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輝く太陽に祈りをこめて  作者: Sen
運命の文化祭
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45/53

支援者

 午後五時、文化祭二日目が終了。文化祭をまわっていた私たちが教室に戻ると、みんながせっせと片付けを始めていた。彼方は飾り付けの片付け、私は衣装の整理をする。


 私達メインウェイターの他にも低コストで作った小人や狼男などの衣装もあるので、集めていくとかなりの分厚さになる。


 この後思い出に持ち帰りたい人は持ち帰ってもらって、残った衣装は学校に寄付となる。私はもちろん持ち帰るし、彼方もそのつもりらしい。いつか思い出話ができたらいいな。


 そんな事を考えながら、どんどんメルヘンカフェが解体されていくのを横目に衣装を畳んでいく。ふわふわとした衣装だから手触りが心地いい。


 その時に後ろから肩を叩かれた。振り向くとにこやかな顔をした委員長が立っていた。


「どうしたの?」

「朝に連絡したでしょ」

「あぁ、そうだった」


 確か今日の朝に渡したいものがあるって連絡してくれたっけ。


「その様子を見るに、彼方とのデートは上手くいったみたいだね」

「で、デートって、そう言われると照れちゃうな……」

「ストラックアウトに可愛いおしどり夫婦がいるって噂になってたよ」

「そ、そっか、えへへ」


 委員長に嬉しい事を言われて、つい笑顔が溢れる。変な顔になってしまってるだろうけど、委員長はスルーして話を続けた。


「それで、告白はどこでするつもりなの?」

「えっ、ああ、後夜祭の途中でどこか二人きりになれる場所に行くつもり」

「へぇ、逢引作戦ね」

「あ、逢引って、そんな、いや、そうだけど」


 揶揄われて慌てふためく私を、委員長は優しい目で見つめている。


「で、どこかってどこ行くの?」

「えっ、それは……」


 そういえば今日の彼方とのデートが楽しみすぎて全く考えていなかった。それが顔に出ていたみたいで、委員長はやっぱりかと言うように苦笑した。


「それなら、すごくいい場所があるよ」


 そう言って委員長はポケットから一つの鍵を取り出した。キーホルダーの輪に指を入れてクルクルと回してから、ポンと鍵を私の目の前に置いた。


「これ……どこの鍵?」

「屋上だよ」

「えぇ!? 屋上って、文化祭中は使用禁止なんでしょ!?」

「そう。でも、後夜祭の時は使っても問題ないって先生が言ってたよ」

「あっ、そうなんだ」


 屋上なら誰も来ないし、告白の場所としても王道だ。こんなお誂え向きな場所を用意してくれるなんて、委員長はやっぱり頼りになるし優しい。でも、今更ながら少し気になったことが


「わざわざ用意してくれてありがとう。……今更だけどさ、私、委員長に彼方が好きって相談してないんだけど。なんでこんなに気にかけてくれるの?」


 委員長はいつの間にか海香ちゃんと一緒になって私のサポートをしてくれるようになっていた。今更な私の疑問に対して、委員長も少し可笑しかったのか表情を崩した。


「美鈴が彼方が好きっていうのはまぁ、バレバレだったよ」

「あっ、そう……」


 長い間海香ちゃんの気持ちに気付かなかったのに、こういう時は勘がいい。それを言ったら怒られるので口には出さないけど。


「私が美鈴を応援するのはね、美鈴もそうだろうけど、美鈴とのことでお世話になった恩返しがしたいからだよ」


 委員長は近くの椅子を引いてきて、私の対面に座った。その時の表情は、にこやかであるが真剣な表情になっていた。


「だからね、美鈴には報われてほしいの」


 委員長は何かを思い出すように窓の外の夕暮れを眺め、眩しかったのか、それとも思い出を振り返って神妙な表情になったのか、目を半分閉じた。


「屋上は私と海香との思い出の場所なの。海香が好きだって気付いて、海香と結ばれた場所だから」


 委員長が海香ちゃんへの気持ちを理解したのは、かつて屋上で別の子に告白された時。そして、同じ日にいろいろあって海香ちゃんが告白して二人は結ばれた。


 恋バナをしようってなった時、その時を語る時の海香ちゃんは本当に幸せそうだったのをよく覚えている。


「好きな人への告白は一度だけ。だから、告白はその人との間との何よりも特別な思い出になるの。私と海香もそう。だからね、美鈴と彼方にも告白は最高の思い出にして欲しいの」


 委員長の優しい言葉が、私の告白への決意をさらに固くする。委員長が机の上に置いた鍵を握って、委員長と目を合わせた。


「まだ、結ばれるかは分からないけどね」

「そうだね。でも、雰囲気はロマンチックに越したことはないでしょ?」

「うん。そうだね。ありがとう」


 私がかつては諦めていた彼方との特別。それを手に入れられる目前まできた。そして、それを手伝ってくれる心強い支援者達が何人もいる。


 私は応援で彼方を支えられた。


 私はこの恋を実らせるために進み始めることができた。


 私は彼方の一等星になれた。


 何者でもない凡人だった私がここまで来れた。そして委員長に最高のお膳立てをしてもらった。もう、この勝負に臆病になんてならない。


 今までの私の努力を信じて、ただ突き進むだけだ。


「絶対この恋を成就させてみせるよ」

「ふふっ、強い目になったね。もう心配はいらないみたいだね。じゃあ、がんばってね」


 最後に最高のサポートをしてくれた委員長は私から離れて別の仕事をしに行った。一人残った私は屋上の鍵をポケットに入れて、畳んだ衣装を束ね始めた。


 夕陽は今も少しずつ沈んでいっている。

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