8話
古代聖堂への道中ーーー野営一日目
「なにー!ブリリアントポーク今日食えないのか!?」
「肉はある程度日を置かんと硬くて不味いぞ。あと一日か二日後あたりにはいい具合になるはずだ。今日はシチューだからそれで我慢せい」
フラントは当然と言った感じだが。慣れない行軍の間中それを楽しみにしていたカズマのダメージは大きかった
「はぁ疲れた・・・」
「何言ってるのよ。ずっと馬車の中にいたくせに、騎士たちは歩きながらしかも護衛までしてくれてるんだから」
マチルダ王女が疲れ切ったカズマを見て情けないというように溜息をつきながら言った
「お前だって馬車の中にずっといただろ」
「私はむしろ歩きたくてたまらなかったわ馬車の中なんて退屈だもの」
「いや今日は外もとんでもなく退屈だ。ゴブリンしか出てきてない」
騎士団団長にして十人衆のケッカ・カガリビが嘆きの言葉を口にした強者と戦うことを生きがいとしている彼にとって退屈は苦痛なのだ
「僕はピクニックだと思って楽しんでたけどね」
同じく騎士団団長にして十人衆のフロイト・グランチェストが爽やかに言った
「お初にお目にかかります王女様。騎士団団長のフロイト・グランチェストです。今回の行軍身命を賭して王女様の身をお守りすることをお約束致します」
「あ!騎士団団長のケッカ・カガリビっす。よろしくおねがいします」
2人は王女マチルダに対して恭しく頭を下げた
「お二人はカズマと仲がよさそうですね」
「有名人ですからね彼は」
「迷惑だほっといてほしい」
「無理だよそれは、ふふ・・・」
カズマの言葉にフロイトはクスクス笑いが止まらなくなった
「カズマとはいつからお知り合いに?」
「一年くらい前ッス、その時にカズマが武道大会で王様の眼にとまって王様の配下になった時に知ってその後に食堂であったっス」
「あんた武道大会に出たの?」
「ああ、こっちの世界に来たばかりで金が無くてな」
それは国王主催の武道大会でこの大会で結果を出せばたとえ身分の低いものであっても兵士や騎士になることができ、賞金も出るので腕に自信のある者にとっては格好のチャンスの場であるのだ
「よく優勝できたわね。国の内外から強者が集まるのに」
「一回戦負けっス」
「え!?」
「農民の13歳の少年に負けたっス」
「弱っ!」
「ムカッ!お前だって実戦経験ゼロだろ」
「えっ!そうなんっスか?」
「そ、それは・・・」
「貴族と王族の為の学校だからな。万が一にも怪我をさせるわけにはいかないからな、お勉強と学校の敷地で魔法の練習しかしないよ。そのくせ役職は卒業と同時に一気に総団長と同じだからな笑わせるぜハーハッハッハッハーーーーー!!!」
「腹立つわねアンタ!!!一発殴らせなさい!!」
「事実を言ったまでだ暴力に訴えるなんて卑怯だぞ!」
「うるさい!問答無用!!」
カズマとマチルダの追いかけっこがまた始まってしまった。それを見ながらケッカとフロイトは言葉を交わす
「それじゃあ今回は期待できねえな。国王様は同じ年のころには国内でも相当な腕で自分の手で洗礼の儀への道を切り開いたって話だったから期待してたんだけどな」
「まあね、ただ実戦を経験すればわからないよ。魔法の才があるのは間違いない事だからね」
カズマの体では素早く逃げることなど到底できるはずもなくすぐに追いつかれてしまった
「お、捕まった」
「殴られてるね一発って言ってたけど嘘だったみたいだ」
「でも思ったよりとっつきやすい人で安心したぜ」
「そうだね」
「明日なんだろ敵さんがくるのは」
「多分ね。明日はさすがに退屈することは無いと思うよ」
「楽しみだぜ」
一行はカズマとマチルダの様子を見ながら幾分和んだ雰囲気になったそうして旅の一日目は平穏に過ぎていった