お嬢様、ご覧ください!
「サンフォード公爵令嬢、リアス! そろそろお休みになった方がよろしいかと! 睡眠不足はお肌に影響を与えます」
突然、姿を現わしたアンバーに、ギクリという感じでリアスも私も固まることになる。
「ほら、リアスはあっちの寝袋です」
アンバーが、がしっとリアスの肩を掴み、立ち上がらせさた。リアスは「とほほ」みたいな表情で、アンバーに連行される。
そのままアンバーは入口の布を下ろし、私はテントの中で一人になった。
(まだ心臓がバクバクしているわ。だってさっき、リアスとキ、キスをしそうな雰囲気だったのよi?)
そのままぽすっとベッドに横になり、リアスがさっき触れた自分の唇に指を置く。
あのままキスをしたかったという気持ちと、でもきっとそうしたら近衛騎士にはバッチリ見られていたと恥ずかしい思いもわきあがり、心は千々に乱れる。
しばらくベッドで悶々としたが結論を出す。
(雰囲気としてとってもいい感じだった。でもきっとまたキスのチャンスは巡って来るわ!)
こうしてナイトティーをがぶ飲みした私は、ベッドで横になった。
(がぶ飲みして眠るなんて……やっぱりリアスが乙女で、私は男前よね……)
◇
雷雨により、とんだハプニングがあったものの。翌日は真夏と思える晴天で、気温もぐんぐん上昇した。
私たちは早朝に出発し、ロッジのみんなが起き出す頃には、森の入口に到着。無事、クラスメイトとも再会できた。
昨日の雷雨では湖も鈍色となり、雨風により海のように荒れていたという。でも今朝はすっかり鏡面のような水面に戻り、A組もB組も、無事、湖でボート遊びや釣りを楽しめた。
C組は白樺の森の散策ではなく、森の入口にある工房で、クラフト体験をすることになった。
ゲームの力でとんでもないハプニングがあったが、林間学校は無事に終了。
ヒロインであるマーガレットも、出血はあったものの、応急処置とその後の治療が功を奏し、傷の手当も終わっている。大事をとって数日休むことになるが、問題なく回復するとのこと。林間学校は八月の終わり、バカンスシーズン中に行われた。九月一日の始業まで、まだ数日猶予がある。間違いなく学校には来れると思う。
(何しろ乙女ゲームのヒロインには、ラッキー設定がある。ゆえにどんなにピンチでも助かるはず。次に会う時は元気いっぱいたと思うわ)
マーガレットが元気なのは、それはそれでいい。だができればリアスには絡まないで欲しい……というのが私の本音だった。
ちなみに林間学校での出来事は、両親に報告することになったが、カミュ第二王子を助ける行動をしたのだ。本人からは勿論、国王陛下からも御礼の手紙が届いたので「近衛騎士が同行していないのに、勝手な行動をするなんて、ダメじゃないか」と注意されることはない。
(カミュ第二王子との野宿は、乙女ゲームのイベントでもある。怒られるわけがないわよね)
そのカミュ第二王子については、手を握られたドキッともあったが、あれはリアスに話した通りだと思っている。つまりは感謝の気持ちが昂った結果だと。
むしろ手を握られた件より気になるのは、背中の火傷!
(あんな怪我、いつ負ったのかしら?)
カミュ第二王子が怪我をしたなど、新聞にも掲載されていない。しかも宮殿や王宮で火事があったという話も聞かなかった。
(火傷の治り具合からすると、三か月ぐらい前に負ったものに思えるわ)
でも私は医者ではないし、ハッキリしたことは分からない。それに火事ではなく、熱湯を被った可能性もある。入浴ではあまり少ないが、厨房での熱湯による火傷は、特に庶民の間では日常的に起きていた。
(まさかヒロインの攻略対象が火傷を負っているなんて驚きだし、どうして!?と気になるが。公にされていないなら、ちょっとやそっとで事情が判明するとも思えない。さらに特段口止めされていないが、口は禍の元。何も言わない方がいいわ)
ともかくこれでバカンスシーズンが終わり、あとは新学期が始まるのを待つだけ――と思っていたら。
「お嬢様、ご覧ください!」
八月三十一日の朝。
まだ残暑が厳しく、麻のペールブルーのエンパイアドレスに着替えた私は、メイドに髪をアップにしてもらっていた。そこで侍女が部屋に持ってきてくれた新聞を見て、驚愕することになる。
なぜならそこにはこんな記事が一面で掲載されていたのだ。
『カミュ・カイラス・クロノス第二王子、帝国の第二皇女と婚約を解消する』
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