缶詰
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皆に相談してから三日経って。まずはポトフとパンで試して見ることにした。この二つが成功すれば、食事情が大幅に改善されるわよね。
「どう、リウ。うまくいきそう?」
「そうね。今焼きたてのパンを缶詰に詰めてみたの。フタは錬金術でしてあるから密封状態になってるわよ。プルトップも付けてあるから缶切もいらないし。ゴミはうちで回収できれば、錬金術でまたリサイクルできるから、けっこう良いと思うのよね。それに、プルトップを開ける時、火魔法陣を施しておけば、フタを開けたときに中身を温かくなるようにもしたいの」
「へえ。いいねそれ。出来上がったら僕も試食してみたいな」
「うん。皆で食べてみよう」
そうして人数分のパンとポトフの缶詰を作り、試食してみることに。
「じゃあ、開けて見るわね。……うん。魔法陣は作動ね。中身は……ふわふわ。柔らかくってもっちりしてる。出来立てパンを缶詰に入れたんだけど、そのままの状態で維持されてるから、いつでも出来立てを味わえわねこれ」
「なら僕はポトフのほうを……。おー、フタを開けた瞬間に温かくなるんだね。だけど熱すぎて缶を持てないってこともないし、味も美味いよ」
「まあ、俺が作ったポトフだからな。美味いのは当たり前だ」
「これはすごいな。……そうだな。この逆のものも作れるか? 我は冷菓子を食べたいぞ」
「なるほど。これ、水魔法の陣にすれば、アイスなんかも入れられるかもしれないのね。それもあとで作ってみるわ」
出来立てのパンとポトフは好評だった。
ルブルのアイデアで、今度はアイスクリームを作ってみることに。バニラとストロベリーとチョコレートの三種類を作って、液状を缶詰に入れて、水の魔法陣をプルトップに施しておく。
そうしてまた皆で食べてみると。
「あー、いいねこれ! 暑い時期に食べたいよこれ」
「美味いな。これはダンジョンや旅路以外でも、売れると思うぞ」
「開けた瞬間に冷凍状態になるようにしたんだけど、いいわねこれ。缶詰以外にも他にもいろいろ使えそうよ」
「うむ。実に美味であった。我はバニラのアイスクリームが好みだ。毎日食べてもかまわないほどだ」
「そんなにルブルに気に入ってもらえるなんて、作った甲斐があったよ」
アイスクリームも好評。これは画期的だわね。すごい勢いで売れそうね。
缶詰商品はわざわざ宣伝しなくても、口コミで勝手に広がりそうね。今の内から生産しておかないと追いつかないかもしれないわ。
ということで、私たちは手分けして一日中缶詰を作ることに。
で。後で気づいたんだけど、これ、魔法でマクロでできるようにしておけば、一日中やらなくても、勝手に生産されるのよね。次からはそうしよう。
「とりあえず、各種一万個あれば当分大丈夫よね。次からはマクロでやれるし」
ちなみに、なにを作ったかというと。
パンはプレーン、チョコレート。ポトフ。クリームシチュー、ビーフシュチュー。おでん。アイスクリームはバニラ、ストロベリー、チョコレート。
あんまりたくさん種類を増やしてもあれだから、ひとまずはこのくらいでいいわよね。
魔法陣だけど、これは私たちじゃないと作れないような複雑なものにしておいた。解析されて何かに応用して使われるのは困るしね。たとえば兵器とか、ね。
「これ、うちの店だけで販売するのもいいと思うけど、ダンジョンの中に出張して売るってのもいいかもしれないわね」
「そうだな。セーフティエリアで販売できるように、ギルドへ話をつけに行くか?」
「売り始めれば、口コミで広がるだろうから、こっちから行かなくても、多分ギルドから店に連絡がくるんじゃないかしら」
「それもそうだな」
「だけどリウ。よくこんなの考えついたね。やっぱり君を選んだのは正解だったよ。僕じゃこういったことは考えつかない」
「ふふふ。もっと褒めてもいいのよ」
「我もそう思う。リウが番でよかったと」
な、なんだか照れるわ。でも、どこかで問題点がでてくるだろうし、それに対処できるように浮かれてばかりいられないわよね。
明日、お店で売ってみようかな。
「まずは試食をしてもらうのがいいかもしれないな。温かい料理や、冷菓子が食べられるといっても、最初は半信半疑だろうしな」
「そうね。じゃあ、店頭で試食できるように準備もしないとね。道行く人に食べてもらえれば、きっと食いついてくると思うし」
それにしても楽しいなあ。こういうの皆で考えて作ったり売ったりするのって。
翌日。
「そこのお姉さん。僕らの店でしか販売していない缶詰の試食、してみない?」
「我の作った料理を食べるといい」
「このポトフはおすすめだ。試に食べてみてくれないか」
三人に店頭で売り子をしてもらえば、女性は足を止めてくれるから、呼び込みが楽でいいわね。
「こんにちは。リウさん」
「あら、ミーナさん、こんにちは。いらっしゃい」
「表でやってたのを試食してきたんですけど、あれ、おいくらですか!? すごく美味しくて。あれがダンジョン内で食べられるなんて、すごいですよ」
「缶詰は一律、一,〇〇〇ゴールドよ」
「わ、けっこうするんですね。でもそれだけの価値はありますよね。私、パンとポトフにストロベリーのアイスクリームを三つずつ欲しいです」
ミーナさんが興奮気味に私に詰め寄ってきた。そうでしょう。缶詰はそれだけの価値はあるのよね。わかってもらえて嬉しいわ。
購入したミーナさんは、皆に食べさせなきゃって、ほくほくした様子で帰って行った。これは今日か明日中にでもガイルさんが来そうね。
「皆お疲れ様。はいこれ、エール」
「さんきゅ」
「おお、頂くとしよう」
「いいね。仕事の後の一杯は格別だからね」
「アラリスったらおじさんみたいよ」
今日の分として出した、各種五〇個の缶詰は無事に完売。来週になったらもう少しお客さんくるかもしれないから、誰か一人は店内にいてもらったほうが、いいかもしれないわね。
そういえば、ガイルさんはあの後すぐに店に来て、五個ずつ全種類買っていった。目が爛々としててちょっと怖かったなあ。
それにしてもほんと。仕事の後の一杯は美味しい。くぅ~ってなるあの感じ。最高よね。
この世界に来る前は十七歳だったけど、今は一一七歳だし、お酒飲んじゃうよ。というか、ナンダルに行った時もすでに飲んでたしさ。
お酒は二〇歳になってから。だけど、神様代行だったし……、いいってことにしちゃおう。それにこの世界では十六才で成人だしね。
「今日は忙しかったわね。まさか缶詰が完売するなんて思わなかったかな。皆が店頭で頑張ってくれたおかげね。ありがとう」
「お客さんに試食してもらうの、けっこう楽しかったよ」
「まあな。だが、来週は俺は店内にいるぞ」
「ならば我は店頭に出よう」
そういえば最近、週一の開店じゃなくて、もう少し日数多くしてほしいって、よく言われるのよね。他にすることもあったしで、週一のままにしてたけど、皆もう店に慣れたし、週三くらいにしようかな。月火水で。とびとびも考えたけど、連休ないと困るし、当分はこれでいこうかな。




