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魔王は薬を飲みます

 次の日の朝。

――――続け様に起こった二体目のエリアボス討伐の情報にその日の朝も町中がざわざわと騒ぎ立っていた。攻略組ではまたしても緊急会議が開かれた様だ。しかし前回以上にボス討伐者に関する情報はなく、ガルドはこめかみに青筋を浮かせながら静かに唸っていたのだった――――

 

---------------------------------------------

 

「ふぁ~ああ。にしても眠い...」

 我は今、技能の神殿に来ている。ユリと朔夜と共にだ。

 そのユリは朔夜を見るやいなや目を輝かせておった。一方の朔夜は困った様子で我を見てきたのだがな。ううむと取り敢えずユリには自重する様に頼むと、チラッと朔夜の表情を見た後に大人しくなった。

 まあ朔夜は静かなやつであるのでユリのハイテンションぶりには付いて行けぬのであろう。

 我も最初は戸惑ったものだ。つい先日の事だが訃と遠い昔の事のように懐かしく思う。

 その後ユリと朔夜は年も近いこともあり、ある程度打ち解けられた様であった。

 

「ふむ...それでだが、このスキル枠増加薬というのは何と無くわかるのだが、スキル昇華薬とは一体何なのだ?」

 疑問に思ってユリに視線を送る。つい先日、アーマークラブを倒した時に手に入れたものだ。パーティを解散していたのでユリは何も入手しておらず、ずるいと怒っておったな。

 我はユリの意見でパーティを外した訳だが、何故に怒られねばならぬのだろう。理不尽である。 

「さあ? 私が知るわけないでしょ。そんなのβテストの時はなかったんだからねっ!」

 しかも、未だご機嫌斜めである。怒った時のユリは怖いので勘弁して欲しい。 

「...う、うむ。ということは朔夜も知らぬか?」

「うん、知らない。」

 あっさりとキッパリとバッサリと返されたのである。

 朔夜は元々淡白な話し方なのでしょうがないのであろう。それに少し申し訳なさそうな顔をしている。

「いや、良いのだ。態々すまぬな」

 我が朔夜には謝ったのを見てユリが睨んできた。いや、気のせいだろう...うん。

 

「取り敢えずスキル枠増加薬を使ってみるとするか」 

 スキル枠増加薬は恐らく、その名の通りスキルの設定可能数を増やすものだろう。スキル昇華薬も名前から見れば何やらスキルに関するものの様である。

 <鑑識>のスキルを使えば分かるかと思ったがレベルが足りず、効果を見ることは出来なかった。 

 取り敢えずアイテムボックスからスキル枠増加薬を取り出す。にしてもこのアイテムボックスなるものは凄い。直径10cmほどの小箱で手が辛うじで入るくらいの大きさなのだが、我の大剣ですらも易々と入ってしまうのだ。

 大剣の二本持ちは目立つよと朔夜に言われ、我は現在大剣の一本をアイテムボックスに収納している。そう言えば朔夜は極端に目立つのを嫌う。恐らくそれで前に嫌な事があったのだろう、ユリも朔夜の事を知っていた様だしこの世界では有名なのかもしれんな。

 

 そう朔夜は我と同じ黒髪の少女である。元は皆黒髪なそうだが、この世界では自由に髪色を変えられるらしい。

 何故生まれ持った髪色を変えるのか理解出来ぬな。因みに朔夜も其れには同感な様である。フランスでは有色髪の方がスタンダード...と言っておった、ううむ時折りこの世界の言葉は意味がわからん。

 朔夜の身長は我とユリの間、こちらの世界で160cmといった所だろう。因みに我は165cmで、ユリは150後半と言ったところだ。マキさんの所で測って貰った時にメジャーなるものを見せて貰った。 

 ああ、それと言っておくが本当の我は2m近くあるし、それに強靭な肉体を備えておる。ふっふっふ、これは仮初めの姿だ。本当の我はまさに魔神の如しであるのだっ、ふあはっはっはっはー!! 

 話しを戻そう。朔夜はユリよりもさらにスラリとしておるがその鍛えられたであろう手足はまさに鋼の如しである。そして、あどけなさを持つが成長すればとても美しい女性へと成長するであろう精錬な顔付きをしておる。

 

 おっとそうであったスキル枠増加薬を飲むのであった。つい考えに耽ってしまった。

さて...ゴクッゴクッ!!

