第五話 「短気な魔法使い」
城を出た二人はルーカスに連れられ武器屋の前にいた。
「アコウス武器店、ここにあの人がいるんですね。」
「ああ。気をつけろ、何度も言うが気難しいやつだから。」
ルーカスは過去を思い出して少し引きつった顔をした。
その言葉を聞きケインも決勝のことを思い出した
「たしかに決勝のあと話しかけても拗ねちゃって無視されちゃいましたもん。」
「嫌そうだったら無理に仲間にしなくてもいいんじゃないか?俺もあまり人と接するのは少し苦手だからな」
「そうだったんだね、でも僕がんばるから任せてよ。」
ルーカスとルイズは目を見合わせた。ルーカスの不安そうな顔からルイズは益々不安に感じたがとりあえず店の中に入る事にした。
「失礼します。ご無沙汰しております、サウゾ王国騎士団のルーカスでございます。お嬢様はいらっしゃいますでしょうか?」
ルーカスが先陣を切り店のカウンターにいた店主に礼儀正しく話しかけた
「ああ、レイミのことか。アイツなら裏にいるよいま売り物の杖を加工してる。」
「わかりました。さあ2人とも裏に行こう」
「え、でも裏に行っていいんですか?」
「ああ。これでも国家の騎士団長だし、面識もあるからいつでも行けるんだ、では失礼します」
あいよーと店主が言ってケインとルーカスは店の裏の工房へ行き、ルイズは店の商品を見ることにした。
「なあオヤジ、これいくら?」
「4万ゴールドだな。なんだ、あんたの持ってる剣随分使い込んどるな、新調してやるか?とはいってもそんなドデカい剣は時間かかるがの。」
「ああ、でもこれ気に入ってるからいいや。金もかかるし。それよりレイミさんってのはどんな人なんだ?」
「うーん何というかな家族思いで良い子だ、だけど魔法に対して人一倍プライドが高くてな自分より強い人を見ると物凄く嫉妬してるわ、ほらさっきの男はこの前アイツと戦ったケイン君だろ。あの日も大変だったな」
笑いながら店主はそう答えた。
「…オヤジさんはレイミが居なくなったらどう思う?」
店主は上を向き少し黙ったがまたすぐ口を開いた。
「あの子の好きなようにさせるよ。彼女は1年前に家族と離れて魔法の研究をするためにこんな遠くまで来た。今働いてるのも資金集めのためだ。あんたらはきっと魔王を倒しに行くんだろ?その使い込んだ剣を見りゃわかる。魔王討伐の旅路が彼女の研究に何か良いものになるならあの子は間違いなくついていくだろう。」
一つ深呼吸し、また話し出した。
「そりゃ悲しいけどいつまでも居るとは思ってなかったからね。あの子のために悲しみごと飲み込んでドンと応援してやるさ!」
そして無理に笑った。ルイズは悲しそうな目の店主を見て
「その子の命は俺が保証する。俺がその子もあんたも全ての人間の盾になってやる。だから、安心してくれ…。」
としか言えなかった。
「サンキューな、んで説得はどうなってんだろうな」と店の裏へと繋がる扉を店主が覗き込んだ瞬間に扉がものすごい勢いで開いた
「だからしつこいわね!行かないって言ってんでしょ!」
高い声が店内に響く。ルイズは一目見てこの低身長で鋭い目つきの女性がレイミであると察した。
「ですがレイミ様、魔王討伐に彼が手を貸してほしいと頼んでいるんです!どうかお願いします!」ルーカスは頭を下げケインも続いて
「決勝で戦った時に君の魔法から凄みを感じたんだ!何か分からないけど君がいると魔王にも勝てる気がするんです!」だがその二人をよそ見して店を出ていこうとした。
「しつこいわね!いい?私は魔王討伐なんて気にしたことないの、そりゃ魔王は倒して欲しいけど何も私が命懸けて行く必要ないじゃない、あんたに!負けたんだから」
ルイズはその様子を見て店主の言っていた特徴を思い出した。プライドが高い。まさにそのとおりだ。
諦めて店を出ていこうか迷っている二人の前にルイズは立った。
「待て、こちらも報酬というものを出そう」
「幾らお金積んだって無理よ。私は行かない。」
「1億ゴールドだ」
その言葉を発した瞬間、店内にいた全員が口を空けた。
「そんな!無茶だよルイズ!」
「ああ!そうだぞ、言ってしまったら引けないんだぞ!」とケインとルーカスからも止めが入った。
「うるせーな、安いもんだろ1億なんか。俺らは世界救おうとしてんだぞ。チンケな賭けでやれると思ってんのか。おらどうする、金がいるんだろ。俺らについて行って世界救ったら1億。」
「確かにお金はいる…でも、そんな大金どうするの?」
「簡単な話だ。世界を救ったってことが知れたら俺らには様々な国から恩賞がでる。軽く1億は行くだろ。」
「でも…」
レイミは少し黙って考えた。
「魔法の研究について勉強になれることもあるだろうこの店なら心配いらんから行ってこい。お前の夢だろ。」
店主はそう言ってレイミの背中を押した。レイミは少し考えてルイズに高く指を立てた
「世界救ったら1億!後払いでいいわ!月1で家族に手紙を書かせること!それでいい!?」
ルイズはケインの顔を見た。ケインは大きく頷いた。
「決定だ、後戻りできねーぞ?いいのか?」
ルイズがそう聞くとレイミは自信満々に
「私は一度決めたら突き進む女なの。あんたこそ、私の足引っ張らないでね」
ルイズは笑った。だが内心は1億払えなかったらどうしようと意外と焦っていたが、
仲間を本格的に集めたケイン達は冒険の一歩をまた踏みしめた。




