お店 下
「おかえりなさい」
「「ただいま」」
二人が帰ってきたのは翌日だった。一緒に出かけてたみたい。
アラリスがお土産と言って私に雪牛の肉を渡してきた。あなたたち、ずいぶん遠くまで行ってたのね。まあ、どうせ移動手段は空飛ぶか、転移かどっちかなんだろうけど。
雪牛の肉は三人でシチューにしたのを美味しくいただきました。長時間煮込んだ肉は蕩けるようで本当美味しいわね。余った分は冷凍して倉庫へいれた。
「あ、僕たち三人でお揃いなんだね。念話の魔法もかけてあるなんていいね。それにプラチナの短剣なんて、よくインゴット手に入ったね。ありがとう嬉しいよ」
「この剣はよく手に馴染む。リウ、ありがとう。大事にする」
「どういたしまして」
「あとこれ。エリクサー。大事に使ってね」
「わかった」
「あ、作ってくれたんだね。ありがとう」
作った指輪と剣を受け取った二人が嬉しそうにしてくれて、私も作った甲斐があるわね。自分の分の指輪も中指に装備したし。これさえあれば、どこに誰が行ってても連絡すぐにとれるし。
エリクサーは二個ずつ渡した。これ一つでどんだけの価値があるのかって? そうねえ。国庫の半分くらいあるんじゃないかしら。たぶんだけど。
「俺たちからも土産があるんだ」
「え、なになに。……って、わ。これって雪鹿の若角じゃない。薬の材料ね。ありがとう、ルー」
雪鹿の角は、乾燥させて粉末状にしたものを、私特製のペースト状の基本のベースに混ぜて、五ミリ台の大きさに丸めたものにするのよ。丸薬ね。
効果だけど、滋養強壮、風邪、鎮痛、貧血、不眠に効くの。さて、さっそく作りましょうか。
魔法を使って乾燥させるのを速めたから、一時間くらいで完成。お店をやる時にまでとっておこうかな。
「店なんだけど、雑貨屋さんに卸してるものは、そのまま向こうに置いてもらうことになったのだけど、他のはうちの店限定で出すから。二人とも薬や武具の価格、覚えておいてね。週一で卸に行く日にお店開くようにするから。これ、リストアップしたメモね」
「ああ。覚えておくさ」
「わかったよ。へえ、香水も作ったんだね。しかも効果つきかあ、いいじゃない」
ちなみに香水は、桃の他に、木苺、葡萄、バニラ、ミントの五種類作っておいた。
効果は、桃は防御力、木苺は攻撃力、葡萄は毎時体力回復率、バニラは魔力回復率、ミントは素早さを上げるようにしてみた。三〇分間効くのよ。
あと、重ね掛けはできないのよね。だって、混ぜたら匂いがすごいことに。これは名前と効能を書いたラベルに注意書きもしたし大丈夫かな。といっても試す人はやるんだろうけど。
「店舗はもう見つかったのか」
「一応、候補として三つあるんだけど、あなたたちにも聞いてからにしようと思ってさ」
「じゃあ明日見に行かない?」
「そうだな。実際に見た方がいいか」
翌日。
私とルーとアラリスの三人は、三つの候補を見に行くことに。
一つ目は、平屋で倉庫と店舗の部屋だけのもの。お値段一〇五〇金貨。本通にある。
二つ目は、それに作業場が追加されてるもの。お値段一五七五金貨。路地裏にある。
三つ目は、それらに、庭付き井戸付き台所付き、でもって寝室一つ。三〇〇〇金貨。二つ目の通りにある。
という感じ。
三店舗を見終わって、私は二人にどこがいいかを聞いてみた。
「どうしよっか」
「そうだな。森の家と繋がっている転移陣を作るのだから、二つ目でいいんじゃないか。他人にばれないように移動する必要があるしな。作業場に陣を敷けばいいだろう」
「僕も二つ目かな。路地裏にあるのが、隠れ名店みたいでいいよね。あと、転移陣を敷くなら作業場に仕切りをしたほうがいいと思う」
