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世界史が、進路希望票に落ちてきた ――円安とAIのニュースを見た日、ゆづきは古い鉛筆で、五年後の自分を書き始めた――

✦ 世界史が、進路希望票に落ちてきた


――円安とAIのニュースを見た日、

 ゆづきは古い鉛筆で、

 五年後の自分を書き始めた――


………


世界は、

戦争で壊れる前に、

進路希望票の上へ落ちてきた。


オーストラリアの

不動産価格の上昇が止まり、


日本円は

黒字を抱えたまま沈み、


韓国の若者は

ソウル行きの切符を探し、


インドの農民はスマホを頭につけて、

未来のロボットに

畑仕事を教えていた。


それは、

遠い国のニュースではなかった。


家賃になり、

ガソリン代になり、

スマホ代になり、

学費になり、

定期券になり、

バイトの時給になり、


ゆづきの五年後に、

静かに請求されていた。


高校一年生のゆづきは、

進路希望票を前にして、

スマホの画面を見つめたまま言った。


「おじいちゃん、


 世界史って、

 なんで私の進路まで

 決めに来るの?」


僕は湯のみを置いた。


「そこが怖いところじゃ。


 世界史はな、

 教科書の中で終わらん。


 最後には、

 学費と家賃と仕事になって、

 若い人の机の上に

 戻ってくるんじゃ」


ゆづきは少し黙ってから、

机の上に転がっていた

古い鉛筆を拾った。


「じゃあ私は、

 五年後の自分に、

 何を書けばいいの?」


僕は答えた。


「偏差値だけを

 見るな!


 給料だけを

 見るな!


 流行っている仕事だけを

 見るな!


 五年後、

 自分がどこで息をしたいか?

 誰と笑いたいか?


 どんな匂いのする場所へ

 帰りたいか?


 それを、

 まず一本目の線で書けばええ」


………


★目次


■第1章  

 オーストラリアの家が、

 なぜ上がらなくなったのか


■第2章 

 中国マネーの蛇口に、 

 バルブが付いた日 


■第3章 

 韓国の家は、金庫ではなく 

 ソウル行きの切符だった


■第4章 

 日本の玄関は、

 まだ世界の財布に開いていた


■第5章  

 黒字なのに沈む円、

 赤字なのに浮く豪ドル


■第6章 

 金利の湯気が、米俵を負かす


■第7章 

 資源国なのに、

 ガソリンで貧血になる国


■第8章 

 油田ではなく、

 製油所が戦場になった


■第9章 

 影の船団は、

 夜の海でホースをつないだ


■第10章  

 インドの農民は、

 ロボットの前世になった


■第11章 

 安い服は、 

 国の鍵を持って帰ろうとした


■第12章 

 レバノンの人々は、

 瓦礫のふるさとへ戻った 


■第13章 

 人間は、

 地図ではなく匂いで帰る


■第14章 

 世界史は、 

 最後に家計簿になる


■第15章 

 ゆづき、五年後の鉛筆を持つ


………


■第1章 

 オーストラリアの家が、

 なぜ上がらなくなったのか


その朝、

ゆづきはスマホを見ながら言った。


「おじいちゃん、

 オーストラリアって

 お金持ちの国なんでしょ?


 鉄鉱石もあるし、

 LNGもあるし、

 土地も広いし。


 なのに、

 不動産価格が

 止まっちゃったって

 変じゃない?」


「変じゃな。

 でも、

 そこが今の世界の

 面白いところなんじゃ」


「面白い?

 住めない人からしたら、

 全然面白くないよ」


「その通り。

 だから本当は、

 笑いながら見る話じゃない。


 でも、

 笑わんと見られんくらい、

 世界が変になっとる」


オーストラリアは資源国だ。

鉄鉱石もある。

石炭もある。

LNGもある。


けれど、家の値段は

上がらなくなっていた。


シドニーやメルボルンの住宅は、

前みたいに

ぐんぐん値上がりしない。


ゆづきは首をかしげた。


「なんで?