「うっ......ぬおおお!!!?」

「な、何!? どうしたの魔王っ!!? ちょっと大丈夫っ!!?」

......ユ、ユリは心配そうな顔で我を...見ているっ。朔夜もだっ...

「ま......不味いいいい!!!! な、なんて不味さだ!! うおえ! み、水を誰か水をおおお~」

「ゴクッ...ふおお、た、助かった。ありがとう朔夜...うぷっ」

「ちょっと魔王!? 心配してみれば不味いって何よ? 不味いって?」

 パキポキ!!

 助かった。いや助からなかったのか。

 だがなんという酷い味なのだ。こんな味にしたのは嫌がらせとしか思えん...まるでオーク共の唾液に、ワームを入れ溶けるまで煮込み、ゾンビバットの腐った血を入れた様な味だったぞ!

(くっまあいい、取り敢えず結果の方を見ておくか。メニューオープン、スキル詳細)

 

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スキル詳細

 

<大剣剣技 Lv9>

<大剣剣技 Lv9> (双大剣技スキル発動)

<斬撃系技スキル強化 Lv7>

<斬撃系技スキル強化 Lv7>

<筋力強化 Lv12>

<スウェイ Lv4>

<瞬発性強化 Lv5>

<軽化 Lv11>

<重化 Lv10>

<魔眼赤 Lv4>

< 空き >

 

固有追加スキル <オーバードライブ>

 

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 たしかに其処には< 空き >と描かれたスキル枠があった。どうやら成功したらしい。

「で、どうだったのよ? スキル枠は無事に増えたの?」

「うむ、ちゃんと増えておった。味は別にして効果は本物らしいの」

「そう...なら私も」朔夜が謂う。

「「え!!??」」 

 朔夜の言葉に時が止った。なんと朔夜の説明によるとブラッドウルフを倒した時にソロボス級討伐第二回報酬なるものが表示され、スキル枠増加薬が手に入ったらしい。

 どうやら我を毒見役に使った様である。綺麗な顔してさらりと悪どいことをやりおる...言っておくが魔王だからと言ってそこに痺れたり憧れたりはせんぞっ!!

 ユリの方はと云うと何故かさらに鋭い目付きで我を睨んでおった。え?我なんか悪いことしたの......?

 

 朔夜はアイテムボックスから同じ小瓶を取り出しクイッと飲み干した。しかも水を片手に用意してすかさず飲み流しおった......なんだか損をした気分である。

「よし、では早速スキルをもう一つ入れてみるかの!」 

 ポチポチ。あ、そうだこれはあんまり使わんし別のに変えるか。じゃあポチポチと。ふむふむ。

「よしっ設定終了だ!!」

「今回はやけに早いわね。悩まなかったの?」ユリはふと湧いて出た疑問を投げかける。

「まあ、前から考えておったからな。それに戦闘で使ってみて不要と思ったスウェイを外してみた。」

 そうなのだ。スキル増加薬が手に入った時から考えてはいたが、昨日朔夜と出会ったことで答えは決まっていたのだ。スウェイは殆ど使う機会もなく、身体を使って素直避けた方が戦い易かったので外した。まあ、魔眼赤は気に入っているからな、勿論そのままだ。

 

「ってスウェイ外すって正気!? あんたどうやって避けるつもりよ? ただでさえ大剣二本で敵に張り付く超近接攻撃なんだからありえないわよっ!」

 そこからまた例の如くユリを説得してなんとか了承を得た。

 全く、何故我がユリの許可を得ねばならぬのか謎である!! と言っても怒られるのは嫌なのでしょうがないのだ。

「朔夜もスキルを付けたか?」

「うん。付けた」

「そうか、ではい「って結局何を付けたのよっ!!」


 新たなスキル枠とスウェイに代わって付けたのは、<人間感知>と<火事場>である。朔夜とブラッドウルフの戦いを見て殊更思ったのだが実力の拮抗する場合、最後の人押しが勝敗を分ける。

 そして、追加枠に付けようと思っていたのが<人間感知>である。朔夜は人に戦いを見られるのが苦手な様だし、出来るだけその様な場所には向かわない方が良いと思ったからだ。それにこの前のボス戦で戦闘が始まる前に、彼の男の存在に気付いておければ命を救う事が出来たのやもしれなかった。

 まあ、我自身は気にせぬがユリは人一倍優しく傷つきやすいからなっ!!全くしょうがない奴だ!!ふわっはっは!

