生
交易路に巣を張ったそれを、人は竜と呼んだ。ならば竜でいい。私は、ただ巣を作る。
私は生まれたときそんな名で呼ばれるものではなかった。湿った土の中で体を押し潰されるように丸め、重みと匂いだけに囲まれていた。背に乗った土を押しのけて初めて空気が入り込んできたとき、冷たさよりも先に、動かなければならないという衝動が走った。近くで何かが動き、爪が触れ、次の瞬間には噛みつかれていた。痛みで体が反応し、考えるより早く噛み返す。誰が兄弟で誰が敵かを確かめる余裕などない。ただ、退けば押しのけられ、喰われる。それだけは理解していた。
やがて腹の奥が空洞のように軋み始める。これが飢えだと知るのに時間はかからなかった。地上へ出ると夜で、森は暗く、匂いと音が多すぎた。草を踏むかすかな振動、羽ばたき、遠くで何かが吠える声。足が止まりそうになるたびに、止まれば終わると体が先に動いた。小さな獣を追い、何度も空を切り、爪を滑らせ、転び、それでも立ち上がる。空腹は思考を削るが、同時に動きを速くした。やがて群れから遅れた鹿を見つけ、角に頬を裂かれながらも喉へ噛みついたとき、初めて命が抜ける瞬間に立ち会った。そのとき、血よりも先に別のものが流れ込んできた。熱を帯びた奔流が体の奥へ沈み、背骨の付け根が焼けるように疼く。何が起きているのか理解はできない。ただ、立てる。動ける。さっきまでよりも、わずかに満ちている。他の同種も獲物を食っていたが、私の内側に残る熱は長く、濃かった。理由は知らない。考える必要もなかった。ただ、生き延びたという事実だけが残る。
それが始まりだった。




