ユリVSガルド
行間の空間を改めました。
読みにくい事もあるかと思いますが、何卒お許し下さい。
時は少し遡り。魔王が戦っている頃、ユリもガルドと対峙していた。
「ぐああ!くそが!! 何故儂がこんな餓鬼如きに!! セインのギルドの奴などに!!くそ、ちょこまかと動くな雑魚が!!」
ガルドは自身の攻撃が躱され掠める様に憤慨している。ユリの近付き離れ斬り躱し、魔法を放ちまた斬り付ける。その戦い方に翻弄され、ガルドの腑は煮え繰り返っていたのだ。
第一ガルドは此の手のタイプが得意では無かった。的が小さい上に素早く小賢しい。その事が余計ガルドを苛立たせていた
「...黙って聞いてりゃ餓鬼だの雑魚だのってうっさいわねっ!! 後略組のギルドマスターだからってもう許さないわよ! さっさと倒してみせるんだからっ。この中年不細工!!」
その悪態にユリも最初は黙って聞き耐え忍んでいたが、朔夜や魔王の動きに比べ遥かに遅く鈍重なガルドをいつしか見下し、怒りがふつふつと湧き上がっていたのだった。魔王や朔夜達と日々共に戦い組手をする。
反省点を毎日の練習で改善していく。その中でユリは、ガルドの動きに十分対応出来る様になっていた。勿論、全ての攻撃を完全に避けている訳ではなくユリのHPは7割程に減っていた。それでもガルドは既に5割。十分良くやり合っていると言っていいだろう。
「なっ!!ち、中年不細工だとっ!!ふざけるなクソ餓鬼が!!ゲームの補正で強くなった小娘風情が舐めるなよ!その生意気な顔を切り刻んでやる!!」
思わぬユリの反論に、ガルドはさらに血を昇らせ顔を鬼の如く赤くし怒鳴る。
「うっさい!! そのムサい顔こっちに向けないでよっ!! それに女の子の顔を切り刻むなんて、本当に最低っ!!」
「黙れ黙れえっ!!! このクソ餓鬼があああ!!」
ガルドは両の手で握る大剣を振り上げると力任せに全力で振り落とす。一方ユリは、回避スキル『スウェイ』の上位技ハイスウェイを使い、その怒れる一撃を素早くあっさりと躱す。その斬撃は余りにも大振りで稚拙でガサツ過ぎたのだ。
ーーーー因みにスウェイとは、まるでボクサーの様に最小限のステップや身の捻りで攻撃を躱すスキルである。その回避は自動で最も効率良く躱す様にプログラミングされている。
その分、スピードは補正されていないし躱す事のみに特化しているため、回避後の攻撃のし易さなどは考慮されていない。
またハイスウェイは、その回避速度が上昇している。
そしてガルドの力任せの一撃は、勢いのままに石を割り地に食い込む。その隙を狙いユリは当然の如く連続攻撃を放つ。
(ハイスラッシュ!!サードスタブ!!バックステップ!ファイアーボール!ダブルスラッシュ!スウェイ!!)
ガルドは剣を捨て拳を振り応戦するが、その場凌ぎの慣れない攻撃はユリに尽く躱され余計に反撃される。ガルドの肩を、横腹を、首を斬り裂く、鎧ごと焼き、また斬る。
「ぐああっがはっぐあ!! うおおおおおお!!!」
怒り叫ぶガルドは遂に、一切の受ける攻撃を無視して襲い来る痛みに耐えながら地に刺さる剣を抜く。
既にそのHPはオレンジに達し赤になろうかと謂った具合であった。
――――不意に抜けた巨大な剣は偶然にもユリへと当たる。少女は悲鳴を上げ吹き飛び、地に身体を打つ音が鳴る。
「げほっげほ...ってやば!!」
其処に顔を怒りに染めたガルドの大剣が容赦無く迫る。地に蹲る少女はその一撃を躱す事が出来ない。
ユリの身体に衝撃と劈く激しい痛みが走る。身体を断たれる様な大きな裂傷は、感覚神経が中途半端にカットされている所為で、交感神経物質が放出される訳でも無く、余計に冷静に理解される。それが痛いのだ。
――――次の瞬間ユリの身体の裂け目が瞬時に治り、その痛みから解放される。
「痛っいわね!! このバカ!!」
ユリは衝撃にも手放す事なく、頑なに握り締めた剣を延ばし、振りかぶるガルドの太腿、前と後ろを繫ぐ鎧の隙間へと刃を刺し掻き回す。
「ぐがああああああ!」
(お返しよ!! ったく大の大人が恥ずかしい声あげてんじゃないわよっ!!)
そして素早く立ち上がりバックステップを決めると再び構える。
ガルドはさらに怒り、今にも血管が張り裂けるのではと思える程にこめかみを脈動させる。
そして両者のHPが赤く染まり、遂に決着が着こうとしていた。
ユリとガルドは同時に駆ける。小さな身体と大きな身体、小さな剣と大きな剣が、愈々交差する。そう思われたその時。
――――ガルドの身体が一瞬にして固く黒く、まるで金属にでも覆われたかの様に、変質していく。
ガキン!!