 オーストラリアって、

 お金持ちの国なんでしょ?」


「お金持ちの国でも、

 家を買える人が減れば、

 家の値段は上がらんのじゃ」


「欲しい人はいるのに?」


「いる。

 でもな、

 欲しいことと、

 買えることは別なんじゃ」


おじいちゃんは、

湯のみを持ったまま言った。


「たとえば、

 すごく欲しいスマホがあっても、

 毎月の支払いが高すぎたら

 買えんじゃろ?」


「うん。

 分割払いが重かったら無理」


「家も同じじゃ。


 住宅ローンの金利が上がると、

 毎月払うお金が増える。


 すると、

 家を買いたい人はいても、

 実際に買える人が減ってしまう」


「なるほど。

 欲しい人はいるけど、

 買える人が少なくなるんだ」


「そうじゃ」


さらに、

オーストラリアでは、

外国人が家を買うルールも

厳しくなってきた。


昔は、中国など海外のお金が、

シドニーやメルボルンの住宅に

流れ込んでいた。


海外のお金が入れば、

家の値段は押し上げられる。


でも今は、

その流れが弱くなっている。


中国の景気も

前ほど強くない。

海外にお金を出す動きも細っている。


オーストラリア側も、

外国人が住宅を買うことに

厳しくなっている。


つまり、

家の値段を上げていた力が、

いくつも弱くなったのだ。


ゆづきは言った。


「じゃあ、

 オーストラリアの家が

 人気なくなったんじゃなくて、


 買える人と、

 買いに来るお金が

 減ったってこと?」


「その通りじゃ。

 そこが大事なんじゃ」


おじいちゃんは、

紙に家の絵を描いた。


「家は本当は、

 人が住む場所じゃ。 


 ご飯を食べたり、

 寝たり、

 家族と話したりする場所じゃ」


「うん。

 それが普通だよね…」


「でも今の世界では、

 家はそれだけではない。


 投資家から見ると、

 家は値上がりを期待して

 買うものでもある」


「つまり、

 住むためじゃなくて、

 もうけるために

 買う人もいるってこと?」


「そうじゃ」


ゆづきは、

少し嫌そうな顔をした。


「なんか、

 家なのに家じゃないみたい」


「うん。

 屋根の形をした

 貯金箱みたいなものじゃな」


「でも、

 その貯金箱が高すぎたら、

 普通の人は住めなくなるよね」


「そこが問題なんじゃ。

 家が投資になりすぎると、

 暮らす人が追い出される」


ゆづきは小さく言った。


「オーストラリアの家って、


 おかしくなったんじゃなくて、

 お金の力で上がりすぎて、

 今、息切れしてるんだね」


「そうじゃ。家そのものが

 壊れたわけではない。


 でも、

 家を持ち上げていたお金の力が、

 弱くなってきたんじゃ」


おじいちゃんは、

最後にこう言った。


「家は、

 人が帰る場所のはずじゃ。


 でも世界が

 お金に熱を出すと、

 家まで値段のゲームにされてしまう。


 だから怖いんじゃ。

 住む前から、

 計算機の匂いがする家になる」


………


■第2章 

 中国マネーの蛇口に、

 バルブが付いた日


おじいちゃんは

紙に蛇口の絵を描いた。


「昔はな、

 シドニーやメルボルンの住宅に、

 中国マネーという

 水が流れ込んでいた」


「水?」


「海外の富裕層、

 留学生の家族、投資家。


 そういうお金が

 住宅価格を押し上げたんじゃ」


「じゃあ今は?」


「蛇口に

 バルブが付いた」


オーストラリアは

外国人による中古住宅購入を

かなり厳しくした。


中国側も

資本を外に出しにくくなった。

中国の不動産不況も深くなった。


つまり、

昔は外から水が来た。

今はその水道管が細くなった。


ゆづきは言った。


「じゃあ、

 家の値段が止まったのは、

 中国の影響力が落ちたから?」


「大きな理由の一つじゃ。

 ただし、それだけではない。

 金利、税制、生活費、燃料代。

 全部が重なっとる」


「世界って、めんどくさ」


「そうじゃ。でも、 

 めんどくさいところに

 本当の答えがある」


………


■第3章 

 韓国の家は、金庫ではなく

 ソウル行きの切符だった


ゆづきは

韓国ドラマが好きだった。


「韓国はどうなの?

 ソウルのマンション、

 めちゃくちゃ高いんでしょ?」


「韓国は

 オーストラリアと違う。


 政府がブレーキを踏んでも、

 ソウルだけはまだ熱い」


「なんで?」


「韓国の家は、

 ただの家じゃない。


 ソウルのマンションは、

 教育の切符、

 就職の切符、

 結婚の切符、

 老後の切符なんじゃ」


「家なのに切符?」


「そう。


 オーストラリアの家は

 金庫に近い。


 韓国の家は、

 人生の最終列車の

 切符に近い」


ゆづきは黙った。


「その列車に乗れなかったら?」


「乗り遅れた気分になる。

 だから若者も親も焦る。


 政府がローンを締めても、

 外国人を締めても、

 国内の水圧が強すぎる…」


「水圧?」


「ソウルに人生が

 集まりすぎているんじゃ!」


………


■第4章 

 日本の玄関は、

 まだ世界の財布に開いていた


「じゃあ日本は?」


ゆづきが聞いた。


おじいちゃんは苦笑いした。


「日本はな、

 玄関がわりと開いとる」


「泥棒?」


「いや、

 外国人投資家じゃ」


日本は外国人が

土地やマンションを買いやすい。


円安で、海外から見ると

東京の不動産は割安に見える。


東京、京都、大阪、福岡、ニセコ。


世界の財布が、

日本の土地に手を伸ばす。


「でも、日本人の給料は

 そんなに上がってないよね?」


「そこが怖い。

 日本人の財布では

 

