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第1編 Justice of Bullet  作者: SEED
第3章 革命を行う者
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膨大なノイズの狭間で。




そしてあれから数日がすぎ、今日は終業式。学校は冬休みに入ろうとしていた。


「今日は終業式だね。」


「そうだな。」


天翔たちは今教室から体育館へ向かっているところだ。今から校長の長ったらしいどこの学校でもあるような話を聞かなければならない。


「ところでカケルくんは冬休みどうするの?」


「俺か?・・・東京に戻るよ。」


「え・・・」


結衣は絶句した。それはそうだろう。なんだって忌まわしい、そして悲しい感情しかつまっていない場所へ戻ると言うのだから。


「俺は決着をつけないといけないんだ。」


「沙紀と、『あっち側』『こっち側』ともな。」


「・・・・・・」


「だから、行くよ。」


「そっか。なら、私も行くよ。」


「え・・・」


今度は天翔が絶句する番だった。


「私はこれでもエージェントだよ?カケルくんはハッカーでしょ。それならアタッカーが必要じゃない。」


「いや、だけど。」


「私はカケルくんのこと一番信用してるし、カケルくんも私の事信用してるでしょ?だから、私も行く。」


「・・・・・分かったよ。」


ただ、天翔は心配だった。ここに残しておくのも、そして一緒に連れて行くのも。


「なら今日帰ったら東京行きの準備しないとね。」


「ああ、銃とかはあっちで準備しよう。俺にツテがあるから。」


「分かった。」


そして天翔たちは体育館の中へと足を踏み入れた。その後、みんなの顔がげっそりしつつも教室についた瞬間明るくなったのは気のせいではないだろう。





最後のホームルームが終わり、晴れて冬休みに突入したわけだが俺たちはまだ忙しい。なんていったって東京行きの準備を今日のうちにして、今日の夜の飛行機で出発する予定なのだ。


結衣と急いで家に帰ると結衣のおばさんが笑って封筒を結衣に渡していた。天翔は邪魔だろうと考え、自室にこもって準備をしていた。そして荷物をもってリビングに行くとおばさんがテレビの前に座っていた。


「おばさん、行ってきます。今までありがとうございました。」


「ううん。こっちこそありがとう。いつか今日みたいな日がくることは『あの時』からわかっていたわ。それでも、天翔くんが一緒だと安心できる。結衣をよろしくね。」


「はい。絶対守って見せますから。そして二人でまたここに戻ってきます。」


「うん。」


おばさんは泣きながら出発するときも手を振ってくれた。


「結衣、行こう。」


「うん。」




天翔と結衣は飛行機へ乗り、東京へ飛び立った。












東京に着くと、時間は午後11時だった。ここからホテルまで歩いていくことになっている。


「徒歩だと時間かかるな。タクシーで行くか?」


「ううん。私は大丈夫。それより途中で銃とかも見ていかないと。」


「そうか、そうだな。ホテルに行く途中によっていくか。」


そして天翔は端末をポケットから取り出し、メールを打つ。







「ここだ。」


天翔はあるマンションの地下駐車場の前にたっている。


「何もないよ?」


その質問は正しい。天翔の前には壁しかないのだから。しかし、天翔が取り出したカードを軽く掲げるとそこへ赤い光の線が殺到し、ロックの解除音が聞こえた。数秒して目の前の壁が変形し、さらに地下への階段が現れた。


「ふえぇ~、なんかハイテクだね。」


「東京で店かまえるにはこれくらい必要ってことさ。」


そして天翔と結衣は階段を歩いていくとひとつの広い空間に出た。だいたい30畳くらいだろう。


「いらっしゃい。」


おくからいかにも硬そうなおっさんが出てきた。こいつは昔からの知り合いの板東ばんどう 力弥りきや。銃の流通関係のプロだ。


「久しぶりだな、リキ。」


「おぉ!お前天翔じゃねぇか。今までどこに行ってたんだよ、行方不明とか噂が流れてんぞ。」


「まぁ、それも正しいかな。俺あの組織から出てきたからな。」


「そうだったのか。お前なんだかんだ言ってあそこにいたからな。んで、今日はなんのようだ?」


「こいつに銃と装備一式だ。」


「女?」


「はじめまして、上谷 結衣です。」


と結衣は俺の背中から出てきて挨拶をする。


「おいおい、天翔。こんなのに銃渡すのかよ。」


「言っておくが、一級ライセンス持ちだぞ。」


「なに?」


天翔は結衣にライセンスを見せるように促す。結衣はライセンスを取り出し、力弥に見せる。

そもそもライセンスとはアメリカなどの大きな銃国家の訓練、ノルマをクリアすると認定されるものだ。これは俺もSSランクのライセンスを持っている。結衣のはAAランクだ。


