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灰森の巣竜  作者: AI太郎
世界侵食
120/150

天を穿つ

空間が歪み、灰森の竜が出現した瞬間、翼天界主が即座にバハムート8世の空間を固定して逃走経路を断ち、同時に魔人界主が地脈を一点へ収束させることで戦場全域の魔力流を強制的に竜へ集中させる。


その瞬間、空気が変わる。


皇帝は動けない。


その姿を前にして。


竜は、迷わない。


地脈が鳴動する。

魔力網が膨張する。

界主の魔力が一斉に接続される。


世界が、一本の流れになる。


「――樹海継承」


その声と同時に、長城全域の地面がわずかに沈み、次の瞬間には見えない何かが“繋がった”ことで、地脈と森と魔力が完全に統合される。


竜の背の棘翼が展開し、その一枚一枚が樹木のように変質しながら大気中の魔力を吸い上げていく。


「その程度っっ」


皇帝が吠える。



その瞬間。


「――天穿棘」


大地が、裂ける。


長城の内外を問わず、地面という地面から無数の巨大な棘樹が同時に突き上がり、その一本一本が城壁を貫き、兵士を貫き、地形そのものを持ち上げながら空へと伸び上がる。


城が砕ける。

部隊が消える。

陣形が崩壊する。


それは攻撃ではない。


戦場そのものが“変質”している。


――樹海継承・天穿棘。


時間にして三秒以内、だが世界が終わる。


「……はは」


皇帝の身体が、貫かれる。


棘が胸を突き破り、地面から突き上がった樹晶が背後へ突き抜け、そのまま数十本の棘が連続して身体を拘束する。


受けれなかった。


爆発するように棘がさらに増殖し、周囲数百メートルを完全に埋め尽くすことで視界そのものが樹海へと塗り替えられる。


そして。


長城が、灰森に包まれる。


「な……んだ。」

「た、たすけ……て……」


兵士達の声は途中で途切れ、逃走も防御も意味を持たず、ただ地面から突き上がる棘に貫かれて消えていく。


だが。


生き残る者もいる。


「伏せろ!!」


アルヴァレクが叫び、同時にリディアが氷結領域を瞬時に展開することで足場を強制的に凍結させ、その上に乗った兵を滑らせることで直撃を回避させる。


「上だ!」


ガレスが壁面を蹴り上がり、突き上がる棘の“間”を利用して上空へ逃げ、ドゥーガが盾を地面に叩きつけることで衝撃を分散させながら直撃を逸らす。


「くっ……!」

「まだだ……まだ戦える……!」


重装の陣形を瞬時に縮め、盾を重ねることで一点に圧縮された防御を形成し、その中心で爆発する棘の圧力を“受け流す”ことで壊滅を回避する。


「陣形維持!!崩すな!!」


別の地点。


巨大な結界が展開される。


だが一瞬で砕ける。


しかしその直前。


術者達はすでに“外側”へ転移している。


「……全員、退避完了」


そして。


バハムート8世。


「――まだまだっっっ!」


血だらけで踏み込む。


天を穿つ棘を。


斬る。


空間ごと切断することで棘の“発生点”を断ち切り、その一瞬の空白を利用して脱出する。



名のある者達は、この程度では死なない。


だが。


それ以外は。


消えた。


長城。


兵。


補給線。


すべて。


一撃で。


「……なんとかなるもんだな。」


天翼界主が呟く。


だが。

「まだだ、まだ油断するな」


終わっていない。


始まった。


砕けた長城の跡地。


死体が転がる戦場。


そのすべてに。


菌糸が走る。


魔力が流れる。


「……なんだ……これは」


地面が脈動する。


樹が生える。


棘が残る。


そして。


その場に存在するすべてが。


灰森へと変わる。


「馬鹿な……ここは……」


人類領域。


だった場所。


それが。


一瞬で。


ダンジョンへ変質する。


これが。


灰森の竜の力。


魔力の固定。


土地の強度上昇。


世界の法則。


その影響を。


最も強く受ける存在がいる。


ー……力があふれるー


断牙の王が、笑う。


筋肉が膨張する。


魔力が満ちる。


――これはいいー


翠角の賢王の角が輝き、地脈との接続が完全に回復することで魔力制御が跳ね上がる。


毒海の八首が沼を拡張し、蒼湖の王が水域を広げる。


そして。


すべての王級頂点種が。


“本来の領域”を取り戻す。


戦場が本来の彼らの調子を取り戻させる。


「……なるほど」


その中心で。


皇帝が、笑う。


棘に貫かれたまま。


血を流しながら。


立っている。


「実に……」


剣を持ち上げる。


「実に厄介と言わざるを得ない。」


形勢は、逆転した。

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