「なっ!!?」
突如として弾かれる剣に、ユリは一瞬戸惑い鈍る。鎧の隙間へと確実に向け刺し込まれた剣が弾かれるなどあり得なかった。
そして其処にガルドの振れる大剣が勢い良く襲いかかる。
その一撃はユリを斬り、吹き飛ばし、地に打ち付け、頭上に浮く赤色をも消し去ったのだった。
――――沈黙が流れ黒く染まる男は口にする。
「クソ餓鬼がああ!! 雑魚の分際でふざけるなああああああ!! クズ如きが儂に勝とうなど思い上がってんじゃねえぞおおおお!!」
ガルドはユリに向けブチ切れ怒鳴る。
例え訓練であってもガルドは観衆を前に、部下を前に、負ける訳にはいかなかったのだ。それをたかが一人の少女に、最強のソロプレイヤーでも無い只のプレイヤーに、ましてやギルド<聖剣>の一介の構成員に負けるなどと有っては尚更だった。
そしてガルドは使う予定の無かった称号スキルを行使させられた。その事が、こんな年端も行かない少女に自身の予定を崩された事が堪らなく腹立だしかったのだ。
ユリはその様子に慄き恐怖する。大の男が異様な程に、我を忘れる程に怒る、それが敗れ倒れる自身に向けられる。その経験した事のない事態に戸惑い恐怖していたのだ。
しかしそれは終わる。この場所この空間には魔王が居たからだ。ロジャーに最後の一撃を加え魔王がふとユリの方へ顔を向けると、其処には敗れたユリが怒鳴られ怒られ蔑まれていた。油断していた。ユリの実力ならばまだ勝負は着いていないと、恐らく勝てると、こんな事にはならないと。魔王は怒り一瞬にしてガルドの前へと跳ぶ。
そして――――斬る。
ガルドはまるで割れる西瓜の様に真っ二つになったのだった。
「うぐあああああああああ!!!!!」
其処にガルドの痛烈な叫びが木霊する。身体が半分に、真っ二つに断たれた痛みによって。
恐らくそれは果てしなく痛い。現実に身体を裂かれるよりもある意味痛いのかもしれない。皮膚が肉が内臓が神経が、其れらが斬られゆく事を感じながら、意識を失う事も許されずその激痛が身体中を襲うのだ。
そして、ガルドは漸く解放される。
「ぐああ、な、何が起こった。儂の身体が傷付くなど、いやそれ以上に斬られるなどある筈が ...なっ!?」
其処にはガルドを冷酷に睨む黄金色の魔王の姿があった。
「そんな馬鹿な...ふ、ふざけるなああ!!」
立ち暴れんとするガルドであったが其処にセインとロジャーが駆けつける。そしてガルドは押さえ込まれ事態は沈静化した。魔王は倒れ押さえ付けられる男を見下し唯々睨むと、ユリと一緒に其の場から離れたのだった。
ザワザワ
観衆がどよめき騒然とする。目の前で起こったガルドの変化と魔王の目にも止まらぬスピードに、その凄まじい光景に誰もが息を飲み驚愕していたのだ。
――――こうしてユリは惜しくも敗れ、ガルドも魔王の手によって倒れたのだった...
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また時は遡り。戦闘開始直後、雷帝と朔夜は戦う。
相手はネコ、アイシス、グレン、ミーシャの四人だ。
「お前らとは一度戦ってみたかったニャ!!」
逸早く朔夜の下と辿り着いたネコが大槌を振るう。そしてそれは、空を切り大地を揺らした。
そこに一筋の矢が一瞬で飛び襲う。
「ニャアアア!!」
大地を衝くネコの胸にその矢が刺さり電流が身体を巡る。
そしてその一撃でHPバーは9割へと減った。
「ロックメテオ」
矢を放った雷帝へとミーシャが魔法を放つ。
人程の岩が突如頭上に現れ、降り注ぐ。
「っ危ねえー」
雷帝は後ろへと大きく跳びそれを躱していた。
そして飄々と呟くと再度矢を取り、引き、放つ。
「弓技初段、飛燕、雷装」
その矢は、地面すれすれに突き進む。
ミーシャを庇おうとその前へと駆けるグレンの股を抜け、突如急激に浮上する。
そして抉る様にミーシャの鳩尾へと突き刺さった。
「つああああっ!!」
「わりーな、それでも顔には当たらない様に狙ったんだ。勘弁してくれ」雷帝はそう呟きまた弓を引き構える。
その時既にアイシスは雷帝へと駆け着けていた。そして手に持つ長物の太刀を振るう。
一方その頃、ネコの一撃を躱した朔夜はその大きな隙を突き、無数の斬撃を放ち魔法を添えていた。
そして雷帝は、アイシスの迫る太刀を避けんと後ろへ跳ぶ。だがその切先が雷帝の左手を掠めた。
