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ステージボス

前回は投稿が遅くなり申し訳ありませんでした。書くのが難しく、中々筆が進みませんでした。

今回は愈々というか、やっとステージボスです。上手く書けたか分かりませんが、それでも読んで下さる方々に深く感謝申し上げます。






 



 それから二週間後の午後。



 我らは今まさに、ステージボスに戦いを挑もうとしていた。


 思えば、エリアボス討伐から随分と色んな事があったものだ。

 雷帝が加わり、皆とのBBQ、攻略組とに合同訓練、そういえば雷帝が急にやる気を出したのもその頃であった。そしてユリが負け、突如剣を捨てた。朔夜が山籠りし、雷帝も腕を磨き、最近我らはパーティーとして巧みに連携が取れる様になった。


 中でもユリの方針変更には驚かされたがな。だが勿論、それはユリなりの考えがあっての行動だったのだ。だから我はそれを尊重する事に決めた。

 それに、ユリが補助に回る事によって格段に強くなれたのも事実であった。現に確認のためイビルリザードと再度戦った時など、ものの3分で圧倒したのだ。

 ユリは剣を捨ててでも、我らの為に力になろうとしてくれている。ならば我はユリを守り、敵を倒し、目的のため出来る限りの力を出すだけである。


 それに朔夜も日々、無茶をしておった。ある日突然、蒼き山岳の頂上に数日の山篭りをしたのだ。皆が謂うには、蒼き山岳の魔物はβ版の時よりも強化されているそうだ。朔夜はそんな中、命を危険に晒しながら鍛え続けておったのだ。

 実は我も心配して様子を遠くから見守っていたのだが、朔夜はその数日を見事に戦い抜いてみせた。本当にその強靭な精神は敬服に値する。

 幼き少女が何故あの様な強い意思を身に宿しておるのであろうか。


 そういえば雷帝もスキルを変え、より威力を増した攻撃を得るために奔走していた様だ。恐らく、盾の騎士グレンとの戦いの影響であろう。夜な夜な訓練に出掛けておったのだ。

 我は朔夜の見守りもあって良くは知らんが、雷帝の事だ上手くやっておるのだろう。

 心配がない訳では無いがユリや朔夜の事もあって、我は少し雷帝に頼っている所がある。先日のユリが落ち込んでいた時も結局雷帝に助けられた。我は人の心に疎い。今度感謝の一言でも言ってやらねばなるまい。

 

 さて...「準備はよいか?」

 我は草原に繋がる門の麓で、ユリと初めて出会った場所で、声を掛ける。

 いつの間にか我には仲間が出来ていた。部下ではなく、肩を並べ同じ目線で語らう仲間がだ。

 我はこの者達と共に戦って行きたいと心から思う。それ程にユリ達と居る時は楽しく、心満たされるものであった。我が魔王であった時には決して得られる事の無かったものだ。

 本当は我は孤独であったのだ。共に語らい笑い合う者達を、時に怒り時に泣く仲間を、我はこの世界で漸く手に入れる事が出来た。


 だからこそ、我は皆の目的を叶えてやりたいと思う。人間や魔族など関係ない。ただ、友として仲間として、出来る限りの事をしたいのだ。

 たとえそれが...いや、今は止そう。我はこれから奴と戦い勝たねばならんのだ。誰一人失う事無く。


「うん、大丈夫よっ」

「準備万端」

「あーまかせろ」


 ユリの、朔夜の、雷帝の、短い返事が返ってくる。だがその言葉には、それぞれの決意が篭っておる。あれから更に強くなるために必死に足掻いたのだ。


「うむ、では行くぞ!! 負けてやるつもりなど毛頭ないわっ!!」


 我らは遠くに霞む巨人に向かい走る。草原に居るのはステージボスのみ。どうやら他の魔物はボスの出現と共に消え去った様だ。それに元からプレイヤー達は草原には立ち寄らぬ。

 この果てしなく広がる草原に居るのは巨人と我らだけであった。


「アタックライズII 、ディフェンスライズII 、スピードライズII、地属性付与アースガード、ガードアーマー、マジックアーマー、レジストアップ」


 ユリは走りながら強化魔法を唱える。詠唱に少し時間が掛かるが、徐々に我らが強化されていくのが分かる。ユリも初めは申し訳なさそうであったが、我からすれば随分と頼もしい。

 ただ強化魔法は一定範囲内のパーティーメンバーにしか全体化の効力が効かぬし、更に魔法自体の効果範囲による制約もある様で、ユリだけ遠くに居てもらうと謂うのは不可能であった。勿論、ユリはそんな事許さぬであろうがな。


 遠く巨体に佇む一匹の魔物に我らは確実に近づく。徐々にその姿が鮮明になる。堅牢な棍棒を引きずり、薄緑の体躯、胴に巻かれた鉄の腰蓑。

 恐らく10メートルはある。それはエリアボスよりも遥かに巨大であった。


「弓技三段、白竜の顎、雷轟」

 そんな中、雷帝は弓を引き一分程も力を溜め走る。雷轟とは、長い溜め時間を要する雷帝の必殺技である。その威力は我の渾身の一撃よりも高い。エリアボスのHPを一撃で二割りも削った技だ。


