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武具製作とオーダー 上

 今週は武具作りね。

 長剣、短剣、小盾、胴鎧、腕具、足具、頭具、弓と矢を製作するんだけど、鉱石ごとに作るから、銅、鉄、鋼、銀の四種類で、結構な量を作ることになる。

 まあ、材料さえあれば作業工程を設定しておけば勝手に作れるから楽っちゃ楽だけど。

 まずは長剣がそれぞれ五つ、短剣も五つ。で、弓までは三つ。矢を三〇〇。

 鉱石をセットして魔法で行程を設定したら起動。

 うん。良い具合に流れ作業もできてるわね。自分で打つ必要ないから、その間暇になるし、自分の武器でも作っておこう。こっちは自分で打とうかな。

 なににしよう。

 一通り神様補正で扱えるけど、個人的に好きな武器は蛇腹剣かな。これは五センチメートルの刃を連結させて、鞭にしたり、繋げて剣にしたりできるの。

 近場の敵には剣状で、遠くの敵には鞭状で攻撃できるし、剣から鞭に形状を変えながら突き出せば、槍としても扱える。わたしはこういう一石二鳥的なものは大好きなのよね。

 まあ、構造が複雑な分、作るのもメンテナンスするのも大変なんだけど。とはいっても、錬金術でちょちょっとすればいいだけなんだけどね。


「こんなものかな」


 私は出来上がった蛇腹剣を庭に出て使い心地を確かめることに。

 結界の外の木を風魔法で切って、浮遊魔法で開けた場所に運ぶ。そして一つ深呼吸をした私は、即席の案山子を鞭状にして切り刻んだ。

 おおお、これはすごい。これ、空中で切りまくればウッドチップができるわね。ガーデニングで使えるじゃない。もうちょっと作っておこう。

 もう一本木を切り倒して、今度は剣状のまま斬りつける。うん。一〇センチメートルはいったかな。あと三回くらい斬りつければいけそう。

 最後に槍みたく突き出せば、木は貫通していった。その後はぶんぶん振り回したり、剣舞をしたりして使い心地を確かめる。好感触ね。良いものが作れてよかったわ。


「そろそろ出来たかな」


 作業場へ行くと、各種武具が必要個数分ずつ並んでた。おお、いいねいいね。さっそく店に陳列してこないとね。

 異空間にほいぽい武具を突っ込んで、転移陣の上に立つ。これで楽に店にいける。

 ぶわんと魔法的な音がして、瞬きをしたらもう店だった。うーん、この不思議な感じがたまらないわあ。


「さてと陳列陳列っと。……こんな感じかな。在庫は倉庫に置いてきて、と。うん。商品が増えて、より店らしくなったわね」


 武具、薬類、旅路で必要な雑品。それぞれの棚に綺麗に陳列をしたら、ほら。なんでも屋の完成。雑貨屋さんは日用品しか売ってないから、うちとは差別化されてて問題なしと。

 なんでも屋というより、よろず屋かなあ。なんとなくだけど。

 午前の中頃に開店して、三人交代制で売り場に立つ、と。今日はなにが売れるかな。武具が売れればいいんだけど。

 ポラリスは初心者から中級冒険者が多い街だから、銅からの武具はけっこう売れそうよね。


「いらっしゃいませ」


 開店と同時に来たお客さんは、女の子だった。前週に友達がここで香水を買って、それがよかったとのことで、自分も欲しくて来てくれたそうな。

 いいね! ありがたいな。いい物を置いておけば、買ったお客さんが、別の人にこれいいよって宣伝してくれるのよね。

 ちなみに香水は中身がなくなったら、詰め替え用があるから、容器代が浮くのよ。だから、リピーターにも好評になると思う。私だったらまた買いに行こうと思うし。詰め替え用のほうが、容器代かからないからお得だしさ。


「こんにちは。体力回復薬と剥ぎ取り用の短剣ください」

「はい。こちらですね。550ゴールドになります。ありがとうございました」


 お昼までにぽつぽつとお客さんがきて、今はお昼休憩。ルーの作ってくれた、燻製ハム&野菜のサンドイッチはタルタルソースで食べるとすごく美味しい。このタルタルソースはルーお手製なのよ。


「すみません、これください」

「火の魔法石と水の魔法石ですね。200ゴールドになります。ありがとうございました」


 お昼休憩でルーと売り子をバトンタッチする。この後は暇なのよね。なにかすることはないかな。今日はアラリスは情勢調べに行っていていないから、話し相手もいないし。

 作業場で在庫の補充のためにいろいろ作るのもいいんだけど、それは明日でも大丈夫そうだし、かといってダンジョンには時間的に微妙な感じだし。なんだか時間が勿体無いなと思っていたら。


「リウ。お客だ。オーダーしたいそうだ」

「わかった」


 なんのオーダーかな。


「お待たせ致しました。どの商品でしょうか」

「わたくしはリゾット子爵家の執事をしております、カルナーと申します。本日はお嬢様きっての願いで、職人を邸にお呼びするために参りました」


 なんと、相手はお貴族様のお嬢様でしたか。


「わかりました。では準備が御座いますので、少々お待ちいただけますか」

「ありがとうございます。来ていただけるのですね」


 私はサンプル品として作っていた商品を、異空間バッグにしまいこんで、カルナーさんが乗ってきた馬車へと乗り込む。

 相手はお貴族様だから、粗相しないように気をつけなくちゃね。

 馬車に乗って移動するのに約三〇分。それなりの大きさの邸に着いて、私はカルナーさんに案内されて応接間に行く。

 そこで紅茶を出されたから飲んで待っていると、こんこんと扉を叩く音がした。きたみたいね。

 可愛らしいお嬢様が入ってきた。


「お前が職人? 直答を許すわ」

「お初にお目にかかります。私は(あ、店の名前考えてなかった!)リウと申します。本日はお声を掛けて頂きまして真にありがとう存じます」

「女の職人なんて珍しいわね。武具もお前が作っているんでしょう」

「はい。店の商品は全て私が作っております」


 席を立って挨拶をすると、依頼人のお嬢様が扇子で優雅に扇ぎらなら、私に聞いてきた。

 私の答えに頷いたお嬢様は、カルナーさんが銀のトレイに香水の瓶を載せたものを持ってくる。あ、それうちの商品ね。木苺の香りだわ。


「木苺の香水ですね。本日はオーダーをされると伺いました」

「この香りも良いのだけれど、わたくしに合う、わたくしだけの香水を作ってほしいのよ。近々舞踏会がありますの。そこでわたくしオリジナルの香りを身に纏いたいの。作れるわよね」


 おおう。さすがはお貴族様のお嬢様。私みたいな平民(神様だけど)には上から目線で問答無用は基本ですよね。


「はい。お嬢様はどのような香りをご所望ですか」

「そうね、薔薇。薔薇の香りが良いわ。それもプリンセスローズのよ。来週までに用意しなさい」

「かしこまりました。では、プリンセスローズで何品かの香水をお持ち致します」


 それで今日の話は終わったのか、お嬢様は応接間を出て行った。そして、残ったカルナーさんが、私をまた馬車で店の前まで送ってくれた。来週、同じ時間にまた迎えに来てくれるそうだ。

 やることもできたし、さっそくとりかかろう。

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