「っつ!!」
雷帝はその一撃を躱せなかった。
その武器のリーチを見誤ったのか、それともアイシスのスキル<柔軟性強化>による所か、振られた大太刀は巨大な弧を描き更に寸前で先へと伸びて来たのだ。構えた弓が逸れ、掛けられた弦が外れ戻り、矢が弾かれて地に落ちる。其処に更なる刃が振るわれる。
同時にミーシャの魔法が雷帝を襲う。
雷帝は逸早く、その横に振られる太刀を見極め前方へと、アイシスの下へと一回転する。そしてそれと同時に雷帝の居た場所に放電が走る。雷魔法は速度は早いが、発動迄に一瞬の溜めがあるのだ。
雷帝はアイシスの足元へと転がり込むと賺さずその右手で掌底を放った。
「うっ!!」
腹部へと放たれた掌底は、彼女を吹き飛ばす。
「なっ女性に向かって拳を飛ばすなど野蛮ですわ!!」
尻餅を着き、地に手を当てアイシスは男を睨む。
「わりー。でも手の平だから拳じゃねーし。それにお前は刀で俺を切ってんだろーが。こっちだって戦いにくいんだっつうの」
頭をワシワシと掻き、そう喋る雷帝は手加減をしていた。と言うか本気を出せずにいた。
やはりゲームとは言っても、女性に向け矢を放つと云う事にどうにも抵抗があったのだ。だからと謂って無抵抗にやられてやる程のフェミニストでは無かったが、回復すると分かっていても拳で殴る事や顔を傷つける事など到底出来る事では無かった。
そんな雷帝に再度雷が落ちる。其処にアイシスの刃が再び襲う。
雷帝の身体に電気が走り、刀に胸を深く切られる。
「ぐああがあああ!!...っつ、だからやりにくいって言ってんだよーーーっ!!」
それでも叫ぶ雷帝はアイシスから逃げる様に背を向け走り、朔夜へと駆ける。
「朔夜バトンタッチ!! って、こっちも女かよー!!」
(くそ男はあいつだけか、弓技二段、一本貫き、雷々装)
そう謂うと雷帝はネコを避けグレンへと、一本通しの上位技を放つ。
それは全てを貫く筈の技。だがそれは巨大な盾に防がれた。
何故ならグレンはその盾にほぼ全てのスキルを集約させていた。全てを防ぎ守らんが為に。
「マジかよッありえねー」
そして雷帝は驚き呟きつつも、足を止めずに朔夜を抜き、去り走る。
「わかった、でも雷帝甘すぎ」(アースニードル)
交差する朔夜は雷帝の様子に呆れ謂う。そして既に大きくHPを減らしたネコへ土の槍を放つと、雷帝を追うアイシスとミーシャに向け土壁を出現させる。
一方ネコは、地面からせり上がる土の槍を大槌で防ぎ、今度は雷帝へと駆ける。朔夜との相性が悪いと見て雷帝へと対象を変えたのだ。
そうして朔夜はアイシスへと距離を縮め交差する。
アイシスから振られる大きな一閃を上に跳びクルリと躱すと同時に頭上に向け炎球と剣技を放つ。
「ッアアアアア!!」
その攻撃はアイシスの髪を燃やし顔を斬り裂く。
その痛みにアイシスは叫び声を上げしゃがみ込む。
「このくらい普通」
朔夜は遠くに居る雷帝の方を見ると、そう呟く。
一方雷帝は先程とは打って変わって加減のかの字も無い痛烈な矢の雨をグレンへと降らしていた。そして迫るネコへと顔を向けると、その背後に頭を焼かれ顔を切られるアイシスが映る。
「容赦ねーな。てかあれ俺への当て付けかよ...悪かったよ甘くて」
雷帝は愚痴ると、重槍を構え突進するグレンの攻撃を横へと高く跳び躱し、身体を捻ると走り来るネコに向け矢を放つ。
「弓技二段、霍鳲鳥、雷々装」
それはまるで雷光の様に、慌ただしく飛び立つ無数の小鳥達の様に。巨大な矢が20本近くに分かれ、それぞれに意思が在るかの如く畝り曲がりネコへと集束する。
「ニャ!!?ニャアアアアアア!!!!」
その無数の矢が次々に避け暴れるネコへと突き刺さる。
そして刺さった矢の全てから電撃が流れる。
「はーやっぱ苦手だわ」
雷帝は溜め息を吐く。
そして遂に、ネコは倒れた。朔夜がそのHPの殆どを削っていた事もあり、あっさりとその戦いは終わりを告げたのだった。
一方朔夜もアイシスを斬った後、華麗に着地しそのまま駆けミーシャを反撃する間もなく屠っていた。魔術師のミーシャにとって朔夜の様なタイプは天敵と言っても良いだろう。それ程までにミーシャはなす術もなく敗れたのだ。
――――こうして戦いは、朔夜とアイシス、雷帝とグレンの一騎打ちとなった。だが、それが二人に思わぬ苦戦を強いらせるのだった...