 こんな事を言うとユリを気にして助ける気満々だと思われるので黙っておく。取り敢えずユリ達には適当に説明しておいた。


 こうして技能の神殿でスキル設定を終えた後、ユリや朔夜とスキルの確認を兼ねた模擬戦闘を行い、我等はマキの店『ミーアキャット』へと向かったのだった。

「こんにちはー!!マキさーん素材いっぱい手に入りましたよー」

 ユリは『ミーアキャット』の扉を開けるや否や、マキに向け第一声を放つ。

「いらっしゃ~い。ユリちゃんに魔王くん! あらっそこの美人さんは誰!? 誰なの!!? 何処かで見たことあるような気がするんだけどな~。うーん、わかんないや! で、今日は良い素材でも手に入った?」

 マキさんはいつも通り忙しなくユリに質問する。

「へへーびっくりしますよ~。っとでもお願いがあるんですけどこれからお客さん来る予定とかあります? 実のところあまり大っ広げには出来ない感じの素材なんですよ...」 

 ユリ達と話し合いマキさんに加工をお願いすると既に決めていた。

 そして一般にはボス討伐の事実を公表しないことに決めたのだ。

 何故ならボス討伐を公表する事は非常に不利益が大きいからだ。

まさに百ゴブリンあって一理なしである。

「おーっと穏やかじゃないね~何だい? 何をやらかしたんだい!!? まさかそこの美女を匿って欲しいとかっ!? キラキラ! 何か入り用なら営業中の看板下げても大丈夫だよっ」

「い、いいえ違います。でも本当ですか? ならマキさんを信用させて貰ってちょっと相談をごにょごにょ......」

 ユリはマキの耳許で小声で呟く。

 それを聞いたマキは目をカッと見開き、急ぎ看板をCLOSEにしてカーテンを占め鍵を掛けておった。

す、素早い。

「よーし! 情報の秘匿ならこのお姉さんに任せなさいっ! 伊達に鍛冶屋で店開いちゃいないよっ。お客の情報が漏れたと有っては店の信用に関わるからね! それじゃ早速見せて見せて!!」マキは子供の様に目を輝かせておる。

 恐らく本プレイ版なる今の世界で出る新規アイテムなるものに期待しているのだろう。

 ユリ曰くβテスターへの配慮として序盤では追加仕様が多いのだそうだ。 

――――そしてユリは視線を魔王と朔夜へ順に向け合図を送る。それを見て魔王と朔夜はアイテムボックスからゴロゴロとボス素材を取り出した。

 

「え! ってええーー!!!!......これってボスのっむぐいにょもいー」

 マキの声に慌ててユリが口を塞ぐ。ユリはそれからしーっと指を立て口に当てた。

「ここれって...分かったわ。私に任せなさいっ! それにしても凄い量ね...何体狩ったの?」 

 カウンター中に広げられた素材の量にマキは目を丸くする。

――――何故ならパーティを組むとその報酬素材は人数に合わせて分割されるからだ。通常のボスでは10人程のパーティで一人当たり5~6個。だが今回、魔王達はソロ討伐だった為60個近い素材が手に入った。そして当然その中にはレア素材と呼ばれるものも存在する。


 それから我はユリ達と共に欲しい武器や防具の注文を行った。そしてマキさんへの報酬は口止め料も兼ね、余ったボス素材を提供することで決まった。 

「この量じゃ出来上がるのは一人当たり2時間、合わせて6時間ってとこね~。でも今日は遅いから、急いで無ければ明日の朝一番ってことでいいっ?」

 我等はそれを了承しよろしくお願いしますと言って店を去った。

因みに朔夜の体の測定もあの早業で済ませている。 

「ふー今日もまた濃い一日であったな。これからレストランにでも向かうか?」 

「んーそれも良いけどせっかく今日からは三人なんだし、街の屋台巡りなんてどう?」今日から三人などいつ決まったのだろうか。

 ふと、隣に居る朔夜に目をやると、嬉しそうに肯定する言葉が返ってきた。

「うん三人。屋台初めてだから楽しみ。」


「そうだなっ。我も屋台というのは初めてだ! では早速行こうではないか!! ふーっはっはっは!」

 

 

 

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