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『エチレン・パニックの正体』 ――海峡が少し動いた朝。高値で抱えた人の手には、売れない在庫だけが大量に残った。――

✦『エチレン・パニックの正体』


✲ 海峡が閉じた。

 原油が上がった。

 世界は、石油の次に

 プラスチックの原料まで買い占めた。


――だが海峡が少し動いた朝。

 高値で抱えた人の手には、

 売れない在庫だけが大量に残った。――


………


★目次


■ 1 午前二時、 

   家が担保になった夢


■ 2 ホルムズ海峡が閉じた夜


■ 3 エチレン価格、

   百から百八十一へ


■ 4 月足のチャートが語ること


■ 5 ナフサ千三百ドル、

   七百八十八ドル


■ 6 ボンドロが消えた日


■ 7 狐の木の葉の小判


■ 8 ボンドロは

   備蓄できなかった


■ 9 マスクと米と、

   みんなの焦り


■ 10 石油王が

   十一ドル値下げした日


■ 11 中国の倉庫は

   世界の値段を動かす


■ 12 リチウム、ニッケル、

   木材、船賃


■ 13 エチレンは足りないのか、

   作りすぎなのか


■ 14 AI半導体という

   新しいボンドロ


■ 15 資源のない日本と、

   月足の結論


………


■ 1 午前二時、

   家が担保になった夢


午前二時だった。


祖父は、

喉の渇きで目を覚ました。


枕元のスマホが、

ぶるぶる震えていた。


地震速報かと思った。


だが画面に出ていたのは、

昔の勤務先に似た

証券会社の名前だった。


――追加保証金のお知らせ。

――不足額、一千八百万円。

――本日十五時までに、

 ご入金ください。


祖父は、

何度も画面を見直した。


原油。


ナフサ。


エチレン。


全部が赤かった。


赤いというより、

血の色だった。


「なんでじゃ……」


原油は、

百二十ドル台で買った。


ナフサは、

一トン千三百ドル近い所で買った。


エチレンも買った。


ホルムズ海峡が閉じた。


船が減った。


工場が止まる。


プラスチックが足りなくなる。


世界が困る。


だから上がる。


そう思った。


いや。


本当は、

もっと上がってほしかった。


「前に安い時に買わなかった。

 だから今度こそ、

 ここで買って取り返したい…!」


これが祖父の本音だ。


「百五十ドルもある」


テレビの解説者が言った。


「エチレンは、まだ足りない」


市場の人が言った。


「今買わない人だけが、

 置いていかれる!」


知らない誰かがSNSに書いた。


祖父は、

信じたい言葉だけを拾った。


そして夢の中で、

家が担保になっていた。


………


■ 2 ホルムズ海峡が閉じた夜


ホルムズ海峡は、

世界の石油が通る細い道だった。


そこが危なくなると、

石油だけの話では終わらない。


石油を精製する。


ナフサになる。


ナフサを熱で割る。


エチレンになる。


エチレンから、

ペットボトルができる。


食品の袋ができる。


洗剤の容器ができる。


医療用品ができる。


車の部品ができる。


「石油が止まると、

 プラスチックまで困るん?」


夢の中のゆづきが聞いた。


祖父はうなずいた。


「困る。


 だから、

 我先に買いたくなる」


「何を?」


「今月使う分だけじゃない。


 来月の分。


 再来月の分。


 ひょっとしたら

 足りなくなる分までじゃ」


祖父は、

ここが一番怖いと思った。


本当に必要な分を買うなら、

商売だ。


だが、

不安になって何倍も買うと、

それは商売ではなくなる。


「倉庫の中に、

 恐怖を積み始めるんじゃ」


………


■ 3 エチレン価格、

  百から百八十一へ


祖父は、

ゆづきに一枚の紙を見せた。


「これは、難しい値段を

 簡単にするための表じゃ」


――――――――――――――――

エチレン価格の動き

封鎖前=100として見る

――――――――――――――――


二月末 約800ドル/トン  100

三月  供給不安が広がる  上昇

四月中旬 約1,450ドル/トン 181


   100 → 181

   約8割上がった

――――――――――――――――


ゆづきは、

紙を見た。


「百だった物が、

 百八十一になったん?」


「そうじゃ」


「二倍にはなってないけど、

 かなり上がっとるな」


「一トン買う会社なら、

 六百五十ドル余計に

 払うことになる」


「百トンなら?」


「六万五千ドル」


「千トンなら?」


「六十五万ドル」


ゆづきは、

しばらく黙った。


「そんなに買う会社があるん?」


「ある。


 プラスチックの原料は、

 一袋の米と違う。


 船で来る。


 タンクに入る。


 工場に運ぶ。


 だから一回の量が大きい」


祖父は言った。


「価格が百から百八十一になった時。


 買った人は、

 エチレンを買ったつもりじゃった。


 でも本当は、

 海峡がずっと閉じる未来を

 買ったんじゃ!」


………


■ 4 月足のチャートが語ること


夢の中の証券会社で、

若い担当者が言った。


「日足を見てください」


そこには、

一日の中で上下する

細い線があった。


「怖いですね」


祖父が言った。


「日足は、

 今日の恐怖を見せます」


次に担当者は、

週足を出した。


「週足は、

 今週の騒ぎを見せます」


そして最後に、

月足を出した。


原油。


ナフサ。


木材。


リチウム。


コンテナ運賃。


皆、

大きな山を作っていた。


「月足は、

 何を見せるんですか?」


祖父が聞いた。


担当者は言った。


「人間が、

 何度も同じ場所で、

 同じ夢を買ったことです!」


祖父の目の前に、

原油の線が出た。


戦争前は七十ドル台。


危機で百二十六ドル近く。


その後、

七十ドル台へ戻った。


――――――――――――――――

原油の簡単な山

戦争前   70ドル台

危機の山  126ドル近く

直近    71.99ドル

――――――――――――――――


「海峡は、

 まだ完全には平和じゃないのに?」


祖父が言った。


「そうです」


担当者は答えた。


「でも市場は、

 “海峡が永遠に閉じる”

