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灰森の巣竜  作者: AI太郎
王国戦
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エピローグ

その報せは、最初は誰も信じなかった。


マーレミア王国。


海を制し、交易を握り、数百年に渡って周辺諸国を圧倒してきた国家。

その王が自ら出陣し、軍を率い、ダンジョン討伐へ向かったという情報は各国に届いていた。


それ自体は驚くことではない。


強大なダンジョンが出現すれば、王が動くことは過去にもあった。

そして、その結果は常に同じだった。


ダンジョンは滅びる。


それがこの世界の常識だった。


だが。


今回だけは違った。


王国の主力軍は帰らなかった。


将軍は帰らなかった。


そして。


王も帰らなかった。


最初にその事実を受け取ったのは、王国と海を隔てて向かい合う小国家だった。


使者が来た。


震える声で報告する。


「……灰森の竜巣」


言葉が続かない。


それでも絞り出す。


「討伐軍……壊滅」


その場にいた者たちは最初、意味を理解できなかった。


壊滅?


誰が?


王国軍が?


「……王は」


震える声が続く。


「戦死」


沈黙が落ちた。


数秒。


いや。


数十秒。


その場にいた誰一人として、言葉を発することができなかった。


そして。


次の瞬間。


世界が震えた。


____________


商業国家リドヴァル。


王国の交易網に依存していた都市国家は、報告を受けた瞬間に会議が開かれた。


長机を囲む商人たちの顔には、恐怖が浮かんでいる。


「王国が……負けた?」


誰かが言う。


誰も答えない。


だが一人の老人がゆっくりと言った。


「違う」


その声は冷静だった。


「王国が負けたのではない」


老人は地図を見る。


灰森。


そこに黒い印がついている。


「灰森の竜巣が...」


ゆっくりと続ける。


「勝利したのだ。」


その言葉の意味を、誰もが理解していた。


それは。


この世界の秩序の崩壊を意味する。

_____________


北方帝国。


皇帝は報告書を静かに読み終えた。


書類を机に置く。


そしてゆっくりと呟く。


「……面白い」


周囲の貴族が一斉に顔を上げた。


皇帝は窓の外を見る。


遠くの山脈。


その向こうに灰森がある。


「王国が落ちた」


その声には恐怖はなかった。


むしろ。


期待があった。


「ならば」


皇帝は笑う。


「我らが竜をいただこうか」


だが。


世界の震えは、それだけでは終わらない。

_____________________


世界のどこか。


深い地の底。


巨大な空洞。


その中心に、影が座っていた。


巨大な虎。


黄金の瞳。


筋肉の塊のような身体。


それは。


十二災冠の一柱。


寅。


その周囲には、王種の魔物が跪いている。


寅はゆっくりと目を開けた。


その視線は遠くを見る。


灰森。


竜巣。


「……なるほど」


低い声。


その声だけで空気が震える。


配下の魔物が震えた。


寅はゆっくりと立ち上がる。


巨大な爪が岩盤を削る。


「王を殺したか」


その瞳が光る。


それは怒りではない。


歓喜だった。


「良い」


寅は静かに言う。


「実に良い」


長い間。


この世界は退屈だった。


強い者はいる。


だが、それは総じて獲物でしかない。


敵たり得る者は少ない。


だが。


今。


寅は感じている。


灰森の奥。


巨大な魔力。


竜。


ダンジョン。


その存在。


寅は笑った。


「準備だ」


その声だけで空気が震える。


周囲の王種が一斉に頭を下げた。


「戦う」


その言葉は静かだった。


だが。


それは宣言だった。


世界最強の狩人が。


動き出した。


___________________

同じ頃。


灰森。


竜巣の奥。


最深層守核域。


崩れた洞窟の中央で、灰色の竜がゆっくりと息を吐いていた。


その身体はまだ完全には回復していない。


棘翼は砕け、甲殻は裂け、全身に傷が残っている。


だが。


その周囲の空間は変わり始めていた。


地脈が震える。


菌糸が広がる。


魔力密度が上がる。


魔人が静かに言った。


「主」


その声には、少しだけ誇らしさが混じっていた。


「世界が」


少女は空を見上げる。


地上ではない。


魔力の流れ。


世界の反応。


それを見ている。


竜は答えない。


だが。


その瞳は静かに閉じられた。


魔人は続ける。


「敵が来ます」


十二災冠。


国家。


世界の強者たち。


すべてが。


灰森へ向かう。


だが。


それは恐怖ではない。


竜巣は。


今。


次の段階へ進もうとしていた。


森が広がる。


菌糸が増える。


地脈が繋がる。


ダンジョンが。


進化する。


魔人が小さく笑う。


竜がゆっくりと目を開ける。


アメジストの瞳。


その奥には。


静かな決意があった。


灰森の竜巣。


その進化は。


まだ始まったばかりだ。

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