾は、ただの教室ではなくなった――

✦『塾が不動産になった日』


――子どもは減った。

 でも、子ども一人に乗る

 不安とお金は増えた。

 その日、駅前の塾は、

 ただの教室ではなくなった――


………


「おじいちゃん、

 少子化なのに、

 なんで塾を不動産会社が買うん?」


ゆづきが、

スマホを見ながら言った。


画面には、

ヒューリックが

鉄緑会を買ったという

ニュースが出ていた。


僕は、しばらく黙っていた。


ヒューリック。


名前だけ聞くと、

英語教材の会社みたいにも見える。


だが、

実際は不動産会社だった。


駅前のビルを持ち、

病院やシニア住宅やホテルや

オフィスを見てきた会社。


その会社が、

東大受験で有名な塾を買った。


「それはな、ゆづき」


僕は、

湯飲みを置いた。


「子どもが減ったから、

 教育市場が終わるんじゃない。


 子どもが減ったから、

 残った子ども一人に対して、


 親の不安とお金が 

 集中し始めたんじゃ」


ゆづきは、

眉を上げた。


「怖っ。

 子どもが高級物件に

 なっとるやん」


「そうじゃ」


僕はうなずいた。


「今の日本では、

 塾が不動産になり始めたんじゃ」


………


★目次


■第1章 

 子どもは減ったのに、

 教育は買われた


■第2章 

 ベネッセが手放し、

 不動産屋が拾った理由


■第3章 

 7.5兆円の支援マネーは

 どこへ流れるのか


■第4章 

 進研ゼミ型の時代が 

 曲がり角に来た


■第5章 

 鉄緑会は塾ではなく、

 教育界の一等地だった


■第6章 

 駅前ビルが、

 受験不安を集め始めた


■第7章 

 子ども一人に、

 親と祖父母の財布が乗る


■第8章 

 AIが安い教育を増やし、 

 リアル上位塾を高級化する


■第9章 

 教育格差は、

 地価に埋め込まれる


■第10章 

 カードで払ったのに、

 店に現金が届かない


■第11章 

 全東信破綻が見せた、

 キャッシュレス社会の血管


■第12章 

 長期金利2.9%が、

 地方の資金繰りを冷やす


■第13章 

 地方銀行は、

 地域外で転んで

 地域内を冷やす


■第14章 

 子育て支援と地方金融は、

 同じ人口動態の表と裏


■第15章 

 Z世代よ、

 未来は教室と通帳の間にある


………


■第1章 

 子どもは減ったのに、

 教育は買われた


普通に考えれば、

出生数が減る国で、

教育産業は縮む。


2025年の日本の出生数は

67万1236人。


10年連続で

過去最少と報じられた。


合計特殊出生率も1.14。


数字だけ見れば、 

教育は斜陽産業に見える。


ところが、

その同じ時期に、

不動産会社が東大受験塾を買った。


ここに、

今の日本のねじれがある。


子どもの数は減っている。


だが、

教育熱の高い家庭は

簡単には消えない。


むしろ、

子どもが一人なら、

親はこう考える。


「この子だけは

 失敗させたくない」


昔は兄弟二人、

三人に分けていた教育費が、

一人に集中する。


中学受験。

英語。

プログラミング。

個別指導。

医学部。

東大。

海外大。

探究学習。

メンタルケア。


子どものランドセルの中に、

親の不安と国家の成長戦略まで

詰め込まれる。


重すぎる。


だが、市場としては

そこにお金が落ちる。


これが

一つ目の新しいトレンドだ。


★新しいトレンド1

少子化は

教育市場を消すのではなく、

上位教育を濃縮する。


★リアルな数字

出生数67万1236人。

合計特殊出生率1.14。

子どもは減る。

しかし、一人に乗る

教育費と不安は増える。


■第2章 

 ベネッセが手放し、

 不動産屋が拾った理由


ゆづきが言った。


「でも、おじいちゃん。

 ベネッセって

 教育の大手じゃろ?