 という値段を先に売りました」


「エチレンも?」


「はい。


 エチレンは原油ほど、

 毎日の公開価格が見えません。


 だからこそ、勝手に

 “もう戻った”と

 決めつけたらいけません」


祖父は、

少し驚いた。


「じゃあ、

 何を見るんですか?」


「原油。


 ナフサ。


 輸送。


 工場の稼働。


 そして、

 倉庫の中です」


………


■ 5 ナフサ千三百ドル、

  七百八十八ドル


ナフサは、

エチレンの親みたいなものだった。


原油から作られる。


そしてエチレンを作る材料になる。


三月。


アジアのナフサは、

一トン千三百ドル近くまで上がった。


海峡が危ない。


船が危ない。


原料が届かない。


だから皆、

先回りして買った。


ところが六月。


ナフサは、

一トン七百八十八ドルまで下がった。


「えらい下がっとる」


ゆづきが言った。


「千三百から

 七百八十八じゃけえな…」


祖父は答えた。


「一トンで、

 五百ドルくらい違う」


 百トンなら、

 五万ドル。


 千トンなら、

 五十万ドル。


 一万トンなら、

 五百万ドル。


「高い時にたくさん買ったら?」


「倉庫の中で、

 損が増える」


「物はあるのに?」


「ある。


 でも買った値段より、

 今の値段が安い」


祖父は言った。


「倉庫の物は、

 買った時は財産じゃ。


 でも値段が下がると、

 帳簿では傷になる」


………


■ 6 ボンドロが消えた日


ゆづきは、

机の上に小さなシールを置いた。


ぷっくりしていた。


透明で、

飴玉みたいに光っていた。


「これ、ボンドロ

 おじいちゃん 知ってる?」


「ボンボンドロップシールの

 略じゃな」


少し前まで、

店にはなかった。


子どもが欲しがった。


親が探した。


遠くの店まで車で走った。


フリマでは、

定価より高い値段がついた。


「今買わないと無くなる!」


「次はもっと高い!」


「新品なら売れる!」


そんな言葉が、

SNSに並んだ。


最初は、

ただ可愛いシールだった。


ノートに貼る。


筆箱に貼る。


下敷きに貼る。


友達と交換する。


それで良かった。


だが途中から、

シールを貼る人より、

箱で抱える人が増えた。


「次に高く売れる!」


その言葉が、

シールの上に貼られた。


………


■ 7 狐の木の葉の小判


ゆづきは、

スマホを見ながら言った。


「この人、ボンドロを

 いっぱい買ったんじゃって。


 後から見たら、

 何でこんなに買ったんだろうって

 自分でも分からんらしい…」


祖父は、

少し黙った。


「狐に化かされたんじゃな」


「狐?」


「昔話ではな。


 狐に化かされた人は、

 木の葉を小判だと思って喜ぶ。


 ところが朝になると、

 手に残っとるんは

 葉っぱだけじゃ」


「ボンドロが葉っぱなん?」


「ボンドロは悪くない。


 貼って楽しむ人には、

 ちゃんと価値がある」


祖父は、

エチレンの表を指さした。


「だが、これが後で

 高く売れると思った瞬間。


 人はシールを見なくなる。


 次に焦って買う人の

 顔だけ見る」


「エチレンも?」


「同じじゃ」


祖父は言った。


「エチレンは、

 本来はペットボトルや袋になる。


 ちゃんと使われる物じゃ」


「じゃあ、なんで怖いん?」


「海峡が閉じる。


 足りなくなる。


 もっと上がる。


 そう聞いて、

 必要以上に倉庫へ積んだ瞬間じゃ」


祖父は、

ナフサの下がった数字を見た。


「気がついたら、

 ただのエチレンを握りしめとる」


………


■ 8 ボンドロは備蓄できなかった


ゆづきは、

古い筆箱を机に置いた。


「見て」


角に貼っていたボンドロが、

少し浮いていた。


透明だった部分が、

