その時の彼は
リアスの緊張をほぐすため、ナイトティーを飲むように勧め、ここまで来てくれた経緯を尋ねた。
「アドリアナと別れ、怪我人を白樺の森の入口まで運んでいたら、カミュ第二王子殿下の近衛騎士が森の中へと向かっていたんだ。そこで僕に気づき、殿下について聞かれ、知っていることを話した。雷雲の真下にいるんだ。無理に動くのは危険。大木に雷が落ちた後、殿下も救助活動を手伝っていた。でもそれがひと段落すると、みんなと一緒に窪地で姿勢を低くし、雷雨がおさまるのを待っていると」
実際、必要がなければ身を守るため、動かない方がよかった。
「僕の話を聞いた近衛騎士は、殿下のところまで行き、彼を動かすのはやはり危険だと判断した。そこで怪我人を……ザックライン男爵令嬢を運ぶのを手伝ってくれたんだ」
つまりヒロインであるマーガレットは無事、森の入口にある管理小屋まで運ばれ、そこで医療の覚えもある近衛騎士による手当を受けた。天候がおさまったら、近くの診療所に運ばれることになったという。
「みんながびしょ濡れになりながら雷雨に耐えている。そう思ったら僕だけ着替えをするなんて……と思ったけど、その場にいた教師にも勧められ、まずは服を着替えた。水浴び場もあったからそこを借りて。アドリアナが戻ってきたら、全力で君をサポートできるようにするには、自分の準備を万全にしておかないといけない――そう思って」
そうやってリアスは身支度を整えたが、雷雨はなかなか収まらない。ようやく雷がおさまり、雨は小雨になった。ただ霧が漂い、日は暮れ始めている。
「不安だったよ。もたもたしていたら、日没を迎えてしまう。居ても立っても居られなかったけど、ザックライン男爵令嬢を馬車に乗せ、近くの診療所へ運ぶとなったから、それを手伝っていたら……。濃霧になってから、森の中へ入った教師の一人が『生徒たちが続々、移動を始めました! 迎える準備をしてください!』となった。そこからはタオルや温かい飲み物、食事の用意をして、みんなを受け入れる支度をしたんだ。森に行かなかったC組のみんなも手伝って、炊き出しみたいな感じになった」
続々と生徒たちが到着する中、私の姿がない。すると森の中へ向かって行った近衛騎士が、仲間の負傷した騎士を連れ、戻って来た。そして教えてくれたのだという。
「カミュ第二王子殿下は保安のため、剣を所持していた。でも雷雨があったからその剣を外した結果、置き忘れたので、取りに戻ったと。そこにアドリアナが同行していると聞いて『なんで!?』だったよ」
それについてはこう説明することになる。
「あの雷雨により、森の中はぬかるみ、大きな水溜りもあるし、歩きにくい状態だったの。だから男子生徒は女生徒をエスコートし、歩くことになり……。もしザックライン男爵令嬢がいたら、男女チームで二人は一緒だったから、彼女のことをカミュ第二王子殿下はエスコートしたと思うの。でもザックライン男爵令嬢がいなくて、私のそばにリアスはいなかったから……。カミュ第二王子殿下にエスコートされることになったの。そこで剣を忘れたとなったから、取りに戻ることにしたのよ」
私の説明にリアスは「なるほど」と応じる。
「カミュ第二王子殿下のそばにいるはずの近衛騎士は負傷しており、もう一人は怪我人を運んでいる。そこで近衛騎士もなしで、アドリアナと剣を取りに戻ったのか」
「そうね。すぐに剣は見つかると思ったし、歩き出してそこまで時間も経っていなかったのよ。それに私なら近衛騎士とまでいかなくても、ある程度は対応できると思ってしまって……」
「剣は簡単に見つからなかったの?」
頷いた私はカミュ第二王子のうっかりについて話すことになる。
「なるほど。それは……かなりうっかりだね。木の洞に剣があると思い、探し回った時間がロスタイムになっちゃったんだね」
近衛騎士たちはそんなカミュ第二王子と私を探す羽目になるが、霧は相変わらず濃く、なかなか見つからない。そこで日没が近いことを踏まえ、万全の体制をとることにした。
「近衛騎士たちは一度森の入口の管理小屋に戻って来て、捜索に時間がかかることを踏まえ、いろいろ用意することにしたんだよ。あのすのこやマットレスとかテントとかいろいろを」
「そうなのね。それを見てリアスは一緒に捜索することを申し出てくれたのね?」
「うん。アドリアナは絶対に戻ると約束した。だから戻ってくると信じていたけど……。夜の森は危険と分かっているから、日没を迎えたら、動かないだろうと判断できた。夜をやり過ごし、朝、森の入口を目指すだろうと」
私が戻ると信じれてくれたリアスを嬉しく思いながらも、それでも近衛騎士と共にここへ来た理由は……?
そこでリアスは少し俯き加減で、視線を落とし、なんだか握りしめた両手をふるふるさせている。
(どうしたのかしら、リアス……?)
お読みいただき、ありがとうございます~
どうしたのでしょうか、リアス!?
続きは明日公開です♪























































