25、憧れのマイホーム。
廊下を歩いている途中、男性が話しかけて来た。
行きとはうって変わった、優しそうな目つきだ。
「すみません、うちの娘が。
生まれて数百年ですから、上手く相手の力量を測れない未熟者でして。」
「いえいえ、こちらとしても面白かったですし、上に立つ才能もあるんでしょうね。
娘さんは。
……娘!?」
「ああ、そうですか。
そう言って頂くとこちらとしても嬉しい限りですよ。」
「いや!
そうじゃ無くて!
娘って、だって、シルビアの部下って感じで、指示に従ってたし、えっ?」
「どこかおかしいですか?
人間の社会っていうのは、時に年功序列を超えて形成されるものだと聞きます。
部下と上司の様に。」
「えっ、まあそうですけど…」
困惑に足を止めたリグを気にせずに進むシルビアの父に置いていかれないように、リグは少し小走りで後を追った。
(エルフっていうのは、想像以上に凄いのかも知れない。)
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「着きましたよ。」
案内されたのは、集落の端に存在する建物。
他の物より少し大きいそれは、真っ暗になった夜に溶け込んで、少し不気味な雰囲気さえ感じさせていた。
「…ありがとうございます。」
「では、私はこれで。」
早々と退散していった男性に小さく手を振って、リグは建物のドアを開ける。
埃っぽい空気が顔面を襲って、リグは思わず扉を閉めた。
「取り敢えず、掃除か。」
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朝目覚めたリグは、見覚えの無い天井に違和感を覚えた。
「ああ、そういえば、昨日貸してもらったんだった。
えっと、この部屋だけ綺麗にして、一旦眠ったんだよな。」
窓を見ると、目に痛い程の光が差し込んでいる。
「完全に寝坊だ…」
足元で丸まって眠っていたドラさんを撫でて起こして、次にとるべき行動を考える。
「ああ、朝ご飯、いや、昼ご飯か。
どうしよう…
狩ってくるしか無いのか。
ストック無いし。
でもなあ、取り敢えず家を整えておきたい。
…ダメかあ。
自分だけなら我慢できるけど、ドラさんもいる訳だし。」
ため息を一つついて、近隣に挨拶をしようと扉を押すと、向こう側に確かな重みを感じた。
外に出て確かめると、そこにはバスケットが置いてあった。
もう一度部屋に帰って確認すると、手紙が挟まっている。
『来たばかりで朝食も無いだろうから用意してやったぞ。
ただ、部屋は早く掃除しろ。
埃臭くて入れん。』
「ああ、なんだ。
シルビアって神だったのか。
って不法侵入…
次からは鍵かけておこう!」
ドラさんがいる部屋に戻り、一人分の少し少ない量のサンドイッチで、遅めの朝食をいただいた。