 そして我と朔夜が巨人の足元へと近付く。巨人はどうやらまだ気付いておらん様だ。偶々背を見せ歩いて居るのだから、運が良かったのであろう。


「精霊の加護、オール」

 ユリが我らに称号スキルを放つ。身体が軽くなり、力が更に漲る。その瞬間、風を切る様に我らは加速する。


「いくぜ魔王、朔夜!! 疾ッ!!」

 少し離れた雷帝から、遂に矢が放たれる。紫電の槍が飛ぶと、それは畝り二つに分かれ、まるで巨人の首元を噛み付く様に襲う。


「ダブルドラゴンタスクッ!!」

その直撃に合わせる様、我も渾身の一撃を振る。雷帝の技と違わぬ、龍の顎を巨大な足首に噛み襲わせる。

 限界まで重く速く、腕が千切れんばかりに剣を枝ならせ、全ての力をそれに乗せる。


「舞『劔』」

 朔夜もまた、自ら編み出した舞を踊る。巨人が踏み出そうとする足に向け、肉薄する様に華麗に舞う。青白い光が線の様に、蝶が羽ばたきながら巨人の脹脛へと駆け上がらんとする。

 朔夜の山篭りは、それらを編み出す為に行っていた様だ。


 我らの攻撃が巨大な魔物を揺らした。衝撃と共に巨人が前方へと傾く。そして轟く咆哮を上げながら、地に倒れ地鳴りが響く。

 賺さず一本に纏めた大剣を後ろに構え、切り上げる様に倒れる巨人の脚に突き刺す。さらにその足を駆け上り、切り裂きながら線を作る。


「うおおおおおお!!」

 気合を叫び、足の付け根であろう場所まで駆けると力の限り大剣を振り抜く。そして勢い良く抜き出る大剣そのままに高く跳ぶ。巨人の腰に剣を放たんと垂直に振りかぶる。

「フォールインパクトッ!!」

  剣技スキル三段の技を打つ。空中からの振り落とし時のみに発動出来る技だが、威力は高い。

 我の重化と相性が良く破壊力は屈指だ。


 果てしない剣速の斬撃が、薄緑の光沢ある肌に容易く入り込んでゆく。さらに薄い脂肪を纏った肉を裂き、骨を砕く感覚が伝わる。

 そうして我の持つ大剣は、巨人の身体に深く突き刺さっていた。幾許の間も置かず魔法を唱える。威力は低く時間が掛かるが、深く突き刺さった肉壁から剣を抜くには使うしかない。


「我は願う、内から発する風を纏い、その刃を風と化し、吹き荒れろ霹靂の風よ。汝の荒れ狂う姿を、我が大剣とし具現化せよ『ウィンドソード』」

 揺れ暴れる巨人の背の上で、刺さる大剣を掴み身体を支え詠唱する。巨人は怒り、朔夜を攻撃しようと暴れているのだろう。


 剣に風の力を纏わせ、裂けた肉壁を無理やり開かせる。まるで内から拒絶する様に吹き荒れる暴風は、肉を押しのけ空間を作る。

 恐らく奴の臓物も裂け傷付いているだろう。此処がゲーム等と謂う作り物の世界でなければ、間違いなく瀕死のダメージになっている筈だ。


 だがこれで終わる筈が無い。未だに暴れ、地響きの様な唸り声が、振動となって我の身体に伝わってくるのだ。足元は揺れ、時偶波打つ様な衝撃に身体が浮く。

 だが我は賺さず剣を捻り、今度は横へと『トの字』に交差する様に切り上げる。

 流石に予備動作無しで硬い骨と分厚い肉を切り、振り上げるには腕が重い。だが歯を食いしばり声を洩らしながら、無理やり刃を抜き去る。


 その時、突如弾力のある地面が不意に傾く。そして直ぐにそれは反転する。不意に我の身体が浮き、力が入らず宙に漂う。まるで急に支える大地が消えた様に。

 次の瞬間、それは天井となって我の頭上に現れた。恐らく巨人は身を捻り反り返らせた。我を叩き潰す為に。


「くっ!!」

 我は身を捻じり剣を返し、本物の大地に向け平手打ちの様に横薙ぎに振るう。極限まで身体を軽くし、逆に重くした大剣を支えに身体を弾く。

  そして剣さえも軽くし、それを掴んだまま堕ちる横へと逸れる。


 その直後、目の前に緑色の巨大な塊がズドンと堕ちる。押し退けられた空気が、我の身体を吹き飛ばす。巨人との間に距離が空く。朔夜も躱す為に跳び離れた様だ。

 その隙を突かれ巨人が立ち上がる。雷帝は矢を打っていた様だが、止める事は叶わなかった。

 一見してその動作は鈍く見えるが、巨体故に実際よりも減速して見えるだけだ。我らが防ぐ間も無く、巨人は青い光を纏い、手に持つ棍棒を斜めに振りかざす。標的は雷帝だった。

