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輝く太陽に祈りをこめて  作者: Sen
運命の文化祭
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34/53

めちゃかわファッションショー

「おー! すっげぇなこれ!」


 見事に仕上がっている造花で作られたフォトスポット用のオブジェに、買い出しから帰ってきた私は感嘆の声を上げた。


 準備開始から一ヶ月と少し経ち、本番は来週にまで迫っていた。急いで作業を進めるクラスもある中、委員長の完璧なスケジュール管理の甲斐もあり、私達のクラスは余裕を持って準備を進めていた。


「すごいでしょ。凪ちゃんが作ったんだよ」

「よくこんなの作れたな」

「えっと、フラワーアートが趣味だから……」


 委員長に紹介された凪ちゃんの方を見ると、ペコリと頭を下げた。彼女の名前は潮目しおめ凪。去年も私たちと同じクラスだった小柄で大人しい子だ。


 彼女はさっきからずっとクラスメイトにほめ殺しにされてるらしく、照れて顔が真っ赤になっていた。


「さっすが凪ちゃん!」

「お花の妖精さんだねぇ、かわいいねぇ」

「も、もぅ……はずかしいよぉ」

「キャー! 照れちゃってるのもかわいいー!」


 凪ちゃん普段から可愛い可愛いとクラスの女子から可愛がられてる。そしてメルヘンカフェの飾り付けで大活躍な彼女はいつにも増して猫可愛がりされながら褒められている。


「……なんで坂田先輩がいんの?」


 そんな凪ちゃんを可愛がる集団の中に、なぜか部外者の坂田先輩が混ざっていた。


「劇で裏方になって暇なんだって」

「あぁ、それで凪ちゃんのとこに」


 一年前に凪ちゃんが捨て猫を見つけた時、私達が里親探しを手伝って、坂田先輩が里親になり、そこから坂田先輩と凪ちゃんは仲良くなった。(坂田先輩からの一方通行であることは否めないが)


「およ、これはナイスタイミングなのでは?」


 そんな時、大きな袋を抱えた海香と美鈴達衣装係が教室に入ってきた。


「卯月に彼方に凪ちゃん、それと私と美鈴ちゃん、メインウェイター五人全員揃ってる」

「なら試着はじめよっか」


 海香が一人ずつ指をさしてメンバーが揃ってる事を確認すると、美鈴は大きな袋を近くの机に置いた。


 文化祭中は担当の時間区分は、五人のメインウェイターの誰か一人は必ずいるように決められている。


 メインウェイターの選出基準は、話題性と可愛さである。海香は言うまでもなく、インターハイで団体戦と個人戦で優勝するという結果を残したテニス部の私と委員長とマネージャーの美鈴、それと可愛いからとクラス内で激推しされて凪ちゃんが選ばれた。


「あっ、衣装完成したんだ」

「いえーす。卯月店長のスケジュール通り進んでるよー」

「もう、店長はやめてって」


 海香がおふざけ的なノリで返事をすると、委員長は苦笑した。委員長は文化祭準備の中で素晴らしいマネジメント能力を発揮し、そこからみんなに店長と呼ばれるようになった。


 私としても困ったら店長、といった思考になる程度には頼り甲斐があるのだ。さすが、先輩引退後のテニス部部長を任されただけはある。


「それじゃあしばらく教室は男子禁制って連絡しとくねー」

「外で力仕事してくれてるから申し訳ないね」

「まぁまぁ、それも青春ってことで」


 衣装係の女子達があまりにも無慈悲に男子たちに連絡を入れる。現在、男子たちは飾り付けのオブジェの運搬を少しずつ冷たくなってきた風にさらされながら頑張っている。まぁ、やる気に満ち満ちていたからいいや。


「……坂田先輩どうする?」

「まぁいいでしょ。坂田先輩だし」

「それもそっか」


 坂田先輩は変な人だけど迷惑をかける人じゃない。部活で深く関わっている私と委員長はちゃんとわかっているのだ。


 そうして各々が渡された衣装に着替えた。クラスメイトの一人がファッションショーみたいにしよー! と提案したので、着替え終わったらオブジェの陰に隠れて、みんなに呼ばれたら前に出てお披露目ということになった。


「準備できた?」

「はーい」


 全員が着替え終わると、最初にみんなの前に出たのは凪ちゃん。凪ちゃんの衣装は花モチーフの妖精。ヴェールを羽に見立て、白い花が散らされた緑のひらひらドレスを着こなした小柄な彼女は、まさに花の妖精といった雰囲気を纏っていた。


