ちっぽけな太陽でも
「全てを捧げてもいいほど愛してます。私の恋人になってくれませんか」
美鈴の雰囲気と、屋上にやってきた時点で何か予感はしていた。でも、まさか、美鈴が私に恋していたなんて。それどころか、口ぶりからして私が美鈴を好きになるより前に美鈴は私が好きだったらしい。
そうか、美鈴がマネジャーになる前に苦しそうな顔してたかと思えば、元気になってテニス部のマネージャーになったのはそういうことか。あれは美鈴なりに悩んで決意した結果なのか。
目前まで迫っている彼女の顔を見て、美鈴の決意の固さと、ここまでたどり着くのにどれほどの苦難があったかを物語っていた。
あぁ、まったく、私はなんて幸運なんだ。私は覚悟がなくてこの学校に来たのに、こんな素敵な子に惚れられて、おかげで本気でプロを目指す覚悟ができて、芹香とも和解できた。中途半端に生きていた私が変わることができた。
これを幸運と言わずになんというのだろうか。
「美鈴……」
愛しい名前を口にする。すると、彼女の顔も朱に染まる。これで強気に前に出ていた彼女も頬が熱くなっている私とおそろいだ。
私の返答は最初から決まっている。だって、私も美鈴に告白するつもりだったから。この状況が私に都合がよすぎて、夢ではないかとすら疑ってしまう。でも、熱くなった私の体と、確かに聞こえる互いの鼓動の共鳴がこれは夢ではないと証明していた。
私は彼女の手を握り、逃げられないよう指を絡ませる。まっすぐ見つめ合って、互いにもう目の前の愛しい相手のことしか考えられない状況になる。
視線が交差する摩擦で高まった熱の中で、私は最愛の人に告白をした。
「私も美鈴が好きだ。これからもずっと一緒にいよう」
私が言葉を返した瞬間、この世のすべてが止まったような感覚に陥った。そして悠久と思える時間の中で、美鈴の頬に一筋の雫が流れた瞬間、すべてが動き出した。
「みす」
「彼方!!」
心配した私が美鈴の名前を言い終わる前に、勢いよく美鈴が飛び込んできた。不意打ちで少し焦ったけど、転ばないようにしっかりと受け止める。私の胸に飛び込んだ彼女が顔をあげると、涙を流しながらも心の底から喜んでいるような表情を見せてくれた。
あぁよかった。私たちはこの瞬間結ばれたんだ。恋人っていう互いが望んだ特別な関係になれたんだ。
「うれしい……やっと、やっと彼方の特別になれた」
嬉し涙を流す彼女の声は掠れていて、彼女に握られた腕が痛くなるくらい手に力が込められている。
「私を応援してくれた時からずっと、美鈴は私の特別だよ」
ただの仲のいい友達だった美鈴は、いつの間にか私に輝きを見せてくれる一等星になっていた。そして彼女は私を太陽だと言ってくれた。
ようやく覚悟を決められた私は、実在の太陽と比べればまだちっぽけな太陽に過ぎない。美鈴は私に追いついたって言ったけど、美鈴はずっと私の前にいたよ。自分の望みをかなえるために覚悟ができる、そんな強さを待っているんだから。
今度は私が美鈴に追いつく番だ。一等星の隣にいても恥ずかしくないような、美鈴が思い描く太陽になるために。
「好きだよ、美鈴」
「私も好きだよ、彼方」
二人きりの暗闇に包まれた屋上で、結ばれた私たちの想いはキラリと輝いていた。
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