買いにくい家を、

 海外の財布が買っていく」


「じゃあ日本人は?」


「見るだけになる。


 自分の国のマンションなのに、

 ショーケースの中の

 商品みたいになる」


ゆづきは言った。


「それ、悲しいね」


「悲しい。でも、

 それが円安の現実じゃ!」


………


■第5章 

 黒字なのに沈む円、

 赤字なのに浮く豪ドル


ゆづきは納得できなかった。


「でもさ、

 日本は経常黒字なんでしょ?

 オーストラリアは

 赤字なんでしょ?


 だったら円の方が

 強くなるんじゃないの?」


「普通はそう考える。


 でも今の市場は、

 黒字より金利を見とる」


「金利って、

 そんなに偉いの?」


「今は偉そうにしとる」


オーストラリアは経常赤字でも、

金利が高い。

日本は経常黒字でも、

金利が低い。


市場はこう考える。


円を借りる。

豪ドルを買う。

金利差で儲ける。


「じゃあ、

 日本は稼いでいるのに

 負けてるの?」


「為替ではな…」


「なんか理不尽ろ」


「市場は理屈の顔をした、

 気分屋なんじゃ」


………


■第6章 

 金利の湯気が、米俵を負かす


おじいちゃんは  

台所から米びつを持ってきた。


「日本は米俵を持っとる。


 海外投資から配当も入る。

 経常黒字もある」


「じゃあ強そうじゃん」


「でも、豪ドルには

 金利の湯気が立っとる…」


「湯気?」


「市場は、米俵より

 湯気に手を伸ばすことがある」


ゆづきは笑った。


「市場って、

 食いしん坊なの?」


「食いしん坊じゃ。

 しかも早食いじゃ。

 ゆっくり噛まん」


日本は稼ぐ力がある。

でも金利が低い。

豪ドルは経常赤字でも金利が高い。


だから円は売られる。

豪ドルは買われる。


「おじいちゃん、

 それって変じゃない?」


「変じゃ。

 でも、世界は変なものほど

 長持ちすることがある」


………


■第7章 

 資源国なのに、

 ガソリンで貧血になる国


「オーストラリアって

 資源国なのに、

 なんでガソリンで困るの?」


ゆづきが聞いた。


「資源を持っていることと、

 使える燃料を

 国内で作れることは別なんじゃ」


「原油があれば

 ガソリンになるんじゃないの?」


「ならん。

 製油所がいる。

 物流がいる。

 貯蔵がいる。

 安全な海がいる」


オーストラリアは資源を売る。

でも

燃料や潤滑油、AI機器は輸入する。


資源国なのに、燃料輸入に弱い。

鉱山は太い。

でも生活の血管は細い。


「つまり?」


「資源国の貧血じゃ」


ゆづきはノートに書いた。


資源国の貧血。


「それ、テストに出る?」


「五年後の人生には出る」


………


■第8章 

 油田ではなく、

 製油所が戦場になった


ニュースでは、

ロシアの製油所が攻撃されていた。


「ロシアって石油大国でしょ?