「か、かわいいー!」


 当然、凪ちゃんを可愛がるクラスの女子と坂田先輩は大盛り上がり。大勢の歓声にさらされて、凪ちゃんは恥ずかしそうにもじもじとしている。


「み、みんな……恥ずかしいよ……」

「いいじゃんいいじゃん! 最高! ビンに入れてお持ち帰りしたい!」

「坂田先輩、それ完全に悪役のやり口です」


 興奮して変態じみたコメントを言うと、まわりの女子たちからツッコまれた。


「なんか一言ちょうだーい」

「えっと……こほん」


 結構な無茶振りに凪ちゃんは咳払いをして集中力を高めた。


『ここのお花が見たいの? なら私が案内してあげる。ついて来て。お花を踏まないように気をつけてながらね』


 鈴の音がなるような綺麗な声に全員が魅了される。演技のプロの海香も感心しており、自然と拍手喝采が起こった。


 その後、凪ちゃんが一礼してから横に避けて、次は委員長と海香が出てきた。


「じゃーん!」

「どうかな?」


 先に出て来た海香はピンクのドレスを着こなし、銀色のティアラとネックレスで飾りつけられたお姫様の衣装。その後を追うように出て来た委員長は、純白の紳士服を着こなし、腰に剣をさした王子様の衣装だった。


 まさにお伽話のお姫様と王子様といったかんじで、もともとお似合いだったこの二人はこの役にぴったりとハマっていた。


「さすが、この二人は映えるね」

「なんたって公式カップルだもんね」


 安定な二人を見て、観衆たちは納得といったかんじでうんうんと頷いている。


「せっかくだし、私たちもなんかしよっか」

「そうだね」


 海香がそう言って手を差し出すと、その意図を全て察した委員長は彼女の前に跪いた。


『王子様、私を一生愛してくれますか?』

『もちろん。私は一生貴方を愛し続けます』


 そう言って、委員長は海香の手の甲に唇を落とした。恋人同士の二人だからこそできる演技に、その場の全員が胸をキュンと高鳴らせた。


「すごい……まじ尊い……」

「こんなのが見れるなんて……このクラスで本当に良かった……」


 凪ちゃんの時はキャーキャーと騒いでいた女子達が、今度は感極まっていた。


 そして委員長と海香も端に避けて、次は私と美鈴の番だ。美鈴は私と反対側のオブジェに隠れているから、私もまだ美鈴の姿を見れていない。


 みんなの前に出るドキドキと可愛い美鈴が見られるワクワクを胸に、私はみんなの前に出た。


「どうもー」


 私の衣装はロビンフットを意識した緑色の狩人衣装。ウェイターの仕事の邪魔にならないよう、弓を背中に掛けられるようにしてある工夫がされている。三角の帽子のつばに人差し指を当てて、それっぽいポーズをとってみた。


「流石彼方。イケメンだね」

「男子のメインウェイターがいない理由だね」


 メインウェイターのための高コストの衣装を作れる数には限りがある。そして話題性重視とはいえ、メインウェイター全員がお姫様とか妖精とかの女の子っぽいやつに偏らせるわけにはいかない。


 しかし、私が狩人、委員長が王子様で男子の役を担ったため、男子のメインウェイターの枠がなくなったのだ。


「おぉ、美鈴ちゃんも可愛い」

「彼方の隣も似合ってるね」


 観衆の女子達の声を聞いて、隣の美鈴を見る。その瞬間、私の胸は美鈴の水着を見た時と同じレベルでドキリとした。


 美鈴が来ていたのは赤ずきんの衣装。少し大きめに作られた赤い頭巾を深く被って控えめな印象を与え、赤いマントの下の黒と白のワンピースから覗く脚部がエロスを感じさせる。


 つまりやばいくらい可愛かった。


 美鈴の方も私の方を見つめていて、頭巾に隠れていても赤く染まった頬はしっかりと見えた。


「それで、二人はどんな会話を見せてくれるのかな?」


 そんな私たちに坂田先輩がニコニコしながらリクエストした。前二組がどちらもロールプレイをしたから流れができていて断ることもできない。


 それに、本番の時もロールプレイをするのだから、一種のテストみたいになっている。美鈴の方をチラリと見て、アイコンタクトをとってロールプレイを開始した。


『大丈夫でしたか、お嬢さん』

『はい。助かりました。このご恩は忘れません』

『いえ、当然のことをしたまでです。可愛らしいお嬢さんを助けられてよかった』


 赤ずきんのラストを想定したロールプレイ。私は意識して声を低くし、美鈴はヒロインらしい可愛らしい声。


 反応はどうかとみんなの方を向くと、拍手が湧き起こった。


「流石! 息ぴったりだね!」

「まさにヒーローとヒロインってかんじだな」


 周囲から好評だったようで、安心した私と美鈴は見つめあって胸を撫で下ろした。


 こうして試着を兼ねたファッションショーが終了し、服もぴったりだったので準備は問題なく進んでいった。


○○○


 その後、今日の分の仕事は終わりとなった。みんなが解散する中で、私と美鈴は教室に残っていた。そろそろ衣装から着替えようかと思った時だった。


「ねぇ彼方、ちょっとロールプレイの練習しない」


 夕陽が差し込む教室の中で、可愛い赤ずきんによって狩人に狼を倒す以上の難易度のミッションが課せられた。

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