第14話 やっぱり魔物のせい?
「さっきは他の人間がいる手前、言えなかったが――てめぇは、幼いころ頃から魔力の扱いを学んできた。この土からは、魔力とよく似た臭いがするはずだ」
クゥエルが諭すように言う。
ルカは、ハッとするように土をすくって臭いを嗅ぐ。
「……? やっぱり、土の匂いしかしな――これって……!」
クゥエルは臭いと言ったが、ルカには臭いではなく気配のようなものを感じることができた。
「ルカ、なんの臭いがしたの?」
リーゼロッテがウズウズしながら問いかける。
「臭いっていうか、微かにだけど……魔物の、黒い気の感じがする」
ルカがそう言うと、2人は首を傾げた。
「魔物……?」
「今までこの村に、魔物は湧いてませんけどね……」
「ようやく分かったか。インプの息とは違う、ちゃんと魔物の臭いだ。今は湧いてなくても、この畑の土中に魔物がいたことを物語っている」
クゥエルのその言葉に、3人は驚き戸惑った。
「じゃあ、野菜の元気がないのは、その魔物のせい……?」
リーゼロッテが言う。
「魔物に、傷つけられちゃってるってことなのかな……だったら――」
ルカは、畑の茂みにしゃがみ込み、こっそりとぷにぷにを召喚した。
「きゅっきゅ――」
「ぷにぷに、静かに……!」
ご機嫌で登場したぷにぷには、ルカの人差し指が口に触れたため、すぐに口を閉じた。
「ごめんね、ぷにぷに。町で回復魔法をかけてた時みたいに、静かにこの辺のニンジンに回復魔法をかけてくれる?」
「きゅ♪」
ぷにぷには小さく返事をすると、この辺りのニンジンに向かって回復魔法を放った。
回復の光がキラキラと人参の葉を撫でていく。
すると、ルカの願望通りにニンジンの葉が元気よくピンと立っていったのである。
皆は「おぉーっ!」と歓声の声を上げた。
「いや、やっぱ、ぼっちゃん……規格外っすね。教会の魔道士でも、こんな大胆な回復魔法、見たことがありませんよ」
ルカは「ぜぇ、ぜぇ……」と肩で息をしていた。
「だいぶマシにはなったけど、あまり広い範囲を回復しようとすると、こうやってすぐ疲れるんだよね。それが、課題かな」
ケヴィンは「なるほど……」と相槌を打った。
皆がぷにぷににお礼を言うと、ぷにぷにはご機嫌で魔法陣の中へと帰っていった。
「でも、希望は見えてきた。一気に全部は無理だから、毎日ちょっとずつニンジンを回復させてあげていったらいいね。町の魔道院の前でやってたみたいにさ」
ルカがそう言うと、ケヴィンもリーゼロッテもうんうんとうなずく。
3人が意気込んでいる傍ら、クゥエルは納得のいかない表情を浮かべていた。
「これで解決すんなら、苦労しないんだがな……」
◇
――翌日。
「……やっぱりか」
クゥエルの懸念通り、昨日は元気を取り戻したニンジンたちも、他のニンジンと同じように萎れてしまっていたのである。
「なんで……!?」
「しなしなに戻ってるわ!」
「ありゃ、ぬか喜びでしたね」
ニンジンお前、昨日はあんなに元気になったのに……!
昨日のあの元気になった光景があったからこそ、このまるで生きることを諦めたかのように垂れ下がった葉には、ルカの心にくるものがあった。
ニンジンと同じようにガーンと萎れる3人。
振り出しに戻った解決策を練り直すため、彼らは村に引き返した。
すると、村人たちのこんな会話が聞こえてきた。
「スワ鳥が低く飛んでるなぁ。こりゃ、夕方には一雨くるな」
「え~、また雨が降るの? もう、うんざりだわ……」
ルカたちは顔を見合わせて「雨……!」と呟いた。
村人たちは、雨になると決まって家の中に引きこもるそう。
雨が降ったら、行動開始だ――