 なのにガソリン不足になるの?」


「なる。油田を持っていても、

 製油所を叩かれたら

 ガソリンにならん」


「油田じゃなくて、

 台所を壊される感じ?」


「その通りじゃ」


原油は米。

製油所は炊飯器。

港は台所。

パイプラインは水道。

給油所は茶碗。


米があっても、

炊飯器が壊れたら

ご飯は食べられない。


ゆづきは言った。


「戦争って、

 前線だけじゃないんだね」


「そうじゃ。

 これからの戦争は、

 台所と血管を狙う」


………


■第9章  

 影の船団は、

 夜の海でホースをつないだ


ホルムズ海峡。

ロシアの影の船団。

船籍不明のタンカー。

保険の抜け道。

洋上積み替え。


ゆづきは頭を抱えた。


「海の上って、

 そんなにズルできるの?」


「海は広い。

 そして、人間の欲はもっと広い」


制裁がある。

でも売りたい国がある。

買いたい国がある。

運びたい商人がいる。

見て見ぬふりをする人がいる。


公式の海図とは別に、

夜の海には影の地図がある。


「世界って、

 表と裏があるんだね」


「証券会社にもあった」


「出た、

 おじいちゃんの昔話」


「昔話は、

 未来の取扱説明書じゃ(哀)」


………


■第10章 

 インドの農民は、

 ロボットの前世になった


インドの農民が、

スマホを頭につけて

畑仕事をしていた。


ゆづきは動画を見て言った。


「なにこれ。

 農作業の実況?」


「違う。

 ロボットの授業じゃ」


人間の目線。

手の動き。

腰の曲げ方。

土の見方。

収穫のタイミング。


その全部がAIに食べられる。


未来のロボットは、

いきなり賢くなるのではない。

誰かの一日を、

何度もなぞって賢くなる。


「じゃあ、

 人間がロボットの先生なの?」


「先生であり、

 前世でもある(哀)」


ゆづきは黙った。


ロボットは

まだ畑に立っていない。

でも畑には、

もうロボットの目があった。


………


■第11章 

 安い服は、

 国の鍵を持って帰ろうとした


ヨーロッパでは、

中国製の安い服やEVに

警戒が広がっていた。


「安いのは

 いいことじゃないの?」


ゆづきが聞いた。


「最初はいい。

 でも安さが、

 国内の仕事を壊すことがある」


安い服。

安いEV。

安い電池。

安い太陽光パネル。


消費者は助かる。

でも職人が消える。

工場が閉まる。

ブランドが傷つく。

国の産業が細る。


「安さって、悪者なの?」


「悪者ではない。

 でも、安さだけを神様にすると、

 あとで国の鍵を持っていかれる」


ゆづきは言った。


「安さの神様、

 ちょっと怖いね」


「しかも送料無料で来る」


………


■第12章 

 レバノンの人々は、

 瓦礫のふるさとへ戻った


レバノンの人々が、

壊れた家へ戻っていた。


道路は渋滞。

家は壊れ、

水も電気も足りない。


それでも人は戻る。


「なんで戻るの?

 危ないじゃん」


「危ない。でも、 

 人は安全だけで

 生きとるわけじゃない…」


家には、

時間が染みている。


母の台所。

父の椅子。

子どもの落書き。

庭の木。

近所の声。

夕方の匂い。


「ふるさとって、

 生まれた場所?」


「それだけじゃない。

 自分の時間を

 置いてきた場所じゃ…」


………


■第13章 

 人間は、地図ではなく匂いで帰る


ゆづきは聞いた。


「東京が地震で壊れたら、

 東京の人も戻るのかな?」


「戻る人は多いと思う」


「何もないかもしれないのに?」


「何もないかどうかを、

 見に戻るんじゃ」


人は地図で帰るのではない。

匂いで帰る。


駅前の匂い。

台所の匂い。

雨上がりの道の匂い。

誰かが待っていた部屋の匂い。


おじいちゃんは言った。


「人間は鮭に似とる。

 海に出ても、

 最後は川の匂いを探す」


「おじいちゃんも?」


「わしもじゃ。


 東京本社の

 会社に勤めたのに、

 西の果てに家を作り、


 それでも、50年ぶりに

 ふるさとの実家に戻ってきた」


「みんなと、

 逆流してるね」


「わしは、

 鮭じゃからな(笑)」


………


■第14章 

 世界史は、最後に家計簿になる


ゆづきはノートを見た。


オーストラリア住宅。

中国マネー。

韓国ソウル。


日本円。

豪ドル。


ロシア製油所。

インドAI農民。

レバノン帰還民。


「おじいちゃん、

 これ、全部バラバラじゃない?」


「バラバラに見える。

 でも最後は同じ場所へ戻る」


「どこ?」


「家計簿じゃ」


ガソリン代。

家賃。

住宅ローン。

スマホ代。

食費。

進路。

仕事。


住む場所。

帰る場所。


世界のニュースは、

最後に台所のレシートへ戻ってくる。


ゆづきは小さく言った。


「世界史って、

 スーパーのレシートになるんだ」


「そうじゃ。

 そして、そのレシートを見て、

 人間は初めて世界を理解する」


………


■第15章 

 ゆづき、五年後の鉛筆を持つ


夕方、ゆづきは

おじいちゃんの机にあった 

古い鉛筆を持った。


「これ、使っていい?」


「ええよ。

 五年後の鉛筆じゃ」


「何それ」


「五年後を

 当てる鉛筆じゃないよ。


 五年後に、

 自分が帰る場所を

 書き残す鉛筆じゃよ…」


ゆづきは笑った。


「おじいちゃん、

 ちょっと詩人ぶるよね」


「元証券マンじゃ。


 数字に疲れると、

 詩に逃げるんじゃ」


ゆづきはノートに書いた。


✲世界史は、

 最後に家計簿になる。


✲人間は、

 地図ではなく匂いで帰る。


✲ロボットは、

 人間の一日をなぞって動く。


✲家は、

 屋根ではなく

 切符になることがある。


✲円は、

 黒字を抱えて沈むことがある。


そして最後に、こう書いた。


五年後、

私は何を持っているだろう?


