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星の指輪  作者: 結城 凪
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密かな危険

その後の成果というと、猫のぬいぐるみとお菓子を五個ほどゲットした。全く、恐れ入りましたよ。ゲームセンターを出て俺たちは一階のフードコートへ向かった。何かを食べようというわけではなく獲得した景品の整理をするためだ。

「これをこうしたら。ふぅ、これならなんとか片手で持って帰れるだろ。」

「ありがとう。助かったよ。」

「いいよ、気にしなくて。片手は開けとかないと危ないしね。」

「そうだね。世の中物騒だし。」

「神隠しのことか?」

「まぁそれもあるけど。世の中いい人ばかりじゃないしね。」

「ああ、そうだな。」

なんて、少し暗い話題になっていたときに、

「あれ、千代チャンと朔夜クンじゃん。こんにちは。デート中かな?」

「違いますよ、先輩。ただの幼馴染ですよ。」

「あらら、違ったの。まぁでも、最近の世の中はほんと物騒よ。話題の神隠しもそうだけど、身近に危険は常にあるものよ?」

「それはどういうことですか?」

「うん。この二人にならいいかな。実はここだけの話、この地域で殺人事件があったのよ。」

「「えっ?」」

俺と千代は固まってしまった。

「殺人事件って?ニュースになかったですよ?コゼット先輩。」

「もう、千代チャンはコゼットって呼び捨てにしてほしいのに。」

「先輩は先輩ですから。それよりも。」

「殺人事件は本当よ。今日、家の近くの道路から遺体が発見されてるのを見たから。あの状況じゃ、とてもニュースにはならないでしょうね。」

「なんでですか。そんな重要なこと報道しないと危機感を持てないじゃないですか。」

これは持論だが、凶悪な事件ほどニュースで報道されるべきだと思っている。殺人鬼が町にいるかもしれないのなら知っていないと夜間に外出して襲われるなんてことが起こりかねない。だからこそ、人間社会への警鐘として必要な事柄だと考える。

「危機感ね。確かに朔夜クンの言う通りね。でも、報道できない理由があるのだとしたらどう?危機感を通り越して恐怖をもたらされる可能性があるとしたら?」

「どういうことですか?」

俺は息を飲んで聞いてみる。

「その死体ね、ミイラ化してたの。まるで、魂を抜き取られたみたいにね。」

「ミイラ化ってどういう?」

「さぁ、チラ見程度だったけどあれは普通の死体じゃないって素人の私でもわかった。あれはハッキリ言って異常よ。」

少し間をおいたあとで、千代が切り出した。

「つまり、そんな異常を原因も分かってない状態で報道するのは逆に危険ということですか?」

「その通り。流石千代チャン。うちの生徒会長ね。話が早いわ。」

「人の心に恐怖を植え付けることで基本的に人間はその状況に陥った時、何もできなくなってしまう。恐怖で体が動かないなんてアニメみたいなことだけど、実際、そういう例はいくらでもありますから。」

「そうね。人は無力だもの。人がどれだけのスペックを有していても、凶器には適わない。それと同じ理屈ね。」

淡々とそんなことを話す二人が少し怖かった。

「でもそれじゃ、もしこの事件の犯人が被害者を増やしていくのだとしたら、ただ死体が増えていくだけなので一緒なのでは?」

「いいえ、違うわ。世の中知らなければいい方が幸せなことがあるでしょ?」

「だとしても、それじゃこれから殺される人がいたら?」

「それは運がなかったと割り切るしかないでしょう。」

「でも!」

「朔夜クンは優しいわね。見ず知らずの他人も救おうとするなんて。でもそれは美徳ではないわ。ただの我儘。全てを救える人間なんて存在しないわ。もしそれがいるのならそれは人外の何かよ。」

そこまで言われて何も言い返せなくなった。本能的に先輩の言うことを理解しているからだ。

「うん。頭では分かっているようね。心の整理がついてないだけであって。」

何も答えることができなかった。

「なら、ハッキリ言っておくわ。その甘さは捨てなさい。本当に守りたいものが出来たときに決心を鈍らせるだけよ。」

「守りたいもの。」

「ちょっと暗くなりすぎたわね。もう直に太陽も沈むから早く帰りなさい。呼び止めてごめんなさいね。」

「ありがとうございます。コゼット先輩。」

千代がお礼を言って、コゼット先輩は颯爽と去っていった。

「大丈夫?朔夜?」

「ああ、すまん心配かけたな。」

「ううん、私は大丈夫。」

「先輩の言う通り、日が暮れる前に帰ろう。家まで送っていく。」

「え⁉いいよ、悪いよ。」

「遠慮するなって。千代は女の子なんだから。ほら行くぞ。」

「そういうとこズルい。」

「なんか言ったか?」

「いやいや、なんでもないよ。ほら、早く帰ろう?」

「了解。」

そういって、俺は千代を送り届けることにした。といっても、俺らの家は駅前から十分ほどの距離なので送り届けるは過ぎた表現だったかもしれない。帰路での会話は特になかった。多分、俺に気を使ってくれているのだろう。

「今日はありがとうね。久々に学生っぽいことができたよ。」

「これくらいならいつでも付き合うよ。明日は道場で練習だっけ?」

「うん。お昼の一時からかな。練習見に来る?」

「いや、俺はいいよ。元々、剣道辞めた身だから。大人しく隠居してるよ。」

一ノ瀬家は有名な剣道の家系だが、剣道をもっと広めたいという親父の意向で週一回土日のどちらかで道場を開いている。千代はそこに通っている。剣道の腕はかなりのものだ。俺が通っていた半年間一緒に剣道を習っていた。幼馴染にして一時を共にした級友なのだ。

「そっか。わかった。じゃあ、明日お昼ご飯一緒に食べようよ。」

「お昼って、一時からだろ?食べてすぐ動けるのか?」

「大丈夫。食べ物は命の源だもん。」

「そっか。じゃあどこ食べに行くか。できれば近場で済ませたいな。」

「あっ、いいよ。お弁当作っていくから。」

「え?」

「楽しみにしててね。じゃあね!」

「あっ。おい!」

声をかけようとしたが、もう家の中に入ってしまった。

「ったく、しゃあねーな。リビングで食べるか。」

なんて明日のことを考えながら自分の家へと歩き出した。

楽しいデートから一転して暗い話題になってしまいました。

とりあえず今日でデート(?)編は終わりです!

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