 なんで

 鉄緑会を手放したん?」


「そこが面白いんじゃ」


ベネッセは、

広く薄く教育を届ける会社だった。


進研ゼミ。

しまじろう。

通信教育。

全国の家庭。

大量会員。


これは、

マス教育の王様だった。


だが、時代が変わった。


無料動画がある。

AI教材がある。

学習アプリがある。

学校にもタブレットが入った。

個別指導も増えた。

中学受験塾も強くなった。


つまり、

全国一律に教材を届けるモデルは、

昔ほど強くない。


一方で、

鉄緑会は真逆だった。


広く薄くではない。


狭く濃く。


東大。

医学部。

難関中高一貫。

高所得層。

高単価。

選抜感。

親の安心。


ベネッセが手放したのは、

教育が終わったからではない。


マス教育の会社にとって、

鉄緑会という

「濃すぎる資産」の

位置づけが

難しくなったからだ。


そしてヒューリックは、

そこに価値を見た。


教材会社には

特殊な塾に見えた。


不動産会社には、

駅前に高所得親子を集める

資産に見えた。


同じ塾でも、

見る人が変われば値段が変わる。


まるで古い壺である。


家族には邪魔な置物。

骨董屋には宝。

メルカリには

送料込みで悩む物体。


★新しいトレンド2

教育の価値は、

会員数から顧客の濃度へ移った。


★リアルな数字

ベネッセ型の

大量会員モデルは縮み、

上位塾は少人数でも

高単価で価値を持つ。

ヒューリックは

教育事業を有望マーケットと位置づけ、

リソー教育グループを

2024年5月から

連結子会社にしている。


■第3章 

 7.5兆円の支援マネーは

 どこへ流れるのか


政府は少子化対策を強めている。


こども家庭庁の

2026年度概算要求は

7兆4229億円。


子育て支援の加速化プランは

3.6兆円規模。


もちろん、

そのお金のすべてが

塾へ行くわけではない。


保育。

児童手当。

妊婦支援。

育休支援。

医療。

給食。

学童。

生活費。


必要なところはたくさんある。


だが、

中高所得層の家庭では、

家計に入った支援の一部が

教育に回りやすい。


「せっかくなら

 子どものために使おう」


「周りが塾に行くなら、

 うちも」


「この子だけは

 安全な道に乗せたい」


そうして、

支援マネーは変換される。


家計支援。

教育課金。

上位塾のブランド価値上昇。

駅前教室の価値上昇。

不動産大手の参入。


政府は子育てを支援する。

親は塾に払う。

不動産会社は、

その塾が入るビルと人流を見る。


霞が関を出たお金が、

最後に駅前の塾ビルで靴を脱ぐ。


いや、靴は脱がない。

最近の塾は土足である。


★新しいトレンド3

子育て支援マネーの一部は、

教育産業と駅前不動産へ流れる。


★リアルな数字

こども家庭庁の

2026年度概算要求は7兆4229億円。

加速化プランは3.6兆円規模。


■第4章 

 進研ゼミ型の時代が曲がり角に来た


昔、進研ゼミは強かった。


毎月教材が届く。

赤ペン先生が返ってくる。

親は安心する。

子どもはたまにためる。


あの封筒には、

昭和と平成の

家庭学習の空気が入っていた。


だが、今は違う。


子どもは動画を見る。

AIに質問する。

アプリで解く。

塾で個別に見てもらう。

学校からもタブレットが来る。


家庭学習の蛇口が増えすぎた。


昔は、進研ゼミが水道だった。

今は、蛇口だらけで、

どれをひねればいいのか

わからない。


だから

マス通信教育は難しくなった。


会員数を

たくさん抱えること自体が、

昔ほど強みではなくなった。


大事なのは、続くか。

成果が出るか。

親が納得するか。

子どもが机に向かうか。


教材は届いた。

でも子どもは届かなかった。


全国の家庭で、

そんな悲しい事件が起きてきた。


★新しいトレンド4

マス通信教育は、

少子化だけでなく、

AI・アプリ・個別指導に削られる。


★リアルな数字

出生数の減少は

約67万人まで進んだが、

マス通信教育の苦戦は

単なる人口減以上の

構造変化である。


■第5章 

 鉄緑会は塾ではなく、

 教育界の一等地だった


鉄緑会の価値は、

机や椅子や黒板ではない。


ブランドだ。


「東大に強い」

「医学部に強い」

「上位層が集まる」

「ここにいるだけで安心できる」


この安心が高い。


親は授業料を払っているようで、

実は不安への保険料を払っている。


鉄緑会は、

教育界の一等地である。


表参道の角地のようなものだ。


同じ面積でも、

場所が違えば値段が違う。

同じ授業時間でも、

ブランドが違えば値段が違う。


