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魔王は虫と戦います

 その翌日 早朝 魔王

 

 我は早朝、ユリや朔夜によって例の如く叩き起こされ、現在鍛冶屋「ミーアキャット」に居る。


「じゃじゃーん! 聞いて驚け!見て驚け!! これがボス素材で作った武器とむぐっぼぶぐばー」

 ユリはまたしても慌ててマキの口を塞ぐ。しかし全く、マキさんは声が大きい。

 だが、目の前に広げられたピカピカの武器防具には我も含めユリ達も目を輝かせていた。

「か、格好良い。鮮やかな紅の刀身に、流線形を描く鋭い刃、そして左右で異なるフォルム。堪らんぞっ!!」

「うん、凄いね。私の片手剣も凄く恰好いい。それに防具も凄い素敵。鎧だけど軽いし必要な部分だけ守てくれるから動きやすいっ。流石マキさんですっ!!」

「可愛い。牙で出来た剣にモフモフの服。」

 三者三様、それぞれがその武器や防具、マキさんの腕を褒め讃える。

「そうだろうそうだろうっ。このマキお姉さんをもっと褒め称えれ~」 

 マキさんはそれを聞き、えっへんと胸をはる。こちらはユリと違い凄い迫力だ。などと思ったが、ユリが凄い顔で睨んできた。やっぱり怖いのである。

 

それから、マキさんは凄い早口で忙しなく各武器の説明をし始めた。 

 先ず朔夜の剣はブラッドウルフの牙で作られた様だ。その刀身の背には幾つかの小さい爪が付けられ、片刃のそれはまるで刀の様であった。

 防具の方はブラッドウルフの丈夫で軽い体毛を使って、胸と腰のみを覆った超機動性重視と謂った服である。しかも尻尾と犬耳が無料で付いておった。これには我もおおう!!と唸ってしまった。まるで獣人の様であったからだ。...それに何と言っても可愛いのである。勿論、ユリの方はまたまた見ないでおいたがな!!


 次にそのユリの武器はと云うとアーマークラブの小鋏を使った両刃の片手剣であった。その鮮やかな紅い刀身から、丁寧に丁寧に磨かれたことが分かった。そしてそれは素材の特性からかとても軽いのだ。

 防具は、アーマークラブの甲殻を用いていた。劔同様、紅く強固な鎧は、ユリの腕、肩、胸、腰を覆い、機動性と防御力を合わせ持った鎧であった。因みに鎧には金属で装飾が施されている。硬い鎧とユリの華奢な身体のアンバランスさが不思議と魅力的なのだ。流石マキさんである。

 

 最後にこの我の装備である。先ず二本の大剣であるが、右手用左手用と、それぞれ異なる形状をしている。

 もちろん素材はアーマークラブの大鋏、つまり鋏の大きい方であるな。それを左手用には左の鋏、右手用には右の鋏と使っているのだ。さらになんと、この大剣には恐るべき秘密が隠されておった。

 二本の大剣を重ね合わせることで二本の剣は、一本の巨大で鈍重な大剣にする事が出来るのだ。 

 さらに、この大剣にはレアアイテムである鎧蟹の最鋼殻が使われておる。鎧蟹の最鋼殻とは、アーマークラブの中でも最も硬く重い部分の事を言うのだそうだ。そしてそれを大剣の芯と刃に使ったらしい。

 マキさん曰く同じ鎧蟹の両鋏を使う事で、この大剣は一本が二本、二本で一本の一心同体、つまり一振同大剣なのだそうだ。

 鎧はユリと似た感じなので省略。だそうだ...ただ色を黒に染めてくれている。

 

 その後マキさんに多大な感謝と食材を送り、我らは始まりの森へと向かった。

 今日はメインイベントを終えたので、武器の使用テストを兼ねたレベル上げである。もちろんボスとは戦わない。というか、眠いので今日は戦いたくない。 

 因みにいつもは一本持ちであった大剣を、今回から二本重ね合わせて斜め掛けしている。通常一本の所さらにもう一本お付けして、お値段そのまま!!いつもより大変お得な気分である。

 そうして、我らは少し歩くと平和の森の入口へと着いた。

 

「うわー森ね」「森」「森だな」平和の森は森と云うことあって森である。

 至って普通の森なのでそれ以外言いようがないのだ。

 少し変わった点と言えば丁寧にも森の入り口にアーチ状の門があるぐらいであった。 

「うえー平和の森って苦手なのよね。出るのよ...虫とか虫とか虫が。」 

 何かと思えば虫であるか。たかが虫如き何をそんなに騒いでおるのか全くの謎である。

 ......そう思っていた時期が我にもありました。

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!

