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灰森の巣竜  作者: AI太郎
動乱の世界
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紫晶の反撃

紫の閃光が消えた。


森は静まり返っていた。


先ほどまでそこにあった樹海は消えている。

地面は黒く溶け、岩盤が露出し、

空へ向かって巨大な破壊の溝が刻まれていた。


天鹿紫晶滅界。


翠角の賢王が

結晶領域を解除し、

地脈の魔力をすべて収束させて放った

最大の奥義である。


その威力は森を貫いた。


数百メートルの樹海が消滅し、

大地は焼け、

空気すら揺らいでいる。


そして――


破壊の中心。


そこに影が立っていた。


巨大な影。


寅だった。


黄金の体は煤けている。

毛皮の一部が焼けてみえる。


だが。


それだけだった。


寅はゆっくりと首を振る。


焼けた毛皮がはらりと落ち、黄金色の毛皮が表れる。


「……見事だ」


低い声だった。


その声には嘲笑も怒りもない。


ただ純粋な評価。


寅はゆっくりと前足を踏み出した。


その瞬間。


地面が沈む。


圧倒的な魔力圧。


まだ残っていた魔物たちが

一斉に逃げ始める。


狼。

鹿。

竜蜥。


すべてが本能で理解していた。


これは。


勝てる存在ではない。


しかし。


二体だけは動かなかった。


断牙の王。


翠角の賢王。


狼は血まみれの体を引きずりながら立つ。


前脚の骨は砕けている。

呼吸も荒い。


それでも。


牙を剥いた。


賢王も同じだった。


巨大な角は

天鹿紫晶滅界の反動でひび割れている。


魔力もほとんど残っていない。


それでも鹿は一歩前へ出る。


寅はそれを見て

静かに笑った。


「まだ来るか」


答えはなかった。


断牙の王が地面を踏み砕く。


筋繊維が軋む。


そして。


牙王絶走。


狼の巨体が消えた。


爆発的加速。


岩盤を砕きながら

一直線に寅へ突撃する。


だが。


寅の前足が動いた。


一撃。


それだけだった。


狼の体が弾き飛ぶ。


地面を転がり、岩へ叩きつけられる。


骨が砕ける音が響いた。


それでも。


狼は立ち上がる。


血を吐きながら。


再び牙を剥く。


賢王も動いた。


砕けた角が再び輝く。


残った魔力をかき集める。


地面の草が伸び、

樹根が隆起する。


戦場が再び森へ変わり始める。


寅はそれを見て

わずかに目を細めた。


「ほう」


「その体でまだ戦うか」


狼が低く唸る。


鹿は静かに構える。


どちらも理解していた。


勝てない。


だが。


ここで退けば

洞窟の奥へ侵入される。


それだけは許されない。


寅はゆっくり息を吐いた。


その威圧だけで

地面が軋む。


そして。


前足がわずかに動く。


次の瞬間。


戦場の空気が変わった。


洞窟の奥から声が響く。


「やめろ」


幼い声だった。


だが。


その声は絶対だった。


ダンジョン核。


二体の王は動きを止める。


狼の牙が震える。


鹿の角がわずかに揺れる。


だが。


逆らわない。


主の命令だった。


核は静かに言う。


「撤退」


狼は唸る。


鹿は黙っている。


沈黙。


そして。


断牙の王がゆっくりと牙を閉じる。


翠角の賢王も角を下ろした。


二体は後退する。


寅はそれを追わない。


ただ静かに洞窟を見る。


黄金の瞳が細くなる。


「なるほど」


低く呟いた。


「ここが巣か」


寅は歩き出す。


ゆっくりと。


洞窟へ向かって。


断牙の王は振り返る。


賢王も同じだった。


だが。


追わない。


追えば死ぬ。


それを理解していた。


そして。


十二災冠。


覇牙の試練王は。


灰森の竜巣の内部へ。


侵入した。

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