依頼
交易都市オルカの冒険者ギルドは、朝だというのに酒と汗の匂いが混じっていた。港からの荷が届く日は依頼も増える。だが今日は様子が違う。ざわつきの中心に、オリバーが立っている。
「森の王が浅域で吠えた」
その一言で、室内の空気が少し沈む。黒角熊。灰森の王。
「またかよ……」と誰かが呟く。
「討伐じゃない」
オリバーは続ける。
「調査だ。領主セルガルド様直々の依頼だ。浅域まで入り、異変を確かめる」
奥の卓でエドリックが面倒そうに眉をしかめた。
「直々、ねえ……面倒事の匂いしかしねえな」
隣のアレンが顔を上げる。
「王が出たんですよ? 放っておけないでしょう」
「放っておけないのは領主様の気持ちだ。俺たちは生きて帰るのが仕事だろ」
「でも森が揺れてるって話です。鹿も減ってるし、ゴブリンの死体もあったって」
エドリックは鼻で笑う。
「森はいつだって揺れてる。揺れてねえ森のほうが怖い」
向かいで静かに聞いていたセインが口を開く。「でも、今回は少し違う気がするの。魔力の底がざらついている。大きな死があったみたいに」
エドリックがちらりと彼女を見る。「……お前の勘は当たるから嫌なんだよ」
オリバーが二人に視線を向ける。「エドリック、お前が行け。森の道を知ってるのはお前だ」
「他を当たれよ」
「他は王を見ただけで腰を抜かす」
小さな笑いが起きる。
エドリックはため息をついた。「浅域までだぞ。王に遭ったら逃げる。追わない、戦わない。いいな」
アレンが身を乗り出す。「でももし倒せる機会が――」
「ない」エドリックは即座に切る。「あれは森の主だ。俺たちは森の客だ。勘違いするな」
その時、ギルドの扉が勢いよく開いた。赤い外套が目に入る。セルガルドだ。若い領主は真っ直ぐに歩み寄る。
「王を倒せるなら、私は今すぐ兵を出す」彼は言う。「だが無策では出せん。民を守るのが先だ。まずは見てこい」
アレンの目が燃える。「見てくるだけで終わらせません。俺は――」
「お前はまず帰れ」エドリックが遮る。「帰れなきゃ何も始まらねえ」
セルガルドは二人を見比べ、わずかに笑った。「若いな。いい。だが命を安く使うな。エドリック、任せる」
エドリックは頭を掻いた。「……ちっ、分かりましたよ。浅域まで。見て戻る。それだけだ」
ギルドを出ると、石畳の喧騒が戻る。アレンはまだ熱を帯びた顔で歩いている。「もし本当に森の奥で何かが起きてるなら、俺たちが止めないと」
「止めるのは領主様の仕事だ。俺たちは証拠を持ち帰るだけだ」
「でも――」
「でもは森に入ってから言え」
セインが小さく笑う。「二人とも、森の前で喧嘩しないでね。森は怒ると長いから」
エドリックが肩をすくめる。「森が怒る前に、王に会わなきゃいいがな」
三人は灰森へ続く街道へ向かった。
エルドリック・・・強いおじさん。足速い。
アレン ・・・若い。絶賛修行中。AIいわく「こいつア、強くなるぜェ」らしい。
セイン ・・・かわいい。いろんな意味で才能アリ
セルガルド ・・・熊さんと殴り合えるめちゃ強いお兄さん。鷹○守みたいな人らしい。