「まじもんかよ。わかった。用意しよう。それで、本命はなんだ?」


力弥はこっちをジロッと見てくる。天翔はニヤッと笑いながら言った。


「ウルティマラティオ・ヘカートIIがほしい。」


「なっ、それは、もちろんPGMプレシジョン社 のボルトアクション、そして50BMG弾を使う最強の対物ライフル・・・・のことだよな?」


リキが驚くのも当然だろう。なんて言ったてそれはあまりに強力すぎて人に向けて撃つのを軍が禁止したくらいの威力だ。


「そうだ。金はいくらかかってもいい。それとヘッケラー&コッホ社のH&K MP7も頼む。このサブマシンガンと組み合わせれば接近したときもしのげるはずだ。」



「それだけの勝負になるってことか。わかった。」


「準備しよう。金は後でまとめてお前に請求でいいな?」


「ああ。」


「ならまた後日連絡するから、きてくれ。こっちの女の子の希望も取れたからOKだ。」


「了解。じゃ、よろしく頼むよ。」





地下駐車場から出ると外はすでに外は薄暗かった。


「結衣。」


「うん?」


結衣は天翔の後ろから出てきた。そして隣に並び俺の手を握る。


「もうホテルに戻るか?」


「そうだね・・・・・カケルくんの家に行ってみない?」


「家に?」


「うん。見てみたいな。私がいない間カケルくんがどういう風に暮らしてたのか。」


「分かった。行ってみるか。」


そして天翔と結衣は手を握りながら家の方角に向かって夕日の中を歩き始めた。






家の前につくとそこには一つの影があった。天翔たちが近づくとこちらに振り返った。その人物は悠真だった。


「帰ってくると思ってたよ。天翔。」


悠真は笑顔を浮かべたまま第一声をかけた。


「なんで、ここにいるんだ?」


「なんとなく、天翔がくる予感がしたんだ。・・・・・結衣ちゃん、久しぶりだね。」


天翔の隣にいた結衣はその顔を見て、軽く会釈した。


「しばらく家にいるのか?」


「いや、別なところだよ。」


悠真は少し残念そうにしながら「そうか」と告げた。


「天翔、俺はしばらくP.J.F.Aの本部の中にいるから何か『こっち側』で知りたい事あったら俺に連絡しろよ。」


少し、意外だった。


「いいのか?」


「お前が『こっち側』じゃなくても俺はお前の親友だよ。」


「悠真・・・・・ありがとう。」


「ああ、じゃぁ俺は行くよ。またな。」


そう言い残して悠真は道路の暗闇に消えていった。



家の中ははっきり言ってきたなかった。しかし自分の部屋だけはそうでもなかった。


「やっぱりカケルくんの部屋は綺麗だねぇ。」


「まぁな。置くものなんてパソコン以外ないし。」


「・・・・・」


「・・・・・」


お互い飲み物を口にしながら沈黙。


「ねぇ、カケルくん。隣行っていい?」


「・・・ああ。」


結衣は天翔の隣に座ると床に置いていた手を握ってきた。


「カケルくん。私だって女の子なんだよ?」


天翔は結衣の不可解な質問にうなずいた。そんなことは見れば分かるからだ。


「ああ。」


「何もしてくれないと・・・悲しいよ?それとも私って沙紀ちゃんより魅力ない?」


そこで天翔は内心納得していた。つまり、結衣は不安だったのだ。いつも隣にいるだけで滅多に触れてくれることのない恋人が。


「そんなことない。結衣は可愛いよ。なんていうか、俺は今まで隣にいるだけで幸せだったんだ。」


「そう、なの?」


「ああ。・・・結衣、顔上げて。」


そして天翔は結衣の柔らかな唇に自分の唇をかぶせた。


「・・・・・・んん。・・・・ぷはぁ、カケルくん、見かけによらず激しいね。」


「結衣が可愛いからだよ。」


そう言って天翔は結衣の体をお姫様だっこで持ち上げ、後ろのベッドに横にした。



そして天翔は結衣の体に上に横になり、思考を手放した。
















「ずいぶん暗くなっちまったな。」


天翔は空を見ながら携帯のディスプレイで時間を確認した。ディスプレイの中のデジタル時計は22時を指していた。


「そ、そうだね。」


結衣はどこか上の空で話に返事にをする。


「どうした?結衣。」


「え、あ、・・・・・なんとなく、ほら、ね?」


「?」


「は、恥ずかしくて。」


「あ、ああ。」


そういうことか。つまり結衣はさっきの事をフラッシュバックしていたのだ。


「えっと、・・・・・」


「カケルくん・・・、ありがとっ」


結衣は月光のしたでとても、輝いていた。

沙紀のことはまだ忘れていない。しかし、今は心から結衣が好きなんだろうと、感じた。














今、この時を。ずっと生きていけたらと思う。しかし、それは叶わない。


俺たちはそれでもこの腐りきった膨大なノイズの狭間の中で、生きている。精一杯。


生きている。




















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