薄く黄色くなっていた。


「剥がれとる」


「半年くらい前に

 貼ったやつじゃって…」


ゆづきは、

未使用の袋も出した。


「こっちは貼ってないのに、

 少し黄ばんどる」


祖父は、

しばらく黙った。


「貼らなくても、

 時間は進むけえな」


「じゃあ、

 五万枚も持っとったら?」


「好きで貼るためなら、

 少しずつ使えばええ」


「高く売るためなら?」


祖父は答えた。


「時間が敵になる」


光。


熱。


湿気。


粘着力。


流行。


全部が、

在庫の値段を食べていく。


「原料を買い占めた人も、

 同じじゃ」


祖父は言った。


「原油はタンクで管理できる。


 ナフサも大きな設備で管理できる。


 でも、

 それで作った安い玩具。


 接着剤。


 包装材。


 透明な容器。


 シール。


 そういう物は、

 時間がたつほど売りにくくなる」


「狐の葉っぱじゃな」


「そうじゃ。


 小判に見えたものが、

 朝になると葉っぱに戻る…」


………


■ 9 マスクと米と、みんなの焦り


店からマスクが消えた。


一箱なら、

誰も責めない。


だが来週、

店に無いかもしれないと思った。


三箱買った。


隣の家も三箱買った。


会社も買った。


町内会も買った。


棚は空になった。


棚が空になると、

人はもっと買った。


最後に残ったのは、

押し入れのマスクだった。


米も同じだった。


足りないかもしれない。


来月は高くなるかもしれない。


だから一袋多く買う。


一袋が、

何百万人分集まる。


棚が空になる。


空いた棚を見て、

また買う。


「最初は、

 物が足りないのかもしれん」


祖父は言った。


「でも途中から、

 人間の落ち着きが

 足りなくなる」


マスク。


米。


ボンドロ。


石油。


ナフサ。


エチレン。


形は違う。


だが最後に人が買っているのは、

明日の安心だった。


………


■ 10 石油王が

   十一ドル値下げした日


「石油が足りないなら、

 なんで石油王が値下げするん?」


ゆづきが聞いた。


祖父は、

一番大事な話をした。


サウジアラビアは、

アジア向け原油の価格を、

一バレル十一ドル下げた。


「足りないはずの油を、

 なぜ安くするん?」


答えは、

売れ残るのが怖いからだった。


高値がつく。


すると、

売る側が増える。


OPECプラスも、八月から

一日十八万八千バレル増やす。


中東の船が動き始める。


アメリカの原油もある。


ロシアの原油もある。


中国は、

必要以上に急いで買わない。


すると売り手たちは、

急にお互いを見る。


「海峡より怖いのはな」


祖父は言った。


「海峡が少し開いた後じゃ」


「なんで?」


「売り手全員が、

 同じ買い手を

 奪いに行くからじゃ」


………


■ 11 中国の倉庫は

   世界の値段を動かす


夢の中で、

祖父は中国の巨大なタンク群を見た。


石油。


鉄鋼。


化学品。


EV。


電池。


そして空き部屋。


「中国は、

 世界で一番たくさんの

 未来の在庫を持つ国かもしれん」


祖父は言った。


不動産の傷を、

すぐには処理しない。


地方政府の借金も、

借り換えて延ばす。


工場も止めない。


安い製品を世界へ出す。


世界が嫌がれば、

さらに安くする。


「中国経済は

 おかしくなったの?」


ゆづきが聞いた。


「分からん。


 明日倒れる、

 という話ではない」


「じゃあ何が怖いん?」


「ずっと倒れずに、

 ずっと安売りし続けることじゃ」


中国のエチレンを作る力は、

二〇二五年に約六千六百万トン。


二〇二三年から

二〇二八年までに、

さらに約三千二百万トン増える

見通しもある。


「作る力はすごい」


祖父は言った。


「でも作る力と、