ヒューリックは

不動産会社である。


だから、

これが見えたのだと思う。


鉄緑会は、ただの塾ではない。


高所得親子が毎週通う、

駅前の希少資産。


つまり、

教育の看板を持った不動産だった。


★新しいトレンド5

上位塾は、

教育サービスから希少資産へ変わる。


★リアルな数字

ヒューリックは、

こども教育事業を

「政府の支援策の後押しもある

 有望マーケット」

と説明している。


■第6章 

 駅前ビルが、受験不安を集め始めた


不動産会社にとって、

塾は良いテナントだ。


毎週、人が来る。

夜も人が来る。

親が送迎する。

長期講習で人が増える。

周辺のカフェや飲食や書店も動く。


しかも、

上位塾に通う家庭は教育熱が高い。


駅前ビルにとって、これは強い。


昔の駅前は、銀行、百貨店、

証券会社、居酒屋が強かった。


これからは、

塾、小児科、学童、自習室、

保護者カフェが強くなる。


駅前の顔が変わる。


夜のビルに、

酔っ払いではなく、

中学生が入っていく。


それは良いことなのか、

怖いことなのか。


たぶん、両方だ。


★新しいトレンド6

塾はテナントではなく、

人流エンジンになる。


★リアルな数字

「こどもでぱーと」は

中野とたまプラーザに同時開業し、

TOMASや伸芽会などを含む

子育て拠点として展開された。


■第7章 

 子ども一人に、

 親と祖父母の財布が乗る


少子化で子どもが減る。


だが、

日本には高齢者の金融資産が多い。


親は住宅ローンや物価高で苦しい。

しかし祖父母には

預金や年金や

不動産がある場合がある。


孫が少なければ、

その孫に資金が集中する。


「孫のためなら」

「教育だけは」

「医学部に行けるなら」

「海外でもいいから」


こうして教育費は、

親の財布だけではなく、

三世代の財布で払われる。


教育費は、

家計支出であると同時に、

相続前倒しになる。


祖父母の老後資金が、

孫の夏期講習に変わる。


なんとも現代的で、

少し切ない。


★新しいトレンド7

教育費は、

親の支出から三世代の

資産移転へ変わる。


★リアルな数字

日本全体では

高齢者世帯に金融資産が偏り、

子どもは67万人台まで減る。

少ない孫に

資金が集中しやすい。


■第8章 

 AIが安い教育を増やし、

 リアル上位塾を高級化する


AIが出てくると、

教育は安くなる。


わからない問題を聞ける。

英語の会話もできる。

作文も添削できる。

数学の解き方も説明してくれる。


だから、

普通の知識提供は安くなる。


だが、不思議なことに、

上位塾の価値は

逆に上がる可能性がある。


なぜなら、

富裕層が買っているのは

知識だけではないからだ。


競争する仲間。

先生の目。

親の安心。

ブランド。

情報。

受験ルート。

空気。


これはAIだけでは作りにくい。


AIは安い先生を増やす。

しかし、リアルな

上位コミュニティは高くなる。


無料のAI先生と、

高額な鉄緑会。


教育は二極化する。


安い水と高級ワインみたいになる。


どちらも液体だが、値段は違う。


★新しいトレンド8

AI教育は低価格化を進める一方、

上位リアル塾の希少性を高める。


★リアルな数字

AI教材、動画、学校ICTが

広がる中で、

ヒューリックは

リアルなこども教育事業を

有望領域として拡大している。


■第9章 

 教育格差は、 

 地価に埋め込まれる


教育は住所と結びつく。


どの駅に住むか。

どの学校に通えるか。

どの塾へ通えるか。

夜に安全か。

親が迎えに行けるか。

駅前に自習室があるか。


教育熱の高い家庭は、

教育環境のある街を選ぶ。


すると地価が上がる。

また教育熱の高い家庭が集まる。

塾が増える。

小児科が増える。

カフェが増える。

また地価が上がる。


逆に、

教育インフラが弱い街は

選ばれにくくなる。


教育格差は、

偏差値だけでなく、

地価に埋め込まれる。


これはかなり怖い。


成績表より前に、

住所で差がつく。


「努力しろ」と言われても、

最寄り駅に

上位塾がない子どももいる。


努力は大事だ。

だが、電車代も大事だ。


★新しいトレンド9

教育格差は、

都市格差・駅前格差へ変わる。


★リアルな数字

ヒューリックは

教育特化型ビル

「こどもでぱーと」を展開し、

教育と不動産を結びつけている。


■第10章 

 カードで払ったのに、

 店に現金が届かない


ここで話は、急に商店街へ移る。


ゆづきが言った。


「おじいちゃん、

 塾の話から、なんで

