見知った顔が
デビュタントが行われる宮殿に着くと、見知った顔が多くて大変!
会場となるホールに着く前に、挨拶ラッシュとなり、美青年リアスはクラスメイトに取り囲まれる。
学院でも美青年リアスは普段から人気だった。ただ、セーブル、アンバー、私とリアスは一緒にいることが多かったので、女生徒とは挨拶ぐらいの接点だったのだけど。今日のリアスは痺れるほどのかっこよさなので、皆、我慢できず話し掛けていた。
さらに祖父も「まあ、サンウエスト侯爵様!」とマダムから次々と声をかけられている。前公爵として首都で活躍していた時代が祖父は長いので、いまだ社交界で顔がきくようだ。
「サンフォード公爵夫人、サンフォード公爵令嬢、こんばんは!」
声をかけてくれたのは、母親と仲良しのオーリック伯爵夫人だ。その娘であるクリスタもいる。彼女もクロノス王立学院に入学しており、クラスはC組。ジャスパーと同じクラス。そしてクリスタのエスコート役は、なんとジャスパーだったのだ!
プレデビュタントの時と同じレディッシュ・ブラックのテールコートを着たジャスパーは、少し照れながら答える。
「クリスタが俺の隣の席なんだ。それでエスコート役がまだ決まっていないって言うから……」
「そうだったのね。プレデビュタントのために頑張ったことが、無駄にならないで良かったわ!」
ホールに着くと、そこには見知らぬ令嬢をエスコートするセーブルのことも発見する。
「父上に頼まれたんだ。部下の男爵のお嬢さんで、ぜひエスコートして欲しいという話で……」
「そうだったのね。じゃあ、エスコートとダンス、頑張って練習したのかしら?」
「母上に頼んで、特訓してもらったよ」
今日は上質そうな生地のテールコートをしっかり着て、エスコートする令嬢にも目を配っている。やはりプレデビュタントを経験し、自身の足りないところを知り、特訓してこの日を迎えられたことは大きいと思う。
「サンフォード公爵令嬢!」
この声はアンバー!
振り返ると、粒子の細かい金色のラメが織り込まれた黒のテールコートを着たアンバーが、クラスメイトの令嬢をエスコートしているではないですか。
「アンバーもエスコート役、頼まれていたのね」
「そうなんです。サンフォード公爵令嬢のこと、驚かせようと思って、黙っていました。ジャスパーもセーブルも。三人でビックリ大作戦だって」
「まんまと驚かされてしまったわ」
「それでリアスは?」
「あ、リアスはお祖父様と話しているわ」
私がいろいろな人に声をかけられていると、美青年リアスの周りには令嬢が寄ってくる。その状況に気付いた祖父がリアスに声をかけた。私がいるのに他の令嬢に取り囲まれているリアスを、祖父は救出しようとしたようだ。その際、二人は何だか意気投合したようで……。その後、私が誰かと話していると、祖父とリアスが楽しそうに話していた。
その祖父とリアスのさらに後方にいる二人の人物の姿を見て、ドキッとすることになる。
ダークブロンドの長髪を後ろで1本に結わき、眼鏡をかけたヘーゼル色の瞳の令息は、宰相の息子ダグ・ブリジット。ヒロインの攻略対象だ! その彼の隣にいるのは、オリーブブラウンの髪に、深緑色の瞳のロン・カート・フェイン。アドリアナとは幼なじみの公爵令息というのが乙女ゲームの設定だが、私が祖父の領地で六年間過ごしたため、没交渉で現在に至っているものの。れっきとしたヒロインの攻略対象である。
(この二人がいるということは、近くにヒロインであるマーガレット・ザックラインとカミュ第二王子がいるのではないかしら……?)
ゲームの進行通りだと、カミュ第二王子は悪役令嬢であり、婚約者であるアドリアナを同伴しながらも、積極的に話しかけてくるヒロイン・マーガレットとこのデビュタントでダンスをする。さらに二人きりでおしゃべりをして、距離を縮めるのだ。
「サンウエスト侯爵、お元気そうで何よりですね」
「そうね……」
「どうされましたか、サンフォード公爵令嬢?」
アンバーの問いに、つい上の空で答えてしまったので、心配されてしまった。
「あ、えーと。ほら。うちの学院に王族がいたでしょう?」
「カミュ第二王子殿下のことですか?」
「そう。彼も今日のデビュタントへは来ているわよね、当然」
するとアンバーは意外な情報を教えてくれた。
「今日のデビュタントには来ていないですよ」
「え、そうなの!?」
「セーブルから聞いたんですけど、婚約者のイストス帝国の第二皇女。彼女は殿下と同い年。帝国でもまさにこの時期がデビュタントなんだそうです。彼女をエスコートするため、金曜日から来週の火曜日まで、殿下はイストス帝国に行かれているんですよ。セーブルの父君も近衛騎士と共に護衛でイストス帝国へ向かったそうです」
これには「え、そうだったの!」と驚くことになる。
「新聞にそんな報道はなかったわよね?」
「それはそうですよ。立場的にはクロノス王国の方が帝国より上のはずなんです。でもデビュタントの主役は令嬢。よって第二皇女のために、殿下は帝国へ行くことになり、自国のデビュタントに顔を出さないことになったんです。国王としては不本意だったのでしょう。学院には公務扱いで休みをとっていますが、大々的に報道しないよう、新聞社には圧をかけたみたいですよ」
「なるほど。それは知らなかったわ……」
クラスが違うことで、マーガレットとカミュ第二王子が学院でどれだけ親交を深めているのか。正直把握していなかった。それでも何度か二人が一緒にいるところは目撃している。それなりに仲良くなっているとは思う。
(普段から仲良くしているのかもしれないけれど、このデビュタントで、ヒロインと攻略対象の距離はグッと縮まるはずだった。それなのにヒロインは……マーガレットはこのデビュタントで、攻略対象に選んだカミュ第二王子と親しくなることができないのね……)
これまた想定外の展開と思ってしまうが。既に私がカミュ第二王子と婚約していない時点で、大きなイレギュラー状態。さらに本来のシナリオから離れた状況になりつつあるが……。
自分が悪役令嬢にならない方向に進んでいるので、本来ウエルカムではあるのだけど。あまりにも乖離すると、強引な補正がかかるのではと、少しヒヤヒヤしてしまう。
「アンバー、君も来ていたんだね」
「ええ、こちらのコレット伯爵令嬢のエスコート役です」
美青年リアスが祖父との会話を終え、戻って来たと思ったら。
「サンフォード公爵令嬢、デビュタントの女性は謁見の間へ移動するようにと、侍従の方がアナウンスしていたよ」
「あ、そうね。このホールでダンスが始まる前に、国王陛下への謁見……挨拶だったわ」
お読みいただき、ありがとうございます!
本来のシナリオから乖離することにはドキドキ
続きはまた明日公開しますね!
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そして明日は受賞作の発売で別の意味でもドキドキしている作者なのでした~
深呼吸~























