 儲かる力は別なんじゃ」


………


■ 12 リチウム、ニッケル、

   木材、船賃


祖父は、

いくつもの月足を並べた。


リチウム。


ニッケル。


木材。


コンテナ船の運賃。


「全部、

 同じ形じゃ」


リチウムは、

高値から約九十%下がった

時期があった。


EVが消えたわけではない。


鉱山と工場が、

増えすぎた。


木材は、

二〇二一年に一七〇〇ドルを超えた。


家を建てる人が増えた。


だが金利が上がると、

家を買う人が減った。


木材も下がった。


コンテナ船は、

運賃が八千ドルを超えた。


船が足りない。


港が詰まる。


商品が届かない。


そう言われた。


だが、

船が増えた。


港が動いた。


買う人も減った。


運賃は下がった。


「物が

 いらなくなったんじゃない」


祖父は言った。


「永遠に足りない、

 という値段が 

 いらなくなったんじゃ」


………


■ 13 エチレンは足りないのか、

   作りすぎなのか


韓国では、

石油化学の工場を減らしたり、

会社同士でまとめたりする話が

出ていた。


欧州でも、

古いエチレン工場を

閉める動きがある。


理由は簡単だった。


中国の大きな工場。


アメリカの安い原料。


中東の安い原料。


世界には、

エチレンを作る工場が

増えている。


「ホルムズ海峡が閉じたら、

 エチレンは 

 足りなくなるんじゃないん?」


「一時的には

 足りなくなるかもしれん」


祖父は言った。


「でも、

 世界全体で見ると、

 作りすぎの問題もある」


戦争のニュースは、

目の前の不足を大きく見せる。


だが少し離れて見ると、

別の問題がある。


「作る工場が多すぎる」


………


■ 14 AI半導体という

   新しいボンドロ


祖父は、

別のニュースを開いた。


AI。


HBM。


半導体メモリー。


データセンター。


電力。


冷却水。


土地。


韓国では、

半導体とAIへ

巨大投資が進んでいた。


アメリカでは、

Oracleが二〇二六年度に、

五百五十六億ドルを

設備投資に使った。


巨大IT企業全体では、

AIへ六千億ドルを超える

投資が進んでいる。


「AIは本物なんじゃろ?」


「本物の需要はある」


祖父は答えた。


「ここを間違えたらいかん」


AIは役に立つ。


半導体も必要。


データセンターも必要。


それは本当だ。


だが、

本物の需要と、

正しい値段は別だった。


「足りない物を作るのは正しい」


祖父は言った。


「でも、

 足りないと聞いた全員が、

 同じ日に

 同じ工場を建てたら危ない」


「ボンドロみたいに?」


「そうじゃ」


最初は、

欲しい子が買う。


次は、

友達より先に欲しい子が買う。


最後は、来週もっと

高く売れると思う人が買う。


工場は、

三年後。


五年後。


その時に、

似たような箱が

世界中で完成したら。


「誰が、

 こんなに買うんだ?」


という言葉が、

遅れてやって来る。


………


■ 15 資源のない日本と、

   月足の結論


夢の最後に、

祖父は日本地図を見た。


資源がない。


石油も少ない。


ガスも少ない。


人口も減る。


周りの国に、

遅い。


危機感がない。


何もしない。


と笑われるかもしれない。


だが、原油が

百二十六ドルから下がった時。


資源国は、

値引き表を抱えていた。


油田を増やした国。


設備を増やした国。


高値を前提に予算を組んだ国。


借金で開発した国。


皆が、

売り手になりすぎていた。


「日本が勝ったんじゃない」


祖父は言った。


「周りが勝とうとして、

 先に在庫と借金を

 積みすぎたんじゃ」


そこで祖父は、

夢から目を覚ました。


朝だった。


庭があった。