スマホ。

AI。

家計簿。

切符。


それとも、

帰る場所の匂い?


………


❥Z世代のあなたへ


あなたが今見ているニュースは、

遠い国の話ではありません。


オーストラリアの家が

下がることも、


韓国のソウルマンションが

上がることも、


日本円が

弱くなることも、


インドの農民が

ロボットに仕事を教えることも、


レバノンの人が

瓦礫の家に戻ることも、


全部、

あなたの未来の仕事、

家賃、

スマホ、

AI、 


あなたの進路進路、

あなたの住む場所に

つながっています。


世界は難しい。

でも、難しいまま

怖がらなくていい。


まずは一つだけ覚えてください。


世界史は、

最後に家計簿になります。


そしてもう一つ。


人間は、

最後に帰る場所を探します。


それは実家かも

しれない。


都会のワンルームかも

しれない。


スマホの中の誰かの声かも

しれない。  


まだ出会っていない

未来の場所かも

しれない。


だから、

ニュースを見てください。


怖がるためではなく、

五年後の自分が、

どこへ帰りたいのかを知るために。


………


★あとがき

 ――ホームズ、ワトソン、

  やすきよ漫才風――


ホームズ

「ワトソン君、

 今回の事件は実に奇妙だった」


ワトソン

「何がですか、ホームズ」


ホームズ

「日本は黒字なのに円安。


 オーストラリアは赤字なのに

 豪ドル高。


 韓国は規制しても

 ソウル高。


 インドでは農民が

 ロボットの先生。


 レバノンでは 

 人々が瓦礫へ帰る」


ワトソン

「それ、

 事件が多すぎませんか」


ホームズ

「違う。

 すべて一つの事件だ」


ワトソン

「犯人は?」


ホームズ

「金利、住宅ローン、AI、ふるさと、

 そして人間の欲望だ」


ワトソン

「多すぎるわ!」


✲やすし師匠

「怒るでしかし!


 円は黒字やのに沈むし、

 豪ドルは赤字やのに浮くし、

 ワシの財布はいつも赤字や!」


✲きよし師匠

「師匠、それは経常収支やなくて、

 お小遣い管理の問題ですわ」


✲やすし師匠

「何を言うとんねん!

 ワシの財布にも

 金利の湯気を立てんかい!」


✲きよし師匠

「湯気立てても、

 中身が空なら蒸発するだけです」


✲やすし師匠

「ほな、オーストラリアの家は

 なんで上がらんのや!」


✲きよし師匠

「中国マネーの蛇口が締まり、

 金利の重しが乗ったんですわ」


✲やすし師匠

「韓国は?」


✲きよし師匠

「ソウル行きの最終列車に、

 みんなまだ並んでます」


✲やすし師匠

「日本は?」


きよし師匠

「玄関が開いてます」


✲やすし師匠

「泥棒か!」


✲きよし師匠

「外国人投資家です」


✲やすし師匠

「インドは?」


きよし師匠

「農民がロボットに

 畑仕事を教えてます」


✲やすし師匠

「ロボットに仕事取られる前に、

 仕事教えとるんか!」


✲きよし師匠

「そうです。

 これがAI時代の職業訓練です」


✲やすし師匠

「泣けるやないか!」


✲きよし師匠

「最後はレバノンの人々です」


✲やすし師匠

「瓦礫でも帰るんか」


✲きよし師匠

「帰るんです。

 人間は地図ではなく、

 匂いで帰るんです」


✲やすし師匠

「それ、ええこと言うたな」


✲きよし師匠

「師匠も帰りますか?」


✲やすし師匠

「どこへや」


✲きよし師匠

「家計簿へ」


✲やすし師匠

「いちばん帰りたくない場所や!」


✲✲二人

「世界史は、

 最後に家計簿になる。


 ほな、五年後の鉛筆で、

 また会いましょう」


………


★最後の一行


五年後を怖がるな。

五年後に帰る場所を、

今日から書き始めればいい。


君の思い出は

大切にしまっておこうね!

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