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37話

 五人組のグループで呪具製作をすることになった。

 満景は、グループメンバーの様子をうかがう。

 小里は若槻の隣に陣取って、若槻に喋りかける時間が来るのを待っている。若槻の方も小里の態度を理解しているようで、時間が来たらねと小さな身振りを返している。

 力雄は厳めしい顔のまま、そして流山はイラついた顔で、グループの誰かと関わることを拒否する態度でいる。

 満景自身はどうかというと、そんなメンバーたちよりも呪具製作の方が大事なので、他四人の様子を見ることを切り上げて、鬼瓦先生の解説に耳を傾け直した。


「――というわけで、悪霊と戦う際に身の安全を作りだす事にも使えるので、呪具は作れることに越したことはない。そしてまず、ごくスタンダードな呪具を紹介する」


 鬼瓦先生は黒板に三つの呪具の絵を描いた。


「一つは、祓串。神社で神主あたりが振っている、アレだ。もう一つは、お札。神社や寺で変えるアレだ。最後は、折り紙で作る紙の人形だ」


 呪具という呼称からの想像とはかけ離れた道具に、生徒の一人が質問を飛ばす。


「先生! スタンダードな呪具っていったら、聖水と月の光で清めた水晶玉とか、動物の血で染めた呪紙とか、呪力を込めて作り上げる猿の手とかじゃないんですか?」

「それらも有名な呪具だが、一歩間違えたら危険に陥るものだぞ。そんな物を一年生に作らせられるかよ。先ずは失敗しても何も問題がなく、それでいてある程度効果が期待できる、この黒板に書いた三つが、一年生に作らせるのに適している呪具だ」


 質問した生徒が納得したところで、鬼瓦先生が一グループに一つの木箱を渡していく。

 満景が代表して中身を検めると、真っ白な紙。白木の棒。竹の定規。裁ち鋏。筆と墨と硯のセット。そして、件の三つの呪具の作り方が書かれた紙があった。


「材料は行き渡ったな。それじゃあ、グループで強力して、呪具の製作に入れ。出来上がったら、見せに来い。呪具として使い物にならなかったら、作り直しを命じるからな」


 作り直す事も有り得ると聞いて、生徒たちが『ええぇ~』と文句の声を上げる。

 しかし鬼瓦先生は取り合わず、作り始めろと身振りして、実習室で余っていた椅子に座ってしまった。

 満景は、とりあえず箱の中にある物を全て机の上に出した。


「作る呪具は三つ。一つずつ手分けして作っていきたいんだけど」


 満景の呼びかけに、先ず反応したのは小里。

 ただし小里は、若槻を放す気はないと知らせるように、腕を取って組んでみせてきた。


「若槻ちゃん、いっしょに作ろうぜー。んで、どれ作りたい?」

「ええっと、では祓串――でいいでしょうか?」


 若槻の反応を窺う顔に、満景と力雄は構わないと頷き、流山は「ケッ」と息を吐いて関りを無視する態度を取る。

 満景を含めた三人の反応を受けて、小里がニンマリと笑顔になる。


「反対がないってことは、私らが祓串を作るってことで決まりね。ささ、若槻ちゃん。作ってこうぜー」

「はい。手順書の通りに作っていきましょう」


 女子二人が仲良く作業を始めるのを横目に、満景は他二人の男子に顔を向ける。


「二人はどっちが良い? 僕はどちらでも構わないんだけど」


 そう問われて、まず力雄が厳めしい顔に少し困り顔を滲ませながら、折り紙の人形作りを指した。


「悪いが、こちらは作れる気がしない。指先が不器用で」

「それじゃあ、力雄はお札作りだね。流山くんは?」


 話題を向けたところで、流山が机を拳で強く叩いた。

 どしん、という音が鳴り、実習室が一瞬静かになる。しかしすぐに、生徒たちの会話の音が、部屋のあちこちで再開された。

 一方で満景は、流山に首を傾げていた。


「それで、どっちがいいの? もしかして、祓串作りに参加したいとか?」


 怖気づくどころか、さらに踏み込んだ質問をする、満景。

 その態度をどう感じたのか、流山は苛立った顔つきで、こんなことを言ってきた。


「流山じゃなくて、ギヤマンと呼びやがれ。そっちの呼ばれ方の方が好きだ」

「わかったよ、ギヤマン。で、どの呪具を作りたい?」

「……どれも作りたくねえな。こんなもの作ったって、悪霊退治の足しにならねえんだよ」


 実感を伴う口調に、満景も同意の頷きを返す。


「霊能者が出張るような悪霊を退治するには、心許ない呪具だよね。どれも防御用だし」

「ほう、分かってんじゃねえか」

「祓串は場と人を清めることで、お札はそれがもつ呪力でもって、折り紙の人形はそのまま囮として、対象者を霊障を防ぐものだからね」

「その通り。つまりだ、こんな呪具作ったところで、悪霊の霊障を止めることは出来ねえ。悪霊に対抗しようとするんなら、こんぐらいの呪具を持たねえとだ」


 ギヤマンは、私服のパーカーの腹部のポケットから棒のようなものを取り出した。その棒を手に持って、一振り。棒の内側に仕舞われていた棒が伸び出てきて、全長一メートルほどに。伸縮式の特殊警棒だ。

 しかも単なる特殊警棒ではない。

 その表面には、白抜きの文字で経文が書かれていた。


「コレがあれば、悪霊なんて一撃だ。チマチマと、役に立たねえ呪具を作ってられるかってんだ」

「へぇ。直接幽霊に経文を叩きこんで、強制的に成仏させる呪具のようだね。これなら、確かに悪霊退散させられそう」


 満景がすんなりと同意すると、ギヤマンがなぜか及び腰になる。


「何だお前。調子狂うな」

「言っている意味がわからないけど、呪具を作るのが嫌なのは分かったよ。じゃあ、力雄はお札作り。僕が折り紙ね。ギヤマンは自由にしてて」


 満景は力雄にお札用の材料を渡すと、自分も折り紙に手を付け始める。

 ギヤマンは、何か言いたげな顔をしたが、特殊警棒を短く戻してパーカーに収めると、頬杖をついて寝始めた。


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― 新着の感想 ―
大人だね。占いの館でアクが強すぎる大人に囲まれてあれこれ教え込まれているだけはある。ギヤマンみたいな態度だったら大人げなく無視されそうだし。 こういう子は応援したくなるよね。是非幸せになってほしいな。
世渡りが上手い主人公らしい対応でした
分担出来たけどもこれギヤマンいる意味ある?
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