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灰森の巣竜  作者: AI太郎
世界侵食
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長城決戦開幕

帝国最前線――長城防衛線。


重厚な石壁の上に、無数の魔導陣が展開され、砲座には魔導砲が整列し、重装騎兵が門前に陣を敷き、さらにその後方には魔導部隊が層を成すように配置されていた。


人類最大規模の防衛陣。

だが、その空気は静かだった。


嵐の前の、沈黙。


「……来る」


蒼天探索団団長アルヴァレク・ディルガンが低く呟くと同時に、上空の雲が不自然に裂け、その瞬間、空気が圧縮されたように重く沈み込んだ。


次の瞬間、影が落ちる。


いや、


落ちてきた。


音より先に。



「全軍、防空――」


指示が最後まで届く前に、灰森の翼王が急降下し、空気を押し潰す衝撃と共に地表へ叩きつけられた風圧が刃となって広がり、長城の上にいる兵士達がまとめて吹き飛ばされながら石壁が削り取られる。


そのまま翼を広げた瞬間、衝撃波が横方向へ爆発し、防衛陣の最前列が崩壊する。


「来たぞッ!!」


副団長リディア・エルフェインが即座に魔法陣を展開し、空間中の水分を一瞬で凍結させると、上空に氷結領域が形成され、翼王の飛行軌道が強制的に歪められる。


その瞬間を逃さず、


「叩き落とす!」


アルヴァレクが踏み込み、重力を纏った斬撃を振り抜くと、空間そのものを裂く一撃が翼王へ到達し、衝突した瞬間、空中で爆発的な衝撃が発生して雲が吹き飛ぶ。


だが止まらない。


翼王はそのまま軌道を捻じ曲げ、空間を踏み越えるように再加速し、次の瞬間には別方向から急降下を開始する。


「……速すぎる」


魔導士長エリネア・カシュレインが息を呑む。


すでに理解していたはずだった。


しかし実際にみて心の底から理解する。王級頂点種とは単独で戦線を崩壊させる存在だと。



大地が震える。


次の瞬間、長城前面の大地が爆発するように砕け、その中心を突き破るように灰色の影が一直線に駆け抜け、防衛線である城壁の上へ突入する。


断牙の王。


踏み込みと同時に地面が陥没し、そのまま突撃が重装騎兵の盾列へ直撃した瞬間、衝突の余波だけで前列が粉砕され、騎士達が鎧ごと吹き飛ばされる。


「止めろォ!!」


黒鋼騎士団団長

ガルド・バルザックが大盾を構えて前へ出ると同時に、後方から魔導砲が一斉に放たれ、直撃した爆炎が断牙の王を包み込む。


しかし次の瞬間、


爆炎が裂けた。


中から飛び出した断牙の王がそのまま加速し、ガルドの盾へ衝突すると同時に爪が振り抜かれ、その衝撃だけで地面が割れ、周囲の騎士達がまとめて吹き飛ばされる。


だが止まった。


ガルドは踏みとどまる。


「……来い、化け物」


その背後に立つ騎士達が再び隊列を組み直す。


人類最硬の盾。今はまだ保っているが押されている。



戦場の後方。


地形が、変わる。


木々が隆起し、地面が持ち上がり、根が絡み合いながら見渡す限りの荒野一帯が瞬く間に“紫晶の森”へと書き換えられていく。


翠角の賢王。


「来るぞ……!」


観測兵が叫んだ瞬間、地面から無数の樹根が突き上がり、兵士達の足を拘束し、そのまま引き裂くように圧殺する。


さらに角が輝く。


その瞬間、


森が“増えた”。


戦場の中に、森が侵食している。


「これは……戦場支配型……!」

「元凶を止めろ!」


エリネアが叫ぶ。


その直後、


重い足音が響いた。


振り返る。


そこにいた。


紫晶黒鉱兵。


巨大な鎧の王がゆっくりと歩み出し、その一歩ごとに地面が沈み、装甲の表面に浮かぶ紫晶が周囲の魔力を吸い上げていく。


次の瞬間、巨大な戦斧を持った腕が振り抜かれる。


それだけで城壁の一部が崩壊し、砕けた石材と共に兵士達が巻き込まれて吹き飛ばされる。


さらに装甲が分離し、小型の紫晶兵が戦場へ展開され、前線が“数で”侵食されていく。


「……前線が、持たない!」




城壁の北側では遅れて、風向きが変わった。


甘い香り。

だが、僅かに香る腐食の匂い。


次の瞬間、霧が流れ込む。


「これは!毒だ!!防護を――」


叫びは途中で止まる。


霧に触れた兵士の鎧が音を立てて溶け、その下の肉体が黒く崩れ落ちる。


毒海の八首。


八つの頭が同時に持ち上がり、次の瞬間、毒霧がさらに濃く広がりながら地面が液状化し、戦場そのものが生物を死へと誘う“毒の沼”へと変わる。


「……最悪だな」


レグナートが吐き捨てる。




彼の王はまだ来ていない。


「……蒼湖の王は?」


誰かが呟く。


その答えは、誰も持っていなかった。


だが


来る。


確実に。


そしてそれは


最も遅く、


最も厄介な形で。



すでに戦いは始まった。

だがここからが本番だった。


人類最強戦力

蒼天探索団。


帝国最強防衛戦力

黒鋼騎士団。


そして各国混成の魔導部隊と冒険者達。


対するは


灰森の王級頂点種。


灰森の竜巣はすでに通常到達しうる最高位の生態系ダンジョンへ到達している。


その戦場を“見ている”存在がいた。


灰森深層では竜が静かに戦場を観測している。


その隣で魔人――コアが、目を細めた。


「……このままじゃ足りないね」


戦場は均衡している。


だが決定打がない。


竜がわずかに翼を動かす。


それだけで空間が軋む。


「前線に出す」


コアが頷く。


次の段階。


界主。


それは層を支配する存在。

本来は外へ出ることができない。


だが


もしそのカードを切ることができれば。


戦場は崩壊する。


「準備を開始するね」


静かな宣告。


その瞬間、


戦争は


次の段階へ進み始めていた。

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