え、鼻!?
「カミュ第二王子殿下には婚約者がいるよね。しかもデビュタントのために帝国へ向かい、終わった後も離れがたく、学院を休んでまで帝国に残ったんだ。カミュ第二王子殿下は……婚約者を好きなんだと思う。そしてアドリアナは僕のことを好きだということもよく分かっている。お互いに婚約者がいる者同士。しかも王族と公爵家。やんごとなき身分の二人に過ちなんてない……だろうけど……」
そこでぶわっと涙を溜めたリアスは、乙女になってしまう。
「でも僕、心配で……! アドリアナのことは信じているけど、変な噂が立つのも嫌だった。それに今度こそ、アドリアナを守ると決めていた。だから近衛騎士に同行したいとお願いしたんだ。僕はアドリアナの婚約者だからあっさり受け入れてももらえた」
「なるほど。そうだったのね。それは……本当に心配をかけたわ。ごめんなさいね」
「アドリアナ……!」
まるで大きな犬が飼い主に甘えるように。
リアスが私に抱きつく。
こうなると「よし、よし」とばかりにその頭を撫でることになる。
「セーブルとアンバーが同行することになったのは?」
「それは……僕が同行するなら、自分たちも行くと言って聞かなくて……。教師も近衛騎士も説得する時間が無駄だと思ったのと、荷物持ちは多い方がいいから……。それに森の中の獣も大人数が松明を持って移動していたら、まず寄ってこない。だから許可されたのだけど、さすがにジャスパーはC組みだし、そもそも森にも入っていない。だから同行は却下された」
「なるほどね。それで危険を承知で、夜の森に入り、カミュ第二王子殿下と私を見つけてくれたのね」
リアスは顔を上げ、「うん」と頷く。
「ありがとう。おかげで私の名誉は守られたわ。登場も絶妙だったし」
するとリアスは体を起こし、両手をベッドにつき、うるうるの瞳で私を見て、頬をぽっと赤くする。その乙女な仕草にキュンキュンしながら「どうしたの、リアス?」と尋ねると……。
「ちょうど僕たちが到着した時、カミュ第二王子殿下がアドリアナに聞いていた。『愛するとは……どういうことなのでしょうか』って」
「!」
これにはじわじわと羞恥の気持ちが込み上げる。カミュ第二王子には別に聞かせてもいいと思い、赤裸々な気持ちを打ち明けていた。
(でも、まさか、それを……リアス本人が聞いていたのー!?)
「アドリアナが僕を信頼し、尊敬し、大切にしたいと思っているって……改めて言葉にして聞くと、とても嬉しかった」
そう言ってリアスが頬を赤くしているが、それは私も同じ! というかリアス以上に私は顔が真っ赤だろうし、一気に全身の体温が上がり、暑いぐらいになっている。
「あの告白を聞き、さすがに皆、声をかけづらいとなり……。少し時間を置こうとなり、それでしばらくして様子を見たら、包帯をアドリアナが巻いている。そこでいよいよ声をかけようとなった。そうしたら……」
そこで再びリアスがぶわっと泣きそうな顔で私を見るのだ!
「カミュ第二王子殿下がアドリアナの手をぎゅっと握っている。その上で二人はなんだかいい感じで見つめ合っているから……!」
「リアス、落ち着いてちょうだい。確かにカミュ第二王子殿下は私の手を握っていたわ。でもいい感じで見つめ合ってなんていないわよ。あの時の私は目が点になっていただけ。そして思うに、怪我の手当てをした私に、カミュ第二王子殿下は感動していたのよ。そこで感極まって、私の手を思わず握ってしまった。それだけだと思うわ」
「……本当に」
リアスがうるうるの瞳で私を見上げる。
「ええ。そうだと思うわ。それに私にはリアスがいるのよ」
「アドリアナ……」
「リアス。アドリアナ・セレネ・サンフォードのこの身と心は、リアス・テゼ・レイノルズに捧げているの。すべてを許すのはリアスだけ。私を信じて、リアス」
私の言葉にリアスはあの透明感のある美しい碧眼をうるうるさせ、甘えるように尋ねる。
「アドリアナのこの柔らかい頬は僕のもの?」
「ええ、そうよ」
「このおでこも?」
そこでリアスが自身のおでこを私のおでこにつけるので、心臓がドキーンとなる。
「そ、そうよ……」と答える私はなんだか声が震えている!
「この鼻も?」
「え、鼻!?」
いきなりロマンチックな雰囲気から遠ざかったと思ったが。リアスが自身の鼻で私の鼻に触れたのだ。
(うわーーーーー! かつてない至近距離に、顔面偏差値の高いリアスがいるっ!)
目が回りそうになりながら「そ、そう……」と息も絶え絶えで答えた。すると鼻が触れ合っている状態で、リアスの指がゆっくり唇に触れる。
(心臓が止まりそうだわ……!)
「この愛らしい唇も、僕のもの?」
リアスの息がかかり、その温かさと紅茶の香りに意識が飛びそうになる。
「アドリアナ、答えて」
甘々な声でリアスに尋ねられ、私はなんとか「そう」とだけ短く答える。するとリアスの唇が、私の唇へと近づき――。
うわあぁぁぁ……(〃艸〃)
お読みいただき、ありがとうございます!
続きも本日公開します~



























