家があった。


追加保証金の通知はなかった。


ゆづきが台所から言った。


「おじいちゃん、

 怖い夢でも見たん?」


祖父は、

スマホの月足を見た。


原油は七十ドル台だった。


海峡は、

完全に平和ではなかった。


エチレンも、

公開価格だけで

「完全に元へ戻った」

とは言えなかった。


だから祖父は、

ゆづきに言った。


「分からん時はな。


 分かったふりをせんことじゃ」


「じゃあ、何を見るん?」


「価格。


 在庫。


 工場。


 そして月足じゃ」


「月足は何を教えるん?」


祖父は答えた。


「人間が、

 また高い所で

 同じ夢を買ったかどうかじゃ」


机の上には、

少し黄ばんだボンドロがあった。


ゆづきは、

それを一枚だけ手帳に貼った。


「高く売れんでも、

 これは残るね」


祖父は笑った。


「最初から

 貼るために買ったからじゃ」


恐怖は、

何度でも再販される。


けれど値段は、

いつも先に売り切れる。


………


★エチレン価格チャートの読み方


封鎖前を百とする。


二月末。

約八百ドル。

ここを百とする。


四月中旬。

約千四百五十ドル。

百八十一。


つまり。


エチレンは、

百から百八十一まで上がった。


ただし。


原油のように

毎日公開される値段ではない。


そのため、

四月以降に「完全に百へ戻った」と、

今は言わない。


小説で大事なのは、

こういうことじゃ。


原油は、

百二十六ドルから

七十ドル台へ戻った。


ナフサは、

千三百ドルから

七百八十八ドルへ下がった。


だからエチレンも、

高値をずっと続ける理由が

弱くなった。


だが、

実際にどこまで下がるかは、

工場の稼働。


船の運航。


中国の需要。


中東の供給。


在庫の量。


それを見ないと分からない。


………


❥ Z世代のあなたへ


誰かが言う。


「絶対に足りない」


「今しかない」


「来週はもっと高い」


その時だけ、

一度止まって考えてほしい。


自分は、

何のために買うのか?


貼りたいから買うのか?


使いたいから買うのか?


本当に必要だから買うのか?


それとも、

次にもっと高く買う人がいると

信じているだけなのか?


ボンドロを貼る人には、

ブームが終わってもシールが残る。


原油を使う工場には、

価格が下がっても仕事が残る。


だが、

次の買い手だけを待つ人には、

最後に請求書が残る。


………


★あとがき

 ホームズ、ワトソン、

 やすきよ風・相場漫才


ホームズ

「ワトソン君。

 エチレンは

 百から百八十一まで上がった」


ワトソン

「じゃあ、今はいくらです?」


ホームズ

「そこが大事だ。


 公開資料だけでは、

 毎日の連続した値段が見えない」


ワトソン

「分からんのに、

 戻ったと言うたら駄目ですね」


ホームズ

「その通り。


 分からん時に、

 分かったふりをするのが

 一番危ない」


✲やすし

「ほな原油を

 百二十六ドルで買うたら?」


✲きよし

「月足を見い!」


✲やすし

「エチレンを

 千四百五十ドルで買うたら?」


✲きよし

「在庫を見い!」


✲やすし

「ボンドロを五万枚買うたら?」


✲きよし

「貼れ!」


✲やすし

「五万枚も貼れんわ!」


✲きよし

「ほな最初から、

 五万枚も買うな!」


ホームズ

「結論だ、ワトソン君。


 相場で最後に残るのは、

 石油でもエチレンでもない」


ワトソン

「何です?」


ホームズ

「高値で買った人の、

 黄色いシールと請求書だ」


✲やすし

「ほな、未来は買わん方がええな」


✲きよし

「未来は買うてもええ!


 ただし、

 狐の木の葉を小判と思うな!」

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