~伝説の看板絵師?②~
~伝説の看板絵師?②~
サーペント蒲焼き初売り出しから少し後。
グレンの屋台。
「はぁぁ……匂いに釣られてくる客はいるのに……オーク串しか売れやしない……源内さんに【滋養強壮にサーペント】【異世界帰りにサーペント!】って宣伝文句まで考えてもらったのに……はぁぁ。」
こそこそこそ
(あれ、あの看板、判じ絵って言うんだって。)
(絵を文字にしてるのね?)
(あっちの獣人のシチュー屋さんも肉球の看板作ってもらったんだって)
(うちも描いてもらおうかしら?)
へへへ。俺ぁの噂話か?
俺はグレンさんの屋台の裏に場所を借りて絵を描いている。ほとんどが看板でぃ……
この街、アトランティスってのはおもしれぇ街で、描いても描いても終わらねぇ。
俺はエルフ街へと来ていた。
へぇ、これがエルフ街か、森と街が一体化してる。
一軒のBARから看板の依頼が来てるんでぃ。
コンコン。
「看板屋でぃ。依頼の品持って来たぜー!」
木がグラス?ってヤツの形になってる判じ絵だ。
「あーら。いらっしゃい。これが評判の判じ絵看板なのねぇ。」
この言葉にカウンター奥にいる老人が反応した。
「ん?判じ絵じゃと?絵?で文字?看板?どれどれ。おぉこれは面白い。」
その老人はダ・ヴィンチといってこの街に永住した転生者らしい。
「ワシも画家じゃ。コイツをモデルに絵を描いておる。」
ダ・ヴィンチはエルフを指差して
「コイツが二代目モナリザじゃ。」
と笑った。
何百年も同じ絵を描き続けてるだとぉ?!俺ぁには無理だ。
一つ所にいられねぇ性分なんだ。
「グレンに頼んで、北斎、お前の画集を少し見せてもらったが……」
(ん?なんでぇ?喧嘩でも売られるのか?)
「素晴らしい!これを出版させてはくれないか?」
「出版?版画ですかぃ?」
「魔導印刷じゃ。」
「ん?」
「何枚も同じ絵が一瞬にして刷れると考えて貰って良いぞ。」
「なんだとぉ!そりゃ、すげぇな。いいけどよ。出版してもらうのはいいんだけどよ。少し待って貰えねぇか?」
「いいぞ。してなんでじゃ?」
「俺ぁこの世界にまだ描いてねぇモノがたくさんあるんでぃ。まだまだ足りねぇ。だから俺が良いって言うまで待ってくれねぇか?」
「……そんなことか。ワシには時間はたっぷりとある。好きにすればよかろう。」
「ありがとよ!」
俺はそれから数十年、ここで、ありとあらゆるモノを見て描いて。体験して描いた。
♢♢♢♢♢
後に建てられた【北斎異世界美術館】にはこんな作品が展示されている。
《北斎異世界漫画》
葛飾北斎がアトランティスにて最後に刊行した絵手本集。
種族、異世界、魔物、風景、乗り物など、旅で出会ったあらゆる題材を軽妙な筆致で描いており、後世の絵師たちにも大きな影響を与えた。
北斎は完成後、
「おもしれぇおまけの人生だったぜ!じゃあな!」
と言い残し、輪廻へと戻ったと伝えられている。
~稀代の天才絵師・葛飾北斎のチート伝説。ここに完~




