Round40 パチ店の誓い、冥界の侵食、現代の終わり
寄せては帰る。
いいや、揺れては当たる。4回揺れれば儲けもの、揺れるだけでも儲けもン。あぁ、揺れたまえ乳よ尻よ。母なる乳よ尻よ。褒めよ讃えよ。
「なんですかその一節は」
「ぷるん讃頌」
漢たるもの欲望に逆らってはならない。揺れて楽しい、震えて楽しい……ならば揺らさねば無作法というもの。崇め讃えて、玉を獲れ。あ、当たったからキャラ変えて乳モードにしなきゃ。
〇乱数調整助かる
〇尻見せろ尻
〇待て、今尻で当たってたんだから胸だろ
〇は? 尻優先だろ
〇ママ――――ッ!
「これが戦友の……Sランクパチンカスの力…………ッ⁉」
「こ、こんなしょうもない技に我が負けるというのか……乳と尻を揺らすだけの男に‼」
揺らすだけとは失敬な。むしろ今は揺らすことだけに全神経を研ぎ澄ませていると言っても過言ではない。台の様子と調子を考慮しタイミング打法を駆使しながら1/84を引き続ける技だぞ。
魔王に必要なのは洗脳を解く言葉ではない。
「どちらしか選ばないなんて、窮屈だろ? 俺達打ち手は、もっと自由にいるべきなんだ。Aランクとか、Sランクとか、んなこたぁどうでもいい! お前に必要なのは――――」
「や、やめろ…………我は…………」
「続けよ戦友!」
「応とも!」
ぷるん、ぷるん、ぷるん――――
重ねられるは胸と尻の振動、三度繰り返された後、4回目にはブルブル揺れる。それはまさに、魔王を動揺させる最強の一手。
「うぉぉぉぁがぁぁぁぁぁあ――――――⁉」
バトルものなら熱い展開なのかもしれないが…………店内で絶叫しながら白目剥いてるのはヤバい奴以外何者でもない。それが異世界の魔王でも例外ではない。
〇効いてる!
〇何にだよ⁉
〇ひんぬーに巨乳巨尻は大ダメージだ!
〇なんか黒いオーラ出てますけど……?
俺と死霊使いの大当たりに共鳴したのか、魔王の台もブルブル震える。大当たりは全てを浄化する虹色の光、パチの本能を心の底から呼び起された魔王からは、黒いオーラが抜けていく。
隣にいるのは冥王の娘ではない。
純然たる、美少…………ではなく、Sランクパチンカスの同士。
「魔王様の様子が…………!」
「目が……覚めたぞぃ」
「やっとお戻りか」
「そう、乳と尻は揺らしてなんぼじゃ…………そうじゃな兄弟子、そして戦友ぅ!」
魔王の帰還である。
…………つっても大した時間じゃなかった気もするけど。細かいことを気にしてはいけない。
「我ら天に誓う!」
「生まれた時は違えども!」
「打つ時は同じ日同じ時を願わんと!」
〇※カッコいいこと言ってる風ですがパチンコです
〇そもそもイケメンと魔王は初対面だろ
〇ママ――――ッ!
〇ママ――――ッ!
〇ママ――――ッ!
「桃園の誓いならぬパチ店の誓い…………決まったぜ」
アホなことをしているのは分かっているが、その場のノリとは、時に最優先されるものなのだ。つうかコメント欄がおかしくないか?
◇ ◇ ◇
「ふぃ~今回も2万発を越えてしまった…………敗北を知りたい」
「魔王様も元に戻ったようで安心したよ」
「それはそれで見合いをするのが怠いんじゃがな」
確変も終わり今後のことを考えつつ、スマホで配信欄を覗く。
〇ママ――――ッ!
〇ママ――――ッ!
〇ママ――――ッ!
〇ママ――――ッ!
〇ママ――――ッ!
〇ママ――――ッ!
「チャンネルが冥王に占拠されてるぞ」
「我が母ながら申し訳ないのぅ」
「3人ともまだ気づいていないのですか」
カメラ担当の魔女は、既に俺達など画角に収めておらず、冥王だけに集中していた。そしてそれが、配信コメントを『ママ』で埋め尽くす理由。
――――――50000発。
液晶画面に刻まれる虹色の文字が、圧倒的な差を教えた。
「あらあら~止まらないわぁ、困っちゃう」
「おかしいだろ⁉ 俺達も同じペースだったんだぞ」
「大当たり回転数が異常なのです…………すべて1桁の回転数ですよ」
「出玉的にもわたしの勝ちよねぇ?」
〇ママ大勝利!
〇Sランクパチンカスなんて敵じゃないよ!
〇今日から冥ママの実践チャンネルだ!!
〇ママ――――ッ!
「じゃあ歯向かったネッ君とマオちゃんの魂は回収~」
「え? ぬぉぉ⁉」
「さらばだ戦友――――」
パチン、と指が鳴った途端、戦友と魔王が人魂と化し冥王の深い胸元に吸い込まれてしまった。ちょっと羨ましいと思ったのはきっと打っていたパチンコの影響である。
「そうだ! この世界も欲しいし、このチャンネルももらっちゃおうかしら? みんなの声もママを求めてるし!」
「め、めちゃくちゃだこの人妻…………」
「これは予想外」
予想内であってたまるか!