「なるほど。私は一つ目にしようかなって思ってたけど、転移陣を敷くなら、二つ目のほうがいいか」
領主様から委託されている不動産に、二つ目の店舗にすることを伝えてお金を払ってきた。これで場所は確保ね。
あとは、売り物全てのリストアップと、価格設定、在庫の確保、かな。けっこうやることがあるわね。でもこういうのやるのもわくわくするし楽しい。
私たちは市場で売る際に、店舗持つことにし、開店日時と目玉商品を書いたチラシを渡しておくことにした。これで少しでも周知してもらえればいいな。
それから一ヵ月を準備期間にしてみた。その間に、周辺の他店舗にもご挨拶。
で、商品のリストアップと価格設定、在庫の確保に宣伝も終わって。
「いらっしゃいませ」
開店当日。
どのくらいお客さんが来るかわからなかったから、ルーとアラリスにも売り子として出てもらった。
二人いるから、交互で店の前で宣伝もしてもらって。
そしたら二人ともイケメン効果か、女性客が多かったわ。
香水で媚薬効果があるものはないかと聞かれたんだけど、それしちゃうとなんだか大変なことになりそうだったから、作らなかった。これからもそうするつもり。うちは健全な何でも屋だからね。
「二人ともお疲れ様」
「さんきゅ」
「ありがとう」
無事に一日目が終了して。
二人にコーヒーを出して、私は売上の計算を。……お、なかなかいい感じね。今日の売上は一三〇.七五〇ゴールド。
市場での常連さんや、女性客のおかげで、好調なスタートね。
初日だからだろうけど、そのうち一日五〇.〇〇〇ゴールドくらいに落ち着きそうかな。まあ、趣味でやることにしたから、このくらいが気楽でいい感じね。
在庫の補充もしておかないと。武具は今回出さなかったから、来週開く時に出してみよう。
えーと、今日売れた物は……。香水各種と剥ぎ取り用の短剣。結界石と攻撃用の魔力石各種、回復薬かな。
雑貨屋さんに卸してる回復薬だけど、やっぱりうちでも置くことにした。なぜなら雑貨屋さんは東区にあるんだけど、私たちの店は西区にあるから。ポラリスもけっこう大きめの街だから、このくらい離れてれば支障はないだろうと思ったのよね。チラシには、雑貨屋さんにも同じ商品がいくつかあるって書いておいたし。
「来週は武具も出すからね。とりあえず私は来週までは武具作りかな」
「素材なければ取ってくるぞ」
「僕も手伝うよ」
「ありがとう」
二人が素材集めをしてくれるなら足すかるわね。
売り物リストはそうねえ。
長剣、短剣、小盾、胴鎧、腕具、足具、兜、弓と矢。こんなもんかな。在庫は長剣と短剣を五つで、他は三つずつでいいかな。矢は三〇〇で。あとは慣れてきたらオーダーも受け付けるって感じでいいか。
うん。今週は忙しくなりそうね。
店が軌道に乗れば他国の情勢も調べにいけるから、それまでは頑張らないと。とはいっても、普段アラリスが情勢調べたり、ルーが素材集めに行ってくれたりしてるから、私は余りすることがないんだけどさ。
この世界の神様は、今はアラリスと私だけになってて、実はアラリスの父母は、もうずっと来てないんだって。次元も違うところに行ったらしいよ。
一緒に住むことになったから、挨拶どうしようって考えてたら、そもそも行けないじゃんってことに。次元を超えるには、もっと神様として研鑽を積まないと無理らしい。だから私はまだ会ったことはないのよね。いつか会えるのかしら。
と、まあ、それは置いといて。
在庫の補充は数日で終わるだろうから、空いた日に、ダンジョンにでも行こうかな。時々は体動かさないとね。店だけやってると体なまりそうだしさ。