 

「ひっ!! うわああああああ!!!!!!」

 ......お主は見たことがあるか? 

 長さ8mもある百足がギチギチと音を立て、尋常ならざる早さでウネウネと、百本は有ろうかという無数の脚がそれぞれバラバラに動く姿を。

 そのくらい余裕と思った者も居るだろう。くっくっく...だが甘い。

 ムカデなど本の序ノ口である。次に現れたのは大量の蛆虫達であった。

 ぴょんぴょんと地を跳ね進み、ぶよんぶよんと脈打つ柔らかく半透明な身体、動く度にぎゅるんぎゅるんと内臓が動くのが見える。その蛆虫が20匹も30匹も集団となって向かってくる姿は本当に本当に怖かったのだ。

 ユリなんかもう狂った様に休む間もなく次々と、炎魔法を発動しながら発狂していた。気持ちは分かる。まあ結局、朔夜が殆ど狩ってくれたのだが。朔夜を我の尊敬できる人間リスト第一位に昇格させても良いだろう。ユリは第二位に降格であるっ。 

 因みに他にもバッタの様な魔物に、蜘蛛、にゴキ〇リなんかも居た。その様子は精神衛生上考慮して語らないでおく。

 

 そして先程、我が何故奇声を上げていたかと言うと。

 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!

「キラービーの集団に追われているからであるーっ!!!!」

「きゃああああああああああ!!」

「.........」

 まさに今。我等は100匹以上は居ようかと云う殺人蜂の襲い来る群から逃げているのだ。 

 一匹一匹は大した強さではないのだが、集団で強烈な羽音を立てて近付いて来られては、逃げるなというのが不可能であった。

 何が平和の森なのだ。この名を付けた者を探し出し、小一時間説教してやりたい気分である。

 

(くっ...しかし此の儘ではいつか追いつかれてしまう。ユリや朔夜の身に危険が及ぶ前に何とかせねばなるまいっ!!)

 魔王はキッと足を止め、その反動を利用し反転する。

「冗談は終わりだっ!! 喰らえエアスラッシュ!!」

 <エアスラッシュ>とは大剣剣技の一つである。空を断ち、衝撃波を遠くの敵へと飛ばす遠距離攻撃だ。

 スキルによって何重にも強化されたその一撃は数体の蜂を散らした。初撃としては十分であろう。


 続け様に魔王は大剣を二つに分かつ。先程まで一本の剣であったそれは、突如、双刀の剣へと姿を変える。魔王は殺人蜂が此方へと辿り着く前にその二本の大剣をそれぞれ回転させていく。

 その大剣が風を切り加速してゆく音は、奇しくも向かい来る蜂の羽音と類似していた。 

 回転する剣の速度が最大となり、飛び飛びに見えた大剣が徐々に繋がり巨大な丸盾の様になった時、大きな蜂の群と遂に衝突した。

 

 固い物とぶつかり弾く様な音が鳴る。それは巨大な剣が蜂の身体を次々と切り裂く音だった。

 そして隣からは炎の玉、槍、渦が舞い、回り込もうとする蜂を呑み込む。

 朔夜もまた、一本の剣だけで蝶の舞の様に華麗に、四方八方の蜂を断つ。

 

 30分は経ったであろうか。遂にあの大量の殺人鉢が残り一匹となる。我とユリは多少の傷は負ったが問題ないだろう。精霊の加護のお陰で状態異常も怖くない。朔夜は流石、一撃喰らってはいなかった。 

 そして最後に残ったのは、先程までの蜂より一回りか二回りも大きい全ての蜂の母、殺人女王蜂であった。


 魔王、ユリ、朔夜は最後の一匹へと、躊躇することなく剣を振るう。

「「「いけ」えええっ!!!」」

 各々が最大威力の技を放ち、激しい衝撃が森を震わせる。

――――――ドガガアアアアアアアン!!!!

