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灰森の巣竜  作者: AI太郎
世界侵食
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灰森の意志

土煙がまだ完全には晴れきらない戦場の奥で、樹海に侵食された大地が静かに脈動している中、その中心に立つ竜の周囲で空間が歪み、次の瞬間には魔人界主と翼天界主が姿を現すことで、三体の支配者が同じ場に揃う。


その光景は、もはや単なる戦場の延長ではなく、灰森そのものが意思を持って収束しているような異様な圧を帯びていた。


「……終わった、とは言えないね」


最初に口を開いたのは魔人界主だった。


周囲に残る魔力の流れをなぞるように視線を動かしながら、ゆっくりと続ける。


「人類の大半は消えた。だが、あの男に逃げられた。」


竜は答えない。


ただ、視線だけを落とす。


大地。


そこはすでに灰森へと変質している。


「領域が、増えた。」


低く呟く。


それは報告ではない。


事実の確認だった。


王級頂点種という環境にすら影響を与える魔物の力により無理矢理環境が書き換えられた上に、樹海継承・天穿棘によって貫かれた大地は、そのまま竜の魔力が定着し、新たな灰森として既に新たな生態系が成立し始めていた。


つまり。


「戦場そのものが、灰森に変わったというわけか!」


翼天界主が興味深そうに見下ろす。


その声は少年のように軽いが、含まれる圧は明らかに王級頂点種とは異なる。


「簡単ではないか!戦うだけで領域が増えるってことだろう?」


魔人界主がわずかに頷く。


「魔力の総量が臨界を超えた結果だね。戦闘、死、……すべての条件を満たした」


この世界の法則。


生命が魔力を生み、死がそれを解放し、そして世界に満ちる魔力の総量が増えれば世界そのものが拡張される。


それを、今まさに灰森が体現している。


ー……悪くないー


竜が静かに言う。


その声に、わずかな満足が混じる。


ーだが、足りぬー


ー今回の戦いで理解した。界主は強い。だが、それぞれでは限界があるー


その言葉に、魔人界主が視線を向ける。


「マーレミア王国のときもだけど一国の主を相手取るとなれば連携は必須だね。」


ーその通りだなー


短く肯定する。


ー空、地、ダンジョンの中はそれぞれの支配領域で分断されているー


翼天界主が肩をすくめる。


「だから何だというのだ?今回で連携の試しも出来た。いざとなればまた外で迎え撃てばいい」


だがその言葉に、竜は即座に返す。


ーそれでは勝てなかったー


一瞬。


空気が止まる。


その重さに、翼天界主の表情がわずかに変わる。


「……あの男、か」


「ああ」


バハムート八世。


単独で三体を抑え込んだ存在。


「領域の制約がある以上、我らは分断される」


魔人界主が続ける。


「だけど今回、可能性は見えた」


その言葉に、翼天界主が笑う。


「俺の入れ替え、だろ?」


空間が歪む。


しかし、魔力の揺らぎは一切ない。


それだけで、三者の位置関係が一瞬だけ曖昧になる。


「俺の空間支配で位置を変え、地蟲界主の構造操作で戦場を再構築し、それをお前が増幅する」


魔人界主が静かに頷く。


「界律改写を重ねれば、ダンジョン内部と同等の環境を外でも再現できる」


つまり。


ー今は二体まで。しかし今後の発展次第では、持ちうる戦力全てを同じ場で戦わせることもー


竜が結論を出す。


それは仮説ではない。


すでに実証されかけている戦術。


「ハッハー!つまり俺が強くなればいいってことだろう?」


翼天界主が笑う。


そして。


次の言葉は、明確な意思だった。


「主よ、やってやろうではないか!」


視線が竜へ向く。


「一つ頼みがある!俺たちは成長する。しかし、成長に足る好敵手などそういない!」

「なれば界主同士で戦い、己を高めるしかあるまい!」


その言葉に、魔人界主は沈黙する。


だが。


否定はしない。


竜もまた、拒まない。


ー……少なくともお互いの強さの確認は必要だー


それだけ答える。


満足そうに翼天界主が笑う。


「……それよりも」


魔人界主の声が、わずかに低くなる。


「優先すべきものがある」


竜の視線が上がる。


ーあの男。バハムート八世の魂だなー


翼天界主が口にする。


「……あいつ、普通じゃねえよな。妙にこの環境に慣れていた。」


魔人界主が続ける。


「解析した。あの魂は異常だ」


言葉を選ばずに言う。


「恐らくあらゆる状況に適合する」


一瞬の沈黙。


「……それは”誰にでも”ってことか?」


翼天界主が問う。


「その通り」


その場の空気が、重く沈む。


「……あの魂を取り込めば」


魔人界主が続ける。


「主のさらなる進化が可能だと思う」


さらに先。


この世界の上限を超えるための鍵。


ー……ならばー


竜が、静かに言う。


ー狩るー


それは宣言だった。


単なる戦闘ではない。


明確な目的を持った追跡。


「いいねえ」


翼天界主が笑う。


「今度は逃がすなよ?」


魔人界主が淡々と告げる。


「次は、万全の体制を準備するよ」


空間。


構造。


魔力。


すべてを整えた上で。


ー確実に、殺すー


その言葉を最後に。


三体の気配が同時に消える。


残されたのは。


灰森へと変わった、新たな領域だけだった。

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