9話
昼間だというのに薄暗く湿度が高いジメジメとした部屋に男たちがいる
「向こうは150人ほど、そのうち隊長が10人で十人衆は3人そして落とし子だ。想定より戦力が多いが問題ないな?」
全身黒づくめで短髪の顔に傷を持つ男が言った
「こちらは問題ない」
「・・・・・・・・」
「ケッカは俺がもらう。あいつが一番強いからな」
「十人衆には二人一組でかかる。それを忘れるなよ」
「たった三人かよ少ねえな」
「俺は戦わなくていいからゆずってやるよ」
「はー退屈だぜ」
「王女マチルダいい女」
まとまりがなく好き勝手に物をいうメンツを見てジルーは頭を抱えたくなった。彼は今回の暗殺団のリーダーとしての役割を与えられているが、このメンバーをまとめ上げるのは無理だ
(あと一日の辛抱だ)
今回の王女暗殺に対しては史上初めて、ライジング国に敵対する3か国が戦力を出し合いチームを結成した。その為に特殊スキル所持者8人という異例の戦力となったが、チームとしてのまとまりは皆無だった
ジルーは地図と写真を取り出し皆の前に置く
「再確認するぞ。まずはケッカ・カガリビ。特殊スキルは熱き血潮戦闘時は気力体力ともに消耗する事が無く相手が強いほど戦闘力がアップする騎士団最強との呼び声が高い男」
「ふん!俺がぶち殺してやる」
「次はフロイト・グランチェスト。特殊スキルは天才。特殊スキル以外のあらゆるスキルを常人より圧倒的に早く取得することができる。そのためどんな相手にでも対応できる柔軟性をもつ」
「コイツ格好つけやがってなめんじゃねえぞ」
「次はナギ・インターン。特殊スキルは不明。3年前の武道大会に優勝して騎士になった元Aランク冒険者。女だがその戦闘力は高く使用武器は槌」
「なんで騎士なんかになったんだこいつ冒険者のほうが稼げるのによ」
「次は王女マチルダ。貴族学校の魔法科を首席で卒業。実戦経験は皆無。特殊スキル無し」
「ハッ!素人だなコイツは」
「最後は落とし子カズマ。武道大会一回戦敗退」
「プッなんだよこいつ一回戦って素人でも突破できるわ」
「警戒すべきはこのメンバーだ。あとは特殊スキルを持っていない隊長クラスと一般の騎士だ我々の足元にも及ばないだろう」
「このナギって十人衆の特殊スキルはなんで不明なんだ?」
「冒険者時代はソロで迷宮が専門だったらしく情報がない。さらに騎士になってからも王妃なんかの女性の王族のそばにいることが多く、戦いの機会が少ない」
「ふーんまあ俺の敵じゃあねえだろうがよ」
「一番不気味なのは・・・・」
場の雰囲気が静まり返っていく
「落とし子だな」
「コイツも団長と同じく二人がかりで殺す」
「そうだな。落とし子は世界を改変する存在だからな」
「それは待ってもらおうか」
今まで黙っていた男が口を挟む。40代ほどの年齢でやや長めの髪と髭を生やした白いシャツとジャケットを着た眼光するどい男
「どういうことだ」
「落とし子に関しては我が国から仲間に引き入れることが出来るならそうしたいという希望があってな。殺すならばそれが不可能になった時にしてもらおう」
「勝手なことを言うな!そんな話は聞いていない」
「これは決定事項だ譲る気はない」
「・・・・・・・・・・・・」
ジルーと男が睨みあう
「まあいいじゃないのそれで、今回は王女を捕えるのが目的だし」
「そうだな、ここで百鬼殿と争うのは目的が違う」
ジルーがふっと息を吐き諦めの表情を浮かべる
「仕方がない。ただし王女を捕えるのが最優先だ交渉にダラダラと時間をかけるのはやめてもらおう」
「わかった感謝するよ」
男が笑みを浮かべ話がまとまったので内心ジルーはほっとしていた。このメンバーの中で最も強いのはこの男だと思っていたからだ
ショウ・コウグン。コリグレン国有数の実力者でその武で長年にわたり国を支えてきた。
かつての戦争で一気に名をあげコウルダン国の大きな戦には必ずこの男が参戦し多くの外敵を排除してきた。その特殊スキルから百鬼とよばれ数多の霊獣を使役する戦争のエキスパート
ジルーは襲撃場所と各自の担当を決定した
「よし!これ以上争いが起きないよう後は必要なこと以外口を聞かずに各自待機だ」
二日目の夜、ついに闘争がはじまる




