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灰森の巣竜  作者: AI太郎
世界侵食
136/149

虚空の王

 上位天使は、降り立った瞬間に戦場を“塗り替えた”。


 翼が一度震えただけで空気中の魔力が強制的に収束し、その圧縮された光が幾重もの魔法陣として展開されると同時に、空間そのものが焼けるような熱を帯びる。


「――神罰級広域殲滅術式、《天光断界》」


 発動は一瞬だった。


 無数の光柱が空間を貫き、その一つ一つが建造物を消し飛ばしながら地表へと叩き込まれると同時に、着弾した地点から球状の爆裂が連鎖し、魔導区の街並みが面として削り取られていく。


 だが、その中心にいる存在は動かない。


 天翼界主は翼を広げると同時に空間へと“指を差し込む”ように魔力を流し込み、その周囲の座標を強引に歪めることで、自身と街を包み込むような捻れた領域を形成する。


 光が突き刺さる。


 だが、届かない。


 直撃するはずの軌道はわずかに逸れ、別の方向へと滑り、そのまま反転した角度で地面へと叩き返される。


「……なるほど」


 天翼界主はわずかに目を細める。


 攻撃の密度は高い。


 威力も申し分ない。


 だが、それだけだ。


「いい火力だ」


 その言葉と同時に、彼の周囲の空間がさらに歪む。


 次の瞬間、反射された光柱が逆方向へと折れ曲がり、そのまま上位天使へと突き返されると同時に、爆裂の連鎖が今度は空中で発生し、巨大な光の奔流が天使の翼を焼き払う。


 しかし、止まらない。


 上位天使は即座に再構築を行い、翼を再生させると同時にさらに上空へと退避し、その位置から次の術式を展開する。


「……来るか」


 天翼界主の視界に、空が“重なる”。


 それは幻ではない。


 異なる座標が重ねられている。


 そして――


 光の奔流が溢れる。


 巨大な圧縮光が板状に展開され、そのまま都市全体を押し潰すように降下してくると同時に、接触したものすべてが切断され、圧壊し、存在そのものが削り取られていく。


「天使も存外やるではないか」


 その瞬間、天翼界主は笑った。


 翼を大きく広げる。


 そして、引き裂く。


 空間を。


 その動作と同時に魔導区全域の座標がねじ曲がり、落下してくる光の断層は途中で折れ曲がり、複数の層へと分断され、そのまま別方向へと流されていく。


 そして、その一部は――


 上位天使自身へと返る。


 衝突。


 爆裂。


 空間そのものが悲鳴を上げる。


 だが、それでもなお、上位天使は落ちない。


 ならば――


「少し、近づくか」


 天翼界主の姿が消える。


 転移。座標移動。


 次の瞬間には上位天使の至近に出現し、そのまま腕を振り抜くと同時に、周囲の空間ごと引き裂く。


 この斬撃は“位置”を断ち切る。


 上位天使の身体が一瞬で歪み、そのまま複数の方向へと引き裂かれかけるが、即座に再構築が走り、形を保つ。


「しぶといな」


 だが、その再生も完全ではない。


 ならば、


 天翼界主は、静かに構える。


 周囲の空間が、沈む。


 音が消える。


 魔力の流れが止まり、座標が固定され、戦場そのものが“閉じる”。


「――虚無領域・空裂」


 その発動と同時に、何も起きない。


 だが次の瞬間、世界が“ずれる”。


 上位天使の存在座標が崩壊し、身体が内側から裂けるように消失し、そのまま痕跡すら残さずに消滅する。


 同時に。


 その余波が、広がる。


 空間が湾曲する。


 そして――


 人間。


 魔導区に残っていたすべての人間の身体が、同時に“曲がる”。


 骨が軋む音もなく、肉が裂ける感触もなく、ただ存在が歪み、そのまま細かく分断され、血すら流れる前に消えていく。


 静寂。


 完全な。


 戦場には、もう何も残っていなかった。


「……もう終わった?」


 魔人界主の言葉と共に天翼界主はゆっくりと翼を閉じる。


 そして、わずかに笑った。


 これは戦闘ではない。


 久々の狩りだ。


 魔導区は、完全に“空になった”。

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