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【第六章】†ep.5 数奇な運命の結末②†††完

長らく読んで頂いた方ありがとうございました。

この話を持って最終話とさせて頂きます。


「……どうしたんだ? そんなに驚いて……」

 レティシアは怪訝そうな表情で俺の顔を覗きこんでいた。

「――お、お前本当にお前なのかっ?」

 俺は理解に苦しみながら、何ともわかりきった質問をした。

「ゆ、夢か何かだと思うのか?」

 レティシアは宙で一度羽根を広げて、腕を組んだ。

 その姿はやはり女神――神々しさに包まれている。

 俺はレティシアのその姿のある点に気付き、ひとつ物を言っておこうと思った。

「――あ、いや。とりあえずお前は服を着ろ……裸はマズイ……」

 ・・・・・・・・・・・・。

「あぁ、そっか。――これで良いか」

 そう言ってレティシアは普通に服を簡易魔法で着て、くるっと回ってみせた。

 ふと俺はその姿を見て、羽根に触れた。

「だ、駄目だ……羽根には触れるな……。急所でもある部分がある」

「え? そ、そうか……すまない。綺麗だなぁと思ってな」

 レティシアは身を離し、少し怒って言った。

「――羽根の生えた根元の所は絶対に触れてはならぬ」

 どうやら根元の部分を触れると失神してしまうらしい……確かに急所だ。

 少しいい事を聞いたと俺は密かに思った。

「……では、まずミグのところへ行こう。あいつはきっと、いい驚き方をする」

「あはは、そうだな……アイツが一番、お前の死を悲しんでいた。多分俺より近かっただろう? お前達二人はとても仲が良かった」

 レティシアは、その言葉に照れくさそうに微笑んだ。


 リュシファーはミグの部屋をノックした。

 返事はない――。

 ドアに手をかけると、ミグの部屋のドアは簡単に開いた。

 ミグの部屋は荒れている。

 ベッドに横になり、目はうっすらと開けているがドアを開けた俺を見向きもしない。

 声をかけても、それは同じだった。

 ため息を吐いて、俺は言った。


「――ミグ、レティシア……理由あって帰って来たんだ」


 反応はないと思われたが、微かな希望を込めて放ったその言葉に、ミグはばっと起き上がってこちらを見た。

 目を見開いて、驚愕した表情で俺を見ている。

「レティ、入って来てもいいぞ」

 俺はドアの前で待たせているレティシアに声をかけた。

 ドアがゆっくりと開かれて、そこにレティシアが姿を現した瞬間。

 ミグは指を差したままで絶句していた。

 ……予想通りだ。

「う、……嘘――だって、えっ……あ、……おっ俺……今、変な夢……見てるっ?」

 レティシアと俺はミグのその様子に、くすっとお互いに顔を見合わせて微笑んで、ミグに近寄った。

 レティシアは近寄るなり、驚いているミグに抱きついたその勢いで押し倒した。

「わ、ちょ……っお前どうしてッッ! っていうか、その姿は一体――!?」

 レティシアはミグの顔を寝転がりながら微笑んで見ると、微笑んで言った。

「――女神……。生前にとても良い事をした者が女神になるんだとか。それと、女神になる器を持った者が流した涙が時折結晶化する。それを持ったリュシファーが願った願いにより、私はここでリュシファーと一緒にいなくてはならなくなったというわけだ」

 レティシアのその説明に、少し訂正を加えるため俺はため息を吐いた。

「いや、いなくてはならないというのは少し語弊があるんじゃないか? 三つの願いの内、二つ目はお前が望む願いを言っていいと言ったんだ。俺は。まぁ、俺が願おうと思っていた願いと同じだと思ったので言ったのであながち間違いでもないがな……」

 レティシアはその言葉にぎこちなく微笑んだが、起き上がってため息を吐いた。

「とにかく、そういうことだ。女神と言っても、神様が一番偉い――私達女神は、願いを神様に届けて叶えて貰う様に祈るだけだ――従って、別に何も普通の人間と大して変わらぬ。まずはミグに報告をと思ってな……すまなかったな。悲しませて……」

 ミグは起き上がると、レティシアを抱きしめて泣いた。

 困った様に微笑んだレティシアはミグの頭を優しく撫でて微笑んでいた。

 その姿はやはり女神だ――と俺はそう思った。


 その後、国王の元へと足を運んだ俺達は、会う者会う者に事情を説明して大広間へと着く頃にはさすがに少し疲れていた。

 勿論、国王と王妃も驚愕して事情を説明すると涙を流しながら歓喜した。

 そして俺は言った。

 レティシアと恋仲であることや、自分の知らなかった素性のことを言った。

「な、なんと――! も、勿論だ――。素性などという物はなくとも、始めからお前のことはとても出来た人物だと私は思っていた。お前にレティシアを任せるなら私も安心だ――それにどちらにせよ、女神である今のレティシアは私達の娘の記憶を持ってはいるが、身はそうではないということであろう? それでは私達がとやかく言う話ではないだろう」

