12、お金の稼ぎ方!3
『つまり、簡単な身分証明のためのものと、目立たずにお金を稼ぐ為のパイプが欲しいと…』
リマインから発せられた言葉に、リグは思わず口をつぐむ。
しかし、それは無理難題をふっかけているから断られるのではないかという心配や、実現しないのではないかという心情から来ている訳ではない。
単純に…
『では、今回はグリーンドラゴンと、紅光花五本ですねえ。』
こういう事だ。
昔から、知り合った頃から、こうだった。
リグがリマインに対して何か頼みをすれば、それの対価として狩りや採集を要求される。
こういった高難易度のものを頼まれる事もあるが、中級の冒険者が行うような物を頼まれる事もある。
複数のものを要求する場合は、場所を概ね固めてくれる事は有り難かったが、昔と違って自由に動く事の出来ない今では、何にせよ難しいものであった。
「ああ、わかった…明日までには用意する。」
沈んだ声で答えたリグに対して、リマインは陽気な声色で答える。
『では、先に身分証明書を送っておきます。
商人ギルドのものでいいですかねえ。』
「…そうして貰えると、助かるよ。」
『では、30分後位に到着すると思うので、窓は開け放っておいて下さいねえ。
ああ、頼んだ物はいつもの所に置いておいて下さいねえ。
パイプの為のものも、そこにおいておきますから。』
「わかった、ありがとう。
それじゃあまた。」
頼んでいる立場にも関わらず、簡素な礼だけで念話を切ろうとするリグに対して、リマインは先程とはうって変わった真剣そうな声色で、言った。
『…そこまでしてこの方法に拘る意味はあるんですかねえ。
私みたいに、国を脅して立場を得れば楽でしょうに。
それこそ、あなたなら軍の一つくらい簡単に壊滅させれるでしょう?』
リグは、その問いかけに答える事は無く、念話を静かに切った。
そして、ベッドに後ろ向きに倒れこむ。
いつのまにか寝てしまったドラさんを横目に見て、起こさない様に心の中で文句を言った。
(なんだよ!グリーンドラゴンと紅光花って!
そんなの上級の冒険者に頼めばいいだろ!
というか、自分でいけよ!強いんだから!こっちからだったらまた戻って行く様になるだろうが!)
目の上に手を当てて、倒れ込んだ状態から動かない。
窓から流れ込んでくる風を足元に感じた。
「分かってるよ、そうした方が楽ってことくらい。
…それでも、簡単に割り切れないんだよ。」
予告通り30分後に、魔法で形取られた鳩と共に、商人ギルドのリグとしての証明書が届けられた。