 カード会社の倒産になるん?」


「同じ話なんじゃ」


「どこが?」


「どちらも、人口が減り、

 金利が上がり、

 家計の現金が薄くなった

 日本の話じゃ」


全東信というカード決済代行会社が

破産した。


負債は約1259億円。


この会社は、

飲食店などのカード売上を

早く入金する仕組みに関わっていた。


客はカードで払う。

店は売上が立ったと思う。

だが、現金が店に入るまでには

時間がある。


その時間差を埋める会社が止まると、

店は困る。


売上はある。

でも通帳に現金がない。


これは怖い。


会計上は生きている。

通帳上は息切れしている。


★新しいトレンド10

キャッシュレス社会では、

売上より

入金のタイミングが命になる。


★リアルな数字

全東信の負債は

約1259億円と報じられた。


■第11章 

 全東信破綻が見せた、

 キャッシュレス社会の血管


キャッシュレスは便利だ。


客はカードを出すだけ。

店も会計が早い。

インバウンドにも対応できる。


だが、その裏には血管がある。


カード会社。

決済代行会社。

早期入金サービス。

銀行融資。

加盟店口座。


この血管のどこかが詰まると、

現金が届かない。


全東信の破綻は、

キャッシュレス社会の

血管が詰まった事件だった。


しかも、

その血管を支えていたのは

地域金融機関だった。


地方銀行や

信用金庫が貸していた。


地元の預金が、

地域外の決済金融会社へ流れ、

その会社が倒れ、

地銀に損失が戻る。


地域の血が、 

よその町でこぼれた。


そして、

地元の中小企業への融資が

慎重になるかもしれない。


これは一社の倒産ではない。


地方の現金循環の事故である。


★新しいトレンド11

キャッシュレスの裏側に、

第二の短期金融システムが

育っていた。


★リアルな数字

東和銀行は

全東信向け貸出80億円のうち、

未保全58億8600万円を

引き当てる方針と報じられた。


■第12章 

 長期金利2.9%が、

 地方の資金繰りを冷やす


2026年7月、

日本の10年国債利回りは

2.9%近くまで上がった。

30年ぶりの高水準と報じられた。


金利が上がると、

銀行には良い面もある。


貸出金利が上がる。

利ざやが改善する。


だが、

借り手が弱いと話は逆になる。


返済負担が増える。

借り換えが難しくなる。

延滞が増える。

倒産が増える。

銀行は引当金を積む。

融資が慎重になる。


つまり、

金利上昇は銀行の栄養剤であり、

借り手の血圧上昇でもある。


地方の零細企業は、

物価高、人件費高、電気代、

カード手数料、入金遅れ、

金利高を同時に受ける。


これは五重苦である。


時代劇なら、

もう悪代官が五人いる。


★新しいトレンド12

金利上昇は、

低金利時代に隠れていた

信用リスクを表に出す。


★リアルな数字

2026年7月9日、

10年国債利回りは2.900%まで

上昇したと報じられた。


■第13章 

 地方銀行は、

 地域外で転んで地域内を冷やす


地銀や信金は、

本来、地域の血管だ。


地域の預金を集め、

地域の会社へ貸す。


しかし低金利時代、

普通の融資だけでは

収益が足りなかった。


そこで、

少し利回りの取れる先へ

貸したくなる。


決済代行。

ファクタリング。

不動産。

介護。

再エネ。

地域外の金融っぽい会社。


うまくいけば収益源になる。

だが、

失敗すると地元に痛みが戻る。


全東信の破綻は、

その一例に見える。


地方銀行が地域外で損をすれば、

地域内の融資姿勢が慎重になる。


運転資金を借りたい飲食店。

設備を更新したい町工場。

人件費を払いたい小売店。


そういう会社に影響する。


全国ニュースでは小さくても、

商店街では大事件になる。


★新しいトレンド13

地銀の損失は、

地域の貸し渋り心理を通じて

内需を冷やす。


★リアルな数字

全東信破綻を受け、

金融庁は

地域銀行・信用金庫・

信用組合への影響調査に

乗り出したと報じられた。


■第14章 

 子育て支援と地方金融は、

 同じ人口動態の表と裏


ここで、

教育の話と全東信の話がつながる。


一見、

別のニュースに見える。


ヒューリックが鉄緑会を買う。

全東信が破産する。

10年国債利回りが2.9%へ上がる。

出生数が67万人になる。

こども家庭庁予算が7兆円台になる。


しかし、

これは同じ日本の表と裏だ。


表では、子どもが減るから、

残った子どもに

支援と教育費が集中する。


裏では、

現役世代や零細企業の

現金余力が細り、

カード、後払い、早期入金、

