練習の成果
ヒロインと攻略対象に選ばれた男子の好感度が、急上昇するイベントがある。しかもそのイベントには、選択肢が登場し、ヒロインが手に怪我を負えば、アドリアナのヒロインへの嫌がらせの数々が明らかになるのだ。そして遂にはお決まりの展開を迎える――。
そう、それこそが、生徒がホストとゲストに別れ、マナーや礼儀を実地で学ぶ「お茶会」の授業。
だが今回、私とヒロインは同じクラスではない。ゆえにこのゲームでお馴染みの「お茶会」の授業が行われることはないはずだった。
ところが!
私はこの「お茶会」の授業を、「練習」という形で再現することを思いついたのだ。
本来スルーされるはずのイベントを行うことにしたのは、この世界はマーガレットの幸せに全力で動くはずと考えたから。
この「お茶会」イベントは、攻略対象のヒロインへの好感度が爆上がりするもの。現在ヒロインであるマーガレットは、カミュ第二王子との距離を全く縮めることが出来ていない。それはこの世界もよく分かっているだろう。だからこそ、私がお膳立てしたこの「お茶会」イベントは、ヒロイン有利で成功するはずだった。
つまりマーガレットは私に罵倒され、手を怪我し、カミュ第二王子と急接近するのだ!
ちなみに実際のゲームでは「お茶会」の席にカミュ第二王子は登場しない。でも今回は、私の悪女ぶりを見せつけ、マーガレットへの好感度が急上昇しつつ、アドリアナへの好意がだだ下がりになるようにしたかった。そのためマーガレットに、カミュ第二王子が「お茶会」へ参加するよう、声をかけさせたのだ。
ただし。
その開始時刻は直前で変更になる。しかもその時間変更はマーガレットからではなく、伝言にさせ、カミュ第二王子に伝わるのが遅れるように画策した。
こうすることで、カミュ第二王子は私の意地悪っぷりを止めることができず、マーガレットが見下され、罵倒され、手を怪我するところまでを目撃する形になる。
(間違いないく、私は悪女に見え、幻滅するはずよ。何せこのゲームの世界で私は悪役令嬢なのだ。悪女らしく振舞えば、世界は「素晴らしい!」と全力で後押ししてくれると思うわ)
ということでヒロインであるマーガレットには、自身のお小遣いの最大で買える茶葉を用意させ、放課後の中庭の庭園の東屋で、「お茶会」を再現させることにした。
クリスタ伯爵令嬢には、これがマーガレットとカミュ第二王子の距離を縮めるため、かつ私のカミュ第二王子の好感度を下げるための作戦であることは伏せ、参加してもらっている。何も知らない第三者がいることで、リアリティが増すこと間違いなしだからだ。
結果的に、すべての流れがゲームの「お茶会」イベントに沿ったものになった。
マーガレットが用意した紅茶は、本当にまずかったので、演技するまでもない。しかも子どもの頃のお茶会でカラスを撃退して以降、クリスタは私に心酔してくれている。ゆえにまさに絶妙に私に合わせてくれた。そしてマーガレットは私が落として割ったティーカップを片付けようとして、ちゃんと手を怪我している。さらにその様子を遅れて登場することになったカミュ第二王子は、傍観者として眺めるしかない。しかもカミュ第二王子は、私を非難する言葉を並べている。
――『サンフォード公爵令嬢、あなたらしくないです、あの言葉は!』
――『もしそれが真実だとしても、もう少し伝え方がありますよね、サンフォード公爵令嬢。それにティーカップは手元が狂ったわけではなく、わざと……投げつけましたよね。全て見えていました。それにいつにない大声でしたから、聞こえていましたよ』
これを聞いた時は、カミュ第二王子が私を嫌う流れができ、心の中でガッツポーズだった。
(よし。このままいけば、カミュ第二王子は私の悪女ぶりに幻滅、代わりに健気なマーガレットへの好感度が、爆上がりになるはずよ!)
そう思っていたのだけど。
流れが狂うのは、カミュ第二王子が紅茶を飲んだところからだ。
ゲームでカミュ第二王子が「お茶会」の授業でヒロインが用意した紅茶を飲むことはない。そこは想定していない動きではあるし、実際に紅茶は美味しくないので、少し心配もした。
しかしカミュ第二王子はゲームの設定通り、配慮ができる人間だ。王族ではあるが、貴族のルールも知っている。まずいものを出されて、表立って批判はしない。しかもマーガレットはお小遣いを全て使い、頑張って手に入れているのだ。男爵令嬢の頑張りを踏まえ、不味くてもそのことを口にせず。「少し香りが弱いかな。風味も、もうちょっとあるといいかもしれないですね。でもミルクを入れれば大丈夫ですよ」なんていうフォローをすると思った。
まさか『君が用意した茶葉では彼女を満足させることは無理です』と言い出すことは全く想像していない! 挙句、『彼女の代わりに僕が謝罪します。あなたに相応しくない紅茶を出してしまい、申し訳ありませんでした』と言うなんて。
マーガレットは顔面蒼白で、私は「なぜ……」という意味で顔が青ざめ、クリスタだけが「当然の結果」という表情という事態。
しかも「品質は劣るかもしれないですが、せっかくスイーツも紅茶も用意されているのです。この紅茶にはたっぷりの蜂蜜とミルクを入れて、楽しみましょう」と、カミュ第二王子が言い出したのだ。そして魂が抜けたマーガレットに代わり、ホスト役となり、その場を取り仕切り――。
よく分からないまま「お茶会」は続行され、カミュ第二王子は「とても楽しいお茶会でした。また練習する際は、誘ってください」と、なぜか私にお辞儀をして帰って行ったのだ。
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あ、あれぇ……( ゜д゜)……?
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