夢が叶う
森の中のポツンと一軒家。
周囲はうっそうと生い茂る森で、家もこぢんまりとしたものを想像していた。
(確かに一軒家……なのかもしれないけれど、前世のものとは違うわ。首都にある公爵邸と変わらない規模の屋敷が、森の中に突然現れた感じ。使用人の離れもあれば、家畜小屋や厩舎も見える。それに庭園は広大だし、畑もちゃんとあるし、放牧されている牛までいる! 確かにここに至るまではザ・森の中だった。でもここに着いたら、森の中のポツンと一軒家であることを忘れるわ……)
私たちが到着した時も、畑や庭の手入れをしているイケメンの姿が見える。さらに家畜小屋や厩舎でもイケメンが甲斐甲斐しく世話をしている姿が見えていた。
(さすが前公爵だわ……。お祖父様の代だけでも、新しい商会が五つも立ち上げられ、領地も三つ増えたと言っていた。それだけお祖父様はやり手であり、相当稼いだのね。隠居してからこれだけのイケメンを雇い、立派な建物で、一人暮らしをしているなんて……!)
「さあ、アドリアナ、着いたよ。隠居老人のつまらぬ屋敷だが、孫が来るからと、いろいろと手は入れたつもりじゃ。まずはリクエストのあった屋根裏部屋へ行こうか」
馬車から降りると、これまたイケメンな執事からウエルカムで迎えられ、持って来た荷物は彼らが運んでくれることになった。同行しているメイドや侍女たちも、離れに部屋が用意されている。彼女たちはイケメン執事たちが案内してくれるという。
もはや首都から同行した使用人たちの顔には輝きしかなく、出発した時の不穏なオーラはゼロ。どうやらこの地への滞在への不安は、一切なくなったようだ。
その様子に安堵しながら、私は祖父と手をつなぎ、階段を上る。
「さあ、ここだよ。二階にも部屋は用意したが、アドリアナがどうしても屋根裏部屋も使いたいというから……」
そう言いながら、祖父が扉を開け、そこを見た私は「わーーーっ!」と歓声を上げることになる。
正面には丸い窓があり、そこからは森とその先の湖が見えていた。その窓の手前にはこんもりと膨らんでいるベッドがあるが……。
「お祖父様、このベッドは」
「アドリアナがリクエストしていた、干し草のベッドだよ」
これにはもう「ひゃっほーい!」だった。
前世で祖母の家で見せてもらったアニメに登場していたのが、この干し草のベッド。ずっと憧れていたが、まさかの公爵令嬢に転生して、これを体験できるなんて!
「お祖父様、このベッドに横になってみてもいいですか?」
「ああ、構わないよ。ここはアドリアナの部屋なんだ。好きになさい」
「ありがとう、お祖父様!」
感謝のハグをした私は、干し草のベッドにダイブする。清潔なシーツが敷かれた干し草のベッドに転がると……。
(うわぁ~、草の香りがする。それに味わったことのない感触だわ。干し草の間に空気があるからかしら? なんだかふわふわしていて、心地がいい!)
そこで天井を見ると、そこに天窓もあった。さらには小ぶりの木製のチェスト、本棚、籠と、貴族令嬢の部屋では見かけないシンプルな家具が並んでいる様子も、まさにあのアニメの世界っぽい!
「アドリアナ、満足か?」
「ええ、満足。この部屋は天気のいい日に使うわ!」
「それがいいだろう。それでもうすぐお昼じゃ。お腹は空いていないか?」
そう言われると、お腹はぺこぺこ。
「お祖父様、私、お腹ぺこぺこです!」
「では庭に昼食の用意をさせているから、食べよう!」
喜んで庭に出ると、そこではイケメンたちがバーベキューをしている。つまりはソーセージやマッシュルームを焼いて待ってくれていたのだ!
「ディナーはちゃんとドレスを着替えてテーブルマナーに従って食べるが、お昼は別じゃ。ほれ、アドリアナが言っていたラクレットも用意させたぞ」
ラクレットは三十センチほどの丸いチーズで、それを半分にし、表面を火でとろとろにする。それを白パンに載せていただくのだ!
(アニメを見てずっと食べたかった料理の一つ! やった~!)
そこからはもう、祖父のお言葉に甘え、食べる順番やカトラリーを気にせず、パクパク出来立てを食べまくった。
「お祖父様、このとろとろチーズとパンが最高です!」
「どれどれ。近くの村人でもこんな食べ方はしたことがないと言っていたぞ。アドリアナが食べたいと言ったから、このチーズも取り寄せたが……」
そこで祖父もたっぷりラクレットを載せた白パンを頬張り「うん、これは旨いではないか! ダロスやパルシェも食べたいのでは!?」と、父親と母親もきっと喜ぶ美味しい味だと笑顔になる。
「旦那様、こちらも焼き立てでございます」
イケメンの使用人がこんがり焼けたソーセージを出してくれる。
「マスタードもつけるといい」
「はい、お祖父様!」
外の皮はパリッとして、中はジューシー。
焼き立てのソーセージは美味しくてたまらない!
さらに森で採れたラズベリーのタルトもデザートで登場して……。
まさにアニメの世界にやって来たような一日目を過ごすことになった。
お読みいただきありがとうございます!
私も食べたい!チーズのせパン!
もう一話公開します!
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