銀行融資で何とかつないでいる。


上では教育が高級化する。

下では生活と商売が前借り化する。


つまり、

日本は二つの国になりつつある。


一つは、

駅前の上位塾に通う子どもの国。


もう一つは、

カード入金を待つ商店街の国。


どちらも日本だ。


どちらも

少子高齢化の中にある。


どちらも

金利と物価に揺れている。


★新しいトレンド14

同じ人口動態の中で、

上位教育は濃縮し、

地方内需は前借り化する。


★リアルな数字

出生数67万1236人。

こども家庭庁概算要求7兆4229億円。

10年国債利回り2.900%。

全東信負債約1259億円。


■第15章 

 Z世代よ、

 未来は教室と通帳の間にある


ゆづきは、

しばらく黙っていた。


「じゃあ、

 これからの日本って、

 どうなるん?」


「簡単に言えばな」


僕は言った。


「払える家庭の教育は、

 もっと高くなる。

 払えない家庭の生活は、 

 もっと細くなる」


「きついな」


「きつい。

 でも、

 見えたなら考えられる」


これから伸びるのは、

人数が増える市場だけではない。


人数は減っても、

お金が濃くなる市場がある。


上位教育。

医療。

介護。

シニア住宅。

駅前不動産。

小児科。

学童。

自習室。

親向けコンサル。


一方で、

苦しくなる場所もある。


地方の零細店。

カード入金に頼る飲食店。

普通の通信教育。

差別化の弱い塾。

金利上昇に弱い借り手。

現金余力のない家計。


これを見間違えてはいけない。


少子化は、

すべてを小さくするわけではない。


濃くする場所と、

干からびる場所を同時に作る。


それが今の日本だ。


ゆづきは、スマホを置いた。


「おじいちゃん、

 つまりヒューリックは

 塾を買ったんじゃなくて、

 未来の不安を買ったんじゃな」


僕は笑った。


「そうじゃ。 

 しかも駅前でな」


★新しいトレンド15

少子化時代の成長産業は、

人口が増える場所ではなく、

不安とお金が

濃く集まる場所に生まれる。


★リアルな数字

出生数は67万人台でも、

子育て支援予算は7兆円台へ。

全体の人数ではなく、

一人あたりの投資と不安が

市場を動かす。


………


❥Z世代のあなたへ


Z世代のあなたへ。


この話は、

塾に通っている子だけの

話ではありません。


あなたの将来の家賃。

あなたの給料。

あなたの奨学金。

あなたの親の住宅ローン。

あなたの地域の商店街。


あなたの子どもを

持つかどうかの判断。


全部につながっています。


これからの日本では、

ニュースを一つずつ見るだけでは

足りません。


ヒューリックが鉄緑会を買った。

全東信が倒れた。

10年国債利回りが2.9%になった。

出生数が67万人になった。

こども家庭庁予算が7兆円台になった。


一つずつなら、

別々のニュースです。


でも、つなぐと見えてくる。


子どもは減る。

だから、

上位の子どもには

お金が集中する。


現役世代は苦しい。

だから、

カードや後払いで生活をつなぐ。


零細店も苦しい。

だから、

カード売上の早期入金に頼る。


地銀も苦しい。

だから、

利回りを求めて地域外へ貸す。


金利が上がる。

すると、

その細い橋が揺れる。


未来は、

学校の教科書だけでは

わかりません。


教室と通帳の間にあります。


偏差値だけ見てもだめです。

金利だけ見てもだめです。

家計だけ見てもだめです。

会社だけ見てもだめです。


全部つながっています。


そして、

あなたが生きる2030年代は、

そのつながりを読める人が強い。


数字を見てください。


67万人。

7兆4229億円。

3.6兆円。

2.900%。

1259億円。

58億8600万円。


数字は冷たい。


でも、

数字の後ろには人がいます。


塾へ向かう子ども。

送迎する親。

カードで払う客。

入金を待つ店主。

融資を迷う銀行員。

追い込まれる社長。

未来を探す若者。


その人たちを想像できる人が、

これからの社会を読み解けます。


★あとがき

 ホームズとワトソンの

 やすきよ風漫才


ワトソン

「ホームズさん、大変です。

 塾を不動産会社が買いました」


ホームズ

「それは事件だな、

 ワトソンくん」


ワトソン

「ええ。黒板泥棒ですか?」


ホームズ

「違う。人流泥棒だ」


ワトソン

「人流泥棒?」


ホームズ

「鉄緑会に通う親子は、

 毎週駅前に来る。

 しかも高所得層だ。

 これは不動産会社から見れば、

 歩く家賃だ」


ワトソン

「歩く家賃!

