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カチュアの恋 続 下

 ナンダル国から帰ってきて、私とカチュアとルーの三人は、私の家で店舗についての詳細を纏めて、その翌日、カチュアはポラリスに帰ることに。


「楽しかったわ。ありがとう、リウ。また行きたいね、別の国にもさ」

「そのうちまた行こうか」


 カチュアを見送るついでに、空き店舗の場所も探しておかないといけないわよね。

 あと、レックス。そう思ってると、路地からこっちを窺っているのに気づく。もしかして、帰ってくるまでやってたのかしら。カチュアは気づかないで家に入っちゃった。


「レックス。ちょっといい?」

「ああ。俺も少し用があるんだ」


 へえ。私にも用ねえ。

 前回と同じく教会裏までやってきた私とレックス。今日のレックスは、前みたく煮え切らない感じじゃなかった。なにか思うところでもあったのかしらね。


「この前のことなんだが」


 そう言ってレックスは話し出す。なんか長くなりそうね。私は切り株に座ってレックスの話を聞くことにした。

 話を聞いていくうちにわかったんだけど、レックスとニコラが抱き合ってたっていうの、あれ、実は眩暈を起こしたニコラを支えてただけなんだって。

 で、付き合うってことも、三日間だけで、自分の気持ちにけりをつけたかったから、とかいう理由らしい。それからカチュアにちゃんと向き合いたかったそうだ。

 けど、ニコラはずっと付き合いたかったわけでしょ。その辺はどうなの。


「ニコラはどうするって?」

「自分に気持ちを向けないなら、用済みだとさ」

「なにそれ」


 ニコラって、相当な悪女? 小悪魔じゃないわよね。


「で、レックスはどうしたいの」

「俺は……」

「あ、やっぱり待って。これから先は私が聞くよりも、本人に言ったほうがいいかもしれないわね。ちょっと呼んでくるから、待っててくれる」

「わかった、頼む。俺が行くと避けるんだ」


 そりゃそうよね。振られるのは怖いもの。でも、なんだか風向きが変わったようだし、旅行から帰ってきた今なら、カチュアも話を聞いてくれるんじゃないかしら。

 そうして私は雑貨屋に戻って、渋るカチュアを説得してレックスのもとへと連れて行くことができた。

 その後の話は私にはまだわからない。その後は帰っちゃったからね。

 あとで話をし行くってカチュアが言ってたから、その時になるまでは待とう。

 そして。


「一年」

「一年?」

「うん。条件だしてみた。一年試に付き合ってみて、それであたしがその後もって思うなら、正式に付き合うことにした」

「なるほど」

「もう自分の心にけじめはつけたって。だから、きちんとあたしと向き合っていきたいって、言われた」


 それが本当ならいいんだけど。

 カチュアはいい子だから、幸せになってほしいのよね。


「いらっしゃい。その服お似合いですよ。こっちのアクセサリーと合わせるのがおすすめです」

「あ、お客さん。この魔法石は他の結界石と違って、少しだけ追加効果があるんですよ」


 私とカチュアは週一で市場で店を出すことに。それから半年ばかり経ったけど、カチュアとレックスの仲はなかなか良好みたいだ。

 そして、最近になって固定のお客さんも増えてきて、たまーに、カチュアに違う意味で声をかけてくる人もいたりして。レックスはそれがここのところ心配らしい。ふふ。まあ、今はカチュアにぞっこんで、甘くて。浮気のうの字もないらしいよ。

 カチュアと二人で店を出す予定だったけど、もしかしたら、それもなくなるかもしれないわね。このまま順調にいけば、半年後には同居するつもりだってカチュアが言ってたし。

 そんな二人のお邪魔しちゃ、悪いじゃない? まあ、一人で店を持つのも悪くないわね。

 私に声をかけてくるのはいないのかって?

 私にはルーがいるしね。時々、人化して売り子もしてくれるのよ。なんでも虫除けなんだとか。私はそんなのしてもらわなくても自分であしらえるんだけど、ルーはやりたいらしいよ。

 でも、ルーは女性客に人気があるから、それはありがたい。客層は多いほうが売上が上がるしね。


「こっちの魔法石ひとついいかな」

「はい。こちらですね……って、あんた」

「久しぶり。会いたかったよ」


 市場の店がいい感じになってきたある日。

 ルーがいない日に、アラリスがやってきた。おいおい、神様がなんでこんなとこに来るのよって。……私がいるからか。

 カチュアはにやにやしながらこっちを見てる。


「なんでここにいるわけ」

「なんでって、もちろん僕のお嫁さんに会いに来ちゃいけないの?」

「私はあんたの嫁になったつもりはない」

「つれないなあ。リウは。今日はあの猫いないんだね」

「知ってて来たんじゃないの」

「うん。知ってた」


 にこにこ笑いながら、アラリスは私の隣に座る。ちょっと、誰がそこに座っていいって言ったのよ。どきなさいよね。


「なに、リウ。彼のお嫁さんなわけ。あ! 同じ指輪! あんたルーはどうしたのよ」

「いや、これはその……。てかルーだって別に私の相棒なだけで、なんでもないのよ」

「あああ。可哀想なルー」


 カチュアはそう言って顔を覆った。泣きまねすんな!

 なによ。そんなこと言ったって、私とルーは主従関係なだけで、恋愛とかそんなのないのよ。たしかに見た目は好みだけど、それは私に都合がいいように創っただけだし。

 そりゃあ、主夫としてでも最高かもしれないけど、精霊で、猫だし。そういう関係にはなるとも思ったことないしさ。

 でも。たしかに、そういう対象としてみろってなったら、かなりの高物件だよね、ルーは。


「ここに夫の僕がいるのに、よその男のことを考えるなんて、リウって悪女だね」

「はあ? なに言ってんの。第一あんた、私の夫じゃないし!」

「ひどいなあ。あの日あんなに熱い夜だったのに」

「え。なになに? 二人ってほんとにそんな関係なわけ。なによリウってば、あたしに内緒なんてひどいじゃない」

「ちーがーうー! 本当になんでもないんだってば。こいつが勝手に言ってるだけなのよ」

「でも、それ前々から気になってたけど、結婚指輪じゃない。ルーがしてる様子もないし、なんでしてるのか、気になってたのよね。そういうわけか」


 腕組みをしてうんうん頷くカチュア。

 ああ、もう。なんでここに来たんだアラリスは。じろと睨むと、にへらとアラリスは笑った。はあ。なんか疲れたわ。


「もう僕の部屋も作ってあるから、これからはずっと一緒だよリウ」

「はああ? 部屋って、まさか!」

「森の家に決まってるじゃない。ちなみにルーにも納得させてあるから」

「ルーが?」


 なんでルーが。否定するならわかるけどさ。

 私はなんだか胸がもやもやしてきて、頬を膨らませた。帰ったらまってなさいよ、ルー。

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