 恐らく我と朔夜のヘイトなるものが攻撃により減少し、雷帝へと移ったのだろう。


「って俺かよ!!」

 雷帝はそれでも軽口を叩く。

 巨人が振るう棍棒は、スローモーションの様にゆっくりと雷帝に向かい迫る様に見えた。

 だがそれは、雷帝が離れ距離を置いていたにも関わらず遥かに伸びる。時間にすれば一瞬であった。

 雷帝は上から迫る巨大な塊から、軌道を外れる様に横へと跳んだ。さらに弓を引いていたらしく、賺さず青い雷光を放つ。

 我らもただ眺めているだけではない。攻撃する巨人を阻止しようと、走り斬撃を仕掛ける。ユリも万が一に備え回復魔法を唱え始める。

 今までなら全員が攻撃に向かっていたが、ユリが回復に回ってくれておる。この辺りも連携が成り立つ様になった由縁であろう。


 雷帝の矢が、巨人の空いた脇下にささる。ほんの一瞬動きが鈍る。我も魔眼赤を発動し刹那の挙動を止める。朔夜もいち早く足元へと辿り着き、巨人の大きな足、その爪の間に剣を刺し込む。そこに炎魔法を流し込む。

 巨人が凄まじい痛みであろうそれに、一瞬バランスを崩す。その隙に我も向こう脛に重い竜の尾を二撃を加える。


 そして、僅かに遅れた巨人の鉄槌が、先程まで雷帝が居た空間に振り落とされた。

 激しい衝撃に地が波打つ。揺れる。空気が轟く。


 だがそれで終わりでは無かった。発動したスキルによって、次なる衝撃が我らを襲う。

 突如、目の前の空間が潰された様に一気に弾ける。 地がまた波打つ。押し出された空気が逃げる様に巻き上がる。その突風に朔夜は軽く飛ばされる。

 二段攻撃、恐らく時差を持って発動する類いの技スキルなのだろう。発動場所は棍棒の周辺、その衝撃はーーーー雷帝に


 いや直撃ではない。真面に受けていれば潰されて居た筈だ。流石にHPがゼロは無いだろうが、少なくとも肉体は無事では済まない。

  だが雷帝はその衝撃に弾かれ吹き飛んだだけであった。


 不意の追撃を避けるとはやりおる。流石に何度もは戦っただけはあって、奴の技を熟知しておる様だ。

 話には聞いていたが、ステージボスとは中々に厄介な相手だ。攻略組もエリアボスは全て討伐していたが、此奴に挑まないのはその為であろう。

 痛覚がカットされていない分、前の様にはいかないとユリも言っておったからな。

 それに高レベルの魔物の件もある。一応攻略組にも報告してやったが、明らかに知能を持ち強化されている様だ。こやつもそのβ版の時と同じとは限らん。


 ふと奴の頭上に目を遣ると、HPゲージの五割程が削れていた。だがあと二本、目に見えるのは実際のHPの三分の一に過ぎぬのだ。

 つまり我らが与えたダメージは二割にも満たぬと謂う事。ユリの強化がなければ一割以下、僅か六分程度だった。


 だが負けぬ。朔夜と雷帝も立て直し再度攻撃に入る。ユリは詠唱を中止し、補助魔法の掛け直しに入った様だ。

 我は出来るだけ全員に注意を向け戦う。不足の事態に対応し、皆を守るのだ。

 言うなればこの布陣は、朔夜が戦士、雷帝が魔法使い、ユリが僧侶、我が勇者...いや魔王だ。


 朔夜は巨人の突き下ろされる棍棒や足蹴りをいとも容易く避け、さらに巨人の足を切り裂き続けていた。雷帝は一本一本強力な矢で巨人の鳩尾を射抜く。そしてユリにより我らの強化が続く。

 我もまた暴れる巨人に向かい走る。そして大剣で奴の足裏、その靭帯を斬る。

 やはり魔物にも急所や弱点が存在するのだ。ダメージ効率なるものが攻撃する部位によって当然異なる。流石に歩けなくなったりはせぬが。


 巨人の身体がまた青く光る。

 そして高く跳ぶ。見上げるそれはまるで空に浮く要塞の様であった。

 跳ぶ方向ーーーーユリ。


 我は賺さず反転し、ユリの下へと走る。脚に全ての力を注ぎ地を蹴る。

抱え込む様にユリを抱き、勢いのまま跳ぶ。

 其処に暗い影が出来る。だが巨体だけあって堕ちる時間が長い。棍棒が振り降ろされる頃には、奴の背後に回り込んでいた。

 

そして、我の横を音速の矢が過ぎ去っていく。雷帝の溜め攻撃であろう。我もユリを放し、巨人へと駆ける。ありがとう、背後からユリの声が聞こえた。

 その言葉に何処からか力が溢れる。身体中が躍動し、加速する。その言葉はまるで魔法の様であった。


地を揺らし、激しい衝撃を生みながら着地する巨人に向かい斬撃を放つ。我の渾身の蓮撃を。



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