突撃!一ノ瀬家
「お前、本気か?」
「もちろん。」
「いやでも・・・」
「何をいまさら、ここが昨夜の家ね。思っていてより大きいね。もしかしてお金持ち?」
「別に大したことないよ。いや、そんなことは・・・」
「もう。いいから!ほら!考えはあるか、ら!」
俺はアヴァロンに背中を押されるがままに家の中に入った。
「あれ、兄貴おかえ・・・えっと、どちら様?」
「初めまして。私はアヴァロンと言います。これからしばらく厄介になるのでよろしくお願いします。」
「え、厄介って、うちに住むの⁉兄ちゃん⁉」
「あー、まぁそういうことだから・・・」
「なんだ、騒がしいぞ。」
リビングから親父と母さんが玄関に顔を出した。かなりでかい声で話していたので気づくのは当たり前か。
「うん?君は誰だ?」
「私はアヴァロンと申します。朔夜のお父様ですよね?しばらくここに住まわせていただくことになりましたのでよろしくお願いします。」
「何を言ってる?冗談は・・・」
「冗談ではありませんよ。もう、朔夜と話はさせてもらいましたから。」
「おい、朔夜。説明しろ。」
「えっと・・・」
親父に説明を求められるもどう答えるのが正解なのか全くわからない。だって、言い訳を考える前に家に入ってしまったのだから。
「全く。お前はどこまで私に迷惑をかければ済むのだ。」
親父はいつもと変わらない。汚らわしい目で俺を見ている。
「申し訳ありませんが、私は朔夜のおじい様、一ノ瀬明洋の友人としてここに来ました。その方から、「何かあればここに来なさい。」と助言を頂きました。明洋様のご子息であられるあなたが聞いていないはずがないのですが?」
突如、アヴァロンはそんな脈絡のないことを言いだした。確かに、一ノ瀬明洋は俺のおじい様だ。昭和の大剣豪として名を馳せていて、約十年間に行われた大会を全て優勝した実績を持っており、この一ノ瀬家を剣道の名家と言わしめたのはこの偉業があるからである。一年前に亡くなってしまったが俺はそんな話を聞いたことがない。それに、アヴァロンは千年ぶりとか言ってなかったか?なにがどうなってるんだ?すると、親父は
「ああ、アヴァロンとは君のことか。話は父から聞いている。ゆっくりしてもらって構わない。」
「ありがとうございます。」
え、親父が認めた?いやいや絶対におじい様に会ったことはないはずなのに。もしかしてアヴァロンが何か仕込んだのか?
「あ、すいません。あと一つだけ。」
「なんだね。」
「彼、朔夜は素晴らしい人間です。」
「ああ、そうか。君から見ればだろう?私はそれを息子とは認めん。」
そういって、リビングに行ってしまった。どうもそこだけはブレていないらしい。
「えっと、アヴァロンさんだったかしら?私は朔夜の母親の一ノ瀬綾乃。そして・・・」
「僕は一ノ瀬零夜です。朔夜の弟です。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「えっと、お部屋は朔夜の隣の客室がしているはずだから、朔夜案内してあげて。さぁほら。」
「分かったから、押さないで。」
母さんに背中を押されて俺とアヴァロンは二階に上がる。一応、一ノ瀬家は名家であり親父は会社の社長をしているために、自分で言うのも何だが。家はかなりの豪邸だ。故に客室は十数個ある。基本的に客室が全て使われることがないが、平日の昼に来ている家政婦さんによって部屋の中はきれいに保たれている。
「ここが、アヴァロンに使ってもらう部屋だけど何か足りないものはない?」
「大丈夫だよ!だって、ベッドにこれがテレビでしょ?それに、これは冷蔵庫かしら?」
「ああ、一応ホテルの部屋の客室がコンセプトになってる。それにこの時期だからこたつもあるぞ。」
「へぇ。うん。快適そうね。朔夜の部屋も見せてよ。隣なんでしょ?」
「いいけど、俺も変わったもんは何もないぞ?」
「それでも見てみたいわ。」
「はぁ。」
アヴァロンを俺の部屋に入れる。特に変わったものはないのだが、
「ねぇ、朔夜。この黒い箱は何?」
「これはテレビゲームってやつだな。」
「めちゃくちゃ楽しいって言ってた、あれ?」
「ああそうだ。やってみるか?って前に一つ聞いていいか?」
「うん?何?」
「なんで、親父はお前の説明に納得したんだ?だってお前おじい様に会ったことないだろう?」
今、一番の疑問をアヴァロンに問いかける。
「それはこれのおかげね。」
彼女は自分の目に指をさす。
「目?」
「そう。だけどただの目じゃないわ。魔眼って呼ばれるものの能力よ。」
「魔眼?」
「何かしらの魔術、魔法が備わっている目のことよ。エメラルドグリーンのこの左目には記憶を書き換えることができるの。」
だから、親父はあんなあっさりとアヴァロンの言うことを鵜呑みにしたのか。
「なるほど。考えってこれのことか。それで帰り道に俺の家族構成を聞いてきたのか。」
「まぁね。それ以外にもしばらくここに住むのだから必要な知識でしょう?」
「違いないな。」
「ね、それよりも早くこのテレビゲームをやりたいわ。」
「はいはい。これがコントローラーで・・・」
俺はアヴァロンに教えながら一緒にゲームをプレイすることになった。タイトルは最近流行りの格闘ゲームだ。かなりカジュアルに遊べるげーむということで、学校の間でも何気に流行っている。俺自身別に得意というわけでもなく、直人の家に転がり込んだ時によくプレイしていた。そして・・・
「もう一回!ほんとに最後だから!」
「アヴァロンそれもう十回超えてるから。もう寝ないと明日学校だから。」
およそ二時間ほどプレイしてもう日付をまたいでいる。最初は得意ではないキャラでプレイしていたがアヴァロンも上達していったので本気を出したらこのざまである。正直、精神的にも今日は疲れたので寝たいのだが・・・
「うう・・・」
「明日俺が学校行ってる間に腕を磨いといてくれよ。」
「わかった。明日は絶対勝つんだからね!じゃあ、おやすみ。」
「おう、おやすみ。」
なんとか引き下がってくれて助かった。あのまま行ってたら朝までコースだったな。今度はもう少し手加減をするとしよう。
「さてと・・・」
俺は部屋の明かりを消してベッドにダイブした。そして土日にあった出来事が頭に浮かぶ。なんせ、二回もわけのわからない化物に襲われたのだ。ほんとに気が参る。だけど、アヴァロンから貰ったこの指輪があれば俺も戦うことができる。アヴァロンや千代に助けられる俺ではなくなったということだ。アヴァロンはしばらく敵が襲ってくることはないと言っていたが、用心は必要だ。明後日から始まる特訓もしっかり取り組まないといけない。
「本当に変わってしまったな、俺の人生。」
普通ではない人生を俺はこれから歩んでいくのだろうか。そう考えている内に俺の意識は暗闇に落ちていった。




