133話
東京都にある有名な神社に隠された社があり、そこで日本の平和を守るために呪いを浄化する儀式が行われていた。
この一件を受けて、A組の生徒たちの多くが、他にも一般人には隠されている霊能儀式がないかを探ったようだった。
ホームルームが始まる前、昼休みや放課後に、自分たちが調べた隠された儀式について語り合う生徒たちの姿があった。
「親に聞いてみたら、うちは代々、近くにある大きな会社の土地にある、社の管理をしていることが分かった」
「母方の実家の田舎では、ひっそりと土地神を慰撫する祭りが行われてるんだって」
「マジかよ。こっちは散々調べたけど、空振りの連続だったのに」
A組の生徒たちの生家や親戚の家の多くが、霊能関係を生業にしていることもあり、有益な情報が沢山集まったようだ。
情報といえばと、満景は隣の席にいる小里に顔を向ける。
「ああいう隠された儀式について、情報屋には情報がないの?」
「ん? どうしても知りたいのなら、本業の情報だから、お金取るんだけど、いい?」
「いや今の反応で、少なからず情報は持っているってことは分かったからいいや」
「そうした方がいいよ。調べておいたなんだけど、聞いて胸が悪くなる話が多いし」
小里から気になる物言いがあったが、満景は忠告を受けて情報を聞かないことにした。その代わり、顔を力雄へと向けなおした。
「力雄の神社には、隠された儀式ってないの?」
「……うちの儀式は、相撲だけだ」
つまり、隠していない儀式しかないらしい。
「そういえば、力雄が毎朝奉神と相撲を取っているのって、ある種浄化の儀式なんだっけ?」
「相撲自体が土地を清める効果がある」
そういえばそうだったと満景が納得していると、小里が満景に話を向けてきた。
「むしろ、満景に話を聞きたかったりするんだけどー?」
「話って、隠された儀式について?」
そういわれてもと、満景は困惑する。
「僕が知る儀式らしい儀式なんて、それこそ狗神を作る儀式か、悪魔を召喚する儀式しか当てがないよ」
「満景の師匠さんたちは何か知ってんじゃないかなって思ったけど、話は聞いてないとか?」
「話を聞こうとも思ってなかったけど……」
改めて指摘されると、満景の占いの師匠連中なら隠された儀式の一つ二つは知ってそうに感じる。
ソコノ住職は、占いの館のある土地の近辺に古くからある寺の住職だ。あの土地に纏わる話は豊富に知っているに違いない。
デビル大杉殿下は悪魔関係のスペシャリストなのでより詳しい悪魔召喚儀式を知っているだろうし、浅葱信念は神道系の実力者なので隠された儀式の協力を頼まれることが合っても不思議じゃない。
他の占い師たちも、占いの腕もそうだが、それぞれに得意な霊能分野でもやり手の人たちばかりなので、情報を持っていても変じゃない。
恐らく満景が質問すれば、師匠のうちの話が簡単そうな何人かなら、秘匿された儀式についての情報を渡してくれる可能性が高い。
とはいえ、満景はあまり乗り気になれない。
「師匠たちとは、あくまで占いにおける師弟関係だから、あまり霊能関係の話はしないんだよね」
「そうなん? その割には、色々と教えてもらってるっぽいけど? ほら、あの悪魔召喚とかさ」
「あれは、あくまで自衛の為の技術だよ。占いに来る人の中には、悪神や悪魔に呪われている人もいるからね。そういった人に不用意に占いをすると、憑いている悪神や悪魔から『呪う邪魔をするな』って攻撃してくるからさ」
「それって、呪いを祓うことができる方法とは別ってこと?」
「全くの別物だよ。僕が師匠たちから教わったのは、あくまで自分が呪いにかかったり、呪いを司る神や悪魔からの攻撃を防ぐものだよ。そういう呪いや悪魔とかを祓うのは、師匠たちが直々にやるから、僕は手を出さないようにって言われているんだ」
「そうなんだー。んで、話を戻すけど。師匠さんたちに、聞いてみる気ない?」
改めて考えてみるが、満景は聞く気になれなかった。
「聞けば教えてくれる師匠だと、なんか本当にヤバい儀式を紹介されそうだから嫌だね」
「ヤバい儀式って、例えば?」
「通報されたら逮捕されることをやっているとかだよ。例えば、危ないクスリを使っているとか、生贄とかさ」
「……それ、マジで?」
「いや、そういう儀式をワザと教えてきそうな師匠がいるなってだけで、本当に師匠たちがその手の儀式をしっているかは知らないよ」
しかし満景の直感は、突けば確実に蛇が飛び出てくる藪だと判断していた。
小里も、流石に聞くだけでヤバい儀式を知りたくはなかったのだろう、誤魔化し笑いの後に全く別種へと話題を変えたのだった。