 怖い言い方しますねえ。

 子どもがかわいそうです」


ホームズ

「かわいそうなのは

 子どもだけではない。

 商店街の店主もだ」


ワトソン

「今度は商店街ですか。

 話が飛びすぎです」


ホームズ

「飛んでいない。

 カードで払った客、

 入金を待つ店、

 立て替える決済会社、

 貸す地銀。

 全部一本の鎖だ」


ワトソン

「なるほど。

 客はカードで払った。

 店は売上を信じた。

 決済会社は立て替えた。

 銀行は貸した」


ホームズ

「そして、誰の手元にも

 十分な現金はなかった」


ワトソン

「うわあ。笑えないです」


ホームズ

「だから、

 やすきよ風に笑うしかない」


ワトソン

「ほな、ぼくがボケます。

 ホームズさん、

 少子化なら塾は

 なくなるんちゃいますの?」


ホームズ

「何を言うとるんや。

 子どもは減るが、

 親の不安は増えるんや」


ワトソン

「なるほど。

 子ども一人に、

 親の財布がドーン」


ホームズ

「祖父母の財布もドーン」


ワトソン

「政府の支援もドーン」


ホームズ

「駅前の家賃もドーン」


ワトソン

「最後に子どものリュックがバーン」


ホームズ

「重すぎるわ!」


ワトソン

「いや、

 ツッコミそっちですか!」


ホームズ

「ワトソンくん、 

 日本の未来はな、

 塾の教室だけにあるんじゃない。 

 銀行の通帳、

 カードの明細、

 国債の利回り、

 駅前のビル、

 全部に書いてある」


ワトソン

「つまり、

 事件現場はどこです?」


ホームズ

「駅前の塾ビルと、

 商店街のレジと、

 地方銀行の融資課だ」


ワトソン

「多すぎますやん!」


ホームズ

「これが現代の事件だ。

 犯人は一人ではない」


ワトソン

「じゃあ犯人は?」


ホームズ

「少子化、物価高、金利高、

 カード依存、教育不安、

 そして見て見ぬふり」


ワトソン

「多すぎて

 逮捕状が足りません」


ホームズ

「だから、

 まず数字を見るんだ」


ワトソン

「数字?」


ホームズ

「67万人。

 7兆4229億円。

 2.900%。

 1259億円」


ワトソン

「数字が

 しゃべり出しましたね」


ホームズ

「そうだ。

 数字は小声で真実を言う」


ワトソン

「でも小声すぎて、

 みんな聞いてません」


ホームズ

「だから小説にするんだ」


ワトソン

「最後はそこですか」


ホームズ

「そうだ。

 ニュースは一日で流れる。

 だが物語にすれば、

 若者の心に残る」


ワトソン

「ほなタイトルは?」


ホームズ

「塾が不動産になった日」


ワトソン

「怖いタイトルですなあ」


ホームズ

「怖い時代には、

 怖いタイトルがよく似合う」


ワトソン

「でも少し笑いも入れましょう」


ホームズ

「もちろんだ」


ワトソン

「なぜです?」


ホームズ

「泣いてばかりでは、

 次のページをめくれないからだ」


ワトソン

「なるほど。

 ほな最後に一言」


ホームズ

「子どもは減った」


ワトソン

「でも不安は増えた」


ホームズ

「その不安が

 塾を不動産に変えた」


ワトソン

「そしてカード社会の裏で、

 現金のポンプが止まった」


ホームズ

「ワトソンくん」


ワトソン

「はい」


ホームズ

「これは教育の話ではない」


ワトソン

「では何の話です?」


ホームズ

「日本の血流の話だ」


ワトソン

「うまいこと言うて、

 また読者を泣かせにきましたね」


ホームズ

「泣いた後に笑えばいい」


ワトソン

「ほな、やすきよ風に」


二人

「もうええわ!」


おしまい

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