 国王はそう言って、そうかそうかと微笑んで二人の肩に手を置いた。

 王妃リーディアも嬉しそうに微笑んでいた。

 俺達二人は顔を見合わせて意外な返事に微笑んだ。

 『今夜は宴だ』と国王は嬉しそうに手を叩いて侍女に伝えた。

 そしてその報告は城中に伝わり、部屋に戻った二人のもとへエルトが急いでやって来た。

「――レ、レティ……! 本当にお前なのだな……!?」

「兄上ッッ!」

 レティシアは嬉しそうにエルトの胸に飛び込んだ。


「――何はともあれ……、本当に人騒がせなヤツだな。お前は……」

とエルトは落ち着いてからそう言った。

 ……その通りだと微笑んだ俺にエルトは少し表情を変えて言った。

「――リュシファー、お前にはひとつ聞いておかねばならぬな……」

 その少し厳しい目に、俺は少しぎくっとした。

 案の定エルトはいつから恋仲なのかと聞いて来た。

 勿論、エルトは自分がダムルニクス王国で俺達に会った時に、既にそうだったのならば何故言わなかったのかという事を疑問に感じて言った様だったが、その時はまだそうではなかったと告げると、息を吐いて話を聞いた。

「しかし、まぁその直後とは…お前には恐れ入るなぁ」

「あ……はは、その……これからはお義兄様とお呼びしなくてはなりませんね」

「……はは、その様だな。物好きだなお前も。とにかく、手のかかる妹をこれからもよろしく頼む……」

 エルトは優しく微笑んでそう言った。



 そうして――しばらくして結婚式を終えた二人は、この城で引き続き暮らすこととなった。

 俺とレティシアは結婚したとはいえ、何か変わったとは思えない。

 教育係兼目付け役であることには変わりない。

 女神に勉強を教えるというのもおかしな話だ。


 レティシアはこの城のことを――こう例えていた。


“煌びやかな牢獄”だ――と……。


 しかし、旅に出てみてそうでもないことがわかったと言った――。

 自由に話し、自由に多少問題を起こしながらも、平和に過ごして来たこの城――――。

 前ならば自分はいつも煌びやかな牢獄にいてなんて不幸なんだだと思っていたというのに、


『もっと不自由な場所にいた者がいた』と――レティシアは話す。


 多分、それは精霊界の王女――――ラクロエのことを言っているのだと思う。

 そんな風に転生させられたラクロエに込められた願い――。

 それを無駄にする事がどうしても出来なかったレティシアは、大魔神ザロクサス諸共滅ぼす道を選んだ。

 辛くて、でも守りたい物のためああするしかなかったというのは痛いほどわかる。

 俺があの立場だったとしても、そうするかもしれない。


「――もちろん、お前をこの手にかけるのが嫌だったのもある……」


 レティシアは得意気に微笑んで言った。


「――ほぉ……。それで、勉強を中断したいのかな?」


 そう――。今は勉強の真っ最中だ。

 中断させられても困る俺はそう意地悪い目を浮かべて微笑んだ。

「ぁぅ……」

 こいつの考えそうなことなど、大体お見通しだ――。俺もレティシアと過ごして、手に取るように考えが読めるようになったものだ。

 レティシアは『結婚してからも勉強させられてはため息も出る』と、呆れたように微笑んだ。

 そして不満の声を並べ出すレティシアは、俺が赴任してきてから何も変わってはいないのかもしれない。

 俺が呆れているとレティシアは、はぁ……と何やらため息を吐くとこう言った。


「だってぇ~、気分が悪いんだ。なんだか最近時々気分が悪くてこう、何か吐き気がする様な変な感じで――」


「!?」

 その言葉に俺ははっとしてレティシアを見た――。


「――レ……レティ、それって…俺達の子供が出来たということでは……?」


 レティシアも驚愕の視線を俺に向けていた。


 それは、結婚してから四ヶ月後のこと――。

 ――レティシア懐妊の知らせはその日のうちに城中に伝わった。

 そして驚いて未だに不思議でならないが、なんと三ヶ月で生まれて来た――。

 おそらく、女神だし勝手が違うのかもしれないと俺は全知識を駆使しても理解不能なその疑問に答えを出した。


 子供は、なんと女の子二人の双子だった。

 エルフと人間のハーフと、女神の子――一体どんな子が生まれてくるかと思っていた。

 しかし容姿は普通に人間の様でレティシアによく似ていた。

 その王女たちはエリウとオニキスと名付けられたが、この双子の王女エリウとオニキス――。


 ……大体予想はしていたものの、レティシア同様――物凄い問題児であったことは言うまでもない。

 俺は三人も手のかかる家族を抱えることとなったようである。はぁ……。


 エンブレミア王国マールシェスタ城。

 この国の問題児であった王女レティシアは、女神となった今でも天界にとっては問題児と言われているだろう。

 たったひとつの願いにより地上に住まい――、禁忌を犯した女神レティシア――。


 何はともあれ、この平和な日常はレティシアが煌びやかな牢獄と言ったこの城でこれからも続いていくのだろう。

 もう何も嵐はやって来ないよう俺は願うばかりである――。


 何かがあった時には、いつかまた別のお話で話すことがあるかもしれない――。

 

 それまでは、やっと訪れた平穏が続いていると思っていてほしい――。


 では――――。

 またどこかで会うその日まで――――。


 ――――……


 ――……



††† ~FIN~ †††


 読んでくださりありがとうございましたぁぁっ。


やっと終わりましたぁ。

機会があれば続編を書いてみたいと思いますっっ。

それでは長い間お読み頂いてありがとうございました。

月葉りんご処女作完結出来ました。何か感想アドバイスとか、何かつまらなくても何か頂けると幸いです。

ではでは。本当にありがとうございました。

長かったのに読んで頂けた方感謝いたしておりますっ。

お疲れ様でした。


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