そしてその最後の一匹が遂に、地へと堕ちる。 

 空を舞った羽虫は光となり消え、激しい羽音は去り、先程の戦いが嘘であったかの様に辺りには凛とした静寂が訪れていた。

 

 チュンチュン...チチッ...パタパタパタパタ

 深緑の景色が一面に広がり、辺りの岩々や木の根にさえも鮮やかな緑の苔が生えるこの森に、木々の枝葉の隙間から柔らかい暖かな光が差し込み、その中で育み生きとし生けるであろう動物達の気配が溢れる。そしてその新緑の森で小鳥の番いが仲良く飛び立っていく。 

「平和の森」そう形容するに相応しい姿が其処には在った...。

しかし、その時。

 

<平和の森エリアボス「キラークイーンビー」Lv26を倒した>

<経験値: 783 取得> 

 テレレテッテレー♪

 テレレテッテレー♪

 目の前に文字群が表示されると同時に、あの音が二度頭の中で流れる。先程倒した敵はなんと平和の森のエリアボスだった様だ。

 

 ここ「平和の森」のエリアボスは個体では無く群体である。β版の時は巨大なムカデのボスだったのだが、多くの苦情が殺到したため比較的見た目が許容される蜂を、あまり巨大化せずに使用したからだ。 

故にユリも朔夜もボスだと気付かなかった。

 

<魔王のレベルが2上昇しました> 

<STボーナス:HP+34 / MP+8 / SP+7 >

<STボーナス:HP+41 / MP+8 / SP+10 >

<STポイント: 9 取得>

<STポイント: 8 取得>

 

 こうして意図せずも、我々は平和の森のエリアボスを討伐したのだった。 

 因みにこのボス討伐により、朔夜は称号が<大物を屠る者>に変わったらしい。そして、手にしたスキルは<月下の舞>と言う名だったそうだ。

 ただ、そのスキルの名に、我はある映像が頭の中に呼び起される。月の光の下で巨大な狼と舞う朔夜の姿を。称号スキルには何かしら取得者との関係があるのだろうか? 

 我が手にした<オーバードライブ>も、かつて勇者が使っていた技に似ている。我が今までに見た技の中で、最も強力だったあの技と。 

もしかしたら個人の記憶や意識が関係しているのかもしれない...


(それにしても我が、勇者の技を得るとは...皮肉なものだな。)


 

ボス討伐後の魔王とユリ、朔夜のステータス。(STポイント振り分け後)

 

----------------------------------------------------------

 

魔王Lv14 <勇ましき者>

 

 HP : 303/396

 MP : 86/102

 PP : 65/108

 

 ATK: 129 (+280)

 DEF: 62 (+75)

 MIND:60 (+55)

 

<SKILL>

<大剣剣技 Lv16> <大剣剣技 Lv16> <斬撃系技スキル強化 Lv14>

<斬撃系技スキル強化 Lv14> <筋力強化 Lv26> <火事場 Lv4>

<瞬発性強化 Lv13> <軽化 Lv19> <重化 Lv21> <魔眼赤 Lv8>

<人間感知 Lv6>

 

固有追加スキル <オーバードライブ>

 

-------------------------

 

 

----------------------------------------------------------

 

ユリLv13 <慈愛の救者>

 

 HP : 242/338

 MP : 12/101

 PP : 73/98

 

 ATK: 91 (+100)

 DEF: 73 (+70)

 MIND: 82 (+60)

 

<SKILL>

<片手剣熟練度強化 Lv26> <片手剣剣技 Lv24> <右腕強化 Lv21>

<瞬発性強化 Lv20> <俊敏性強化 Lv18> <魔法II Lv1>

<炎魔法強化 Lv21> <治癒魔法強化 Lv12> <スウェイ Lv19>

<ダッシュ Lv24>

 

固有追加スキル<精霊の加護>

 

-------------------------

 

---------------------------------------------------------

 

朔夜Lv16 <大物を屠る者>

 

 HP : 352/421

 MP : 106/106

 PP : 73/121

 

 ATK: 104 (+105)

 DEF: 73 (+60)

 MIND: 82 (+30)

 

<SKILL>

<片手剣熟練度強化II Lv3> <片手剣剣技初段 Lv2> <右腕強化II Lv3>

<反応速度強化II Lv11> <瞬発性強化II Lv7> <俊敏性強化II Lv5>

<空間把握能力強化 Lv27> <先読みII Lv13> <運強化 Lv22>

<魔法 Lv22>

 

 

固有追加スキル<月下の舞>

 

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