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灰森の巣竜  作者: AI太郎
世界侵食
118/150

天堕

もはや核は、隠れていなかった。


分散していた魔力の流れ、その歪み、その中心、その“重さ”を辿ることで、皇帝バハムート八世は一切の迷いなく核を守る水膜へ到達し、そのまま剣を振り抜く、水の構造が根元から断たれ、核が露出し、蒼湖の王の制御が崩壊する。


湖は、もはや戦場ですらなかった。


ただの水が崩れ落ちる。


再構築の兆しはない。

すでに勝敗は決していた。


「終わりだ」


皇帝が踏み込む。


そのまま核へ至るため、完全な消滅へ向けて剣を振り下ろそうとした、その瞬間。


空に、落ちた。


音はない。

衝撃ない。


“世界が反転”した。


皇帝の身体が、地面から切り離される。


単純な重力操作ではない。

ましてや引力操作でもない。


空間そのものが“上”へ反転したことで、彼は地上から切り離され、空へと“落ちていく”。


その先に、いた。


「――来たか」


蒼い空を裂くように立つ影。


人型。


だが人ではない。


背から展開された翼は刃のように細く鋭く、紫晶を帯びたその構造は羽ではなく“武器”であり、その周囲の空間そのものが歪み、気流が意思を持つかのように渦巻いている。


翼天界主。


”空”そのものを支配する存在。


その視線が、皇帝を捉える。


次の瞬間。


空間が、止まった。


簡単に動ける。

しかし不自然すぎる現象。


そして世界は“切断可能な状態”へと変質した。


見えない刃が空間を走る。


皇帝の身体を断ち切るためではない。


逃げ場を奪うため。


だが。


皇帝は、笑っていた。


「ただの王級頂点種ではないな。もっと異質な何か・・・」


踏み込む。


足場はない。

重力も意味を持たない。


だが彼は空間そのものを蹴るように加速し、停止した領域へ真正面から突入すると同時に剣を振り抜き、その一閃だけで空間の固定を破壊し、不可視の刃ごと領域を粉砕する。


その衝突で、空が裂ける。


だが。


それは始まりに過ぎなかった。


直後。


地が、鳴る。


「……なんだ……?」

「……地面が……」


長城の兵士達が、震えに気づく。


次の瞬間。


空が、燃えた。



“質量を持った光”が、空を埋める。


無数の光点。


いや。


隕石。


「馬鹿な……」

「――星砕天堕……ッ!」


誰かが叫ぶ。


それは土属性最上位魔法。


星砕天堕。


天より星を引きずり落とし、戦場そのものを破壊する殲滅術式。


空が、落ちる。


一つではない。

十は軽く超えるだろうか。


数えきれない質量が大気を焼きながら降下し、落下の軌跡だけで空気が圧縮され、衝撃波が地表を削り取りながら長城の壁面を叩き、兵士達が吹き飛ばされる。


「退避しろォォ!!」

「防壁展開!!間に合わねえ!!」


戦場は、一瞬で崩壊する。


王級頂点種の戦いではない。


これは。


界主の戦争。


その只中に、人類は立っている。


そして。


空の中。


皇帝は落ちていた。


その頭上。


最大の質量。


他の隕石とは比較にならない、空そのものを引き裂くほどの巨大な塊が、一直線に彼へ向かって降下してくる。


それは回避不可能。


受ければ、終わる。


だが。


皇帝は、剣を構える。


「――この術を使える者がまだいたとは」


踏み込む。


落下しているにも関わらず、彼の速度はそれを上回り、隕石へ向かって“下降”すると同時に剣を振り抜くことで、衝突した瞬間、巨大な質量が中央から完全に断ち切られ、内部の熱と圧力が一気に解放されて爆発し、その余波だけで周囲の隕石群が弾き飛ばされながら軌道を崩す。


その中心で。


皇帝は、立っていた。


空中に。


崩壊した隕石の残骸の上に。


そしてその前に。


二つの影。


翼天界主。


魔人界主。


空域。

地脈。


二つの支配領域を持つ存在が、同時に皇帝へ視線を向ける。


「――ようやくか」


皇帝が笑う。


「遅いぞ。化け物ども」


次の瞬間。


空が歪む。

地が鳴る。


二柱の界主が同時に動き出す。


そして。


皇帝が踏み込む。


その衝突で。


世界が、軋んだ。

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