表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰森の巣竜  作者: AI太郎
森の支配者
PR
2/187

掘る

森で生き延びるうちに、地上の広さが鬱陶しくなった。匂いは散り、音は拡がり、強いものの影はどこにでも落ちる。追われれば走るしかない。ならば、消える場所がいる。

 


最初に掘った穴は浅すぎて、夜のうちに崩れた。


湿った土は重く、天井はすぐに落ちる。


何度も埋まり、そのたびに掘り直す。


爪の先が割れ、顎が痛む。


それでも削る。


土の質を覚える。

湿りすぎた層は崩れる。

根が絡む場所は強い。

石の混じる帯は支えになる。


次第に、ただの穴では足りなくなった。


奥へ進む。

通路を曲げる。

入口を狭める。

曲がり角を作る。


自分の体に合わせた幅にすると、振り向きやすく、押し込まれにくいことに気づく。

考えたわけではない。何度も崩され、その結果だけが残る。


狼が一度、入口を嗅いだ。


三匹。


足音は軽く、それに速い。


私は奥へ退き、息を殺す。


狼は中を覗き、狭さに鼻を鳴らし、入らなかった。


深くすれば、入れなくなる。

浅ければ踏み込まれる。


それだけの違いだ。


鹿の動きも読むようになった。


水場へ向かう道は決まっている。

私はその途中に細い落とし穴を掘ったが、最初は失敗した。

深すぎて、自分が落ちた。


土の底で身をよじり、ようやく這い上がる。

次は浅くする。足を取るだけでいい。


転んだところを引きずり込めばいい。


狩りは変わる。

追うのではなく、待つ。


通路の奥で振動を聞く。


鹿の蹄は規則的で、狼は波打つ。


ゴブリンの足音は軽く、時に止まり、何かを落とす。

火の匂いが土を通して薄く伝わることもある。


命が抜ける瞬間、熱が流れ込む。


その量は個体ごとに違う。

鹿は多く、狼は鋭く、ゴブリンは薄い。

私の内側に残る熱は体の奥に溜まり、消えない。


だが嫌ではない。


巣の周囲に変化が出る。


死骸の残りにスライムが集まり、通路の壁を薄く覆う。

最初は邪魔だったが、やがて気づく。

溶かした残滓が土に染み込み、壁が締まる。


甲殻虫は崩れかけた箇所に群れ、湿りを吸う。

私は彼らを完全には追い払わない。


動きを観察し、害の少ないものは残す。

巣は一本ではなくなった。


枝分かれし、

緩やかに螺旋を描き、

上と下が交差する。


偶然ではなく、選択の積み重ねだ。

まだ見ぬ敵のために、形を変える。


森の空気も変わる。


水場に向かう鹿の数が減り、狼の遠吠えが一段遠くなる。

ゴブリンの足跡は入口の手前で止まり、しばらく逡巡してから去る。

恐怖ではない。ただ、居心地が悪いのだろう。


私はさらに下へ進む。

土が冷たくなり、石が増え、湿りが変わる。

深いほど振動は澄む。遠くで、重い何かが歩く。

ゆっくりで、確実で、他とは違う質量の音。


地面がわずかに沈み込むたび、森の鼓動が揺れる。


その正体を知らないまま、私は掘る。


巣はまだ小さい。だが、掘るほどに、森は狭くなる。

もし少しでも

「続きが気になる!」

「面白かった!」

と思っていただけたら、

【★★★★★】や【ブックマーク】を押していただけるとめちゃくちゃ励みになります!

それではまた次回!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