忘れし過去との対面
今日は日曜日だ。
休日だ。
一ヶ月で4回しかない日だ。
しかし、世界の中ではその中でも働き続ける人がいる。
「憂鬱だ。」
「そんなこと言わないの。」話しかけてきたのは幼馴染兼恋人の春本沙紀だ。
今俺たちは自分以外誰もすんでいない碓氷邸で荷物をまとめている。なぜなら今日の朝大臣からもらったメールには予想通りの内容が書いてあったからだ。
『今日の午前10時発の飛行機で鹿児島の種子島へ飛んでくれ。1泊2日の旅だ。未確認との接触は今日だ。目的さえこなしてくれれば後はフリーだ。短いといっても活動内容は報告するように。以上。』
これを見て、俺は落胆もしたし、喜びもした。ハードスケジュールだけど、早く終わるからだ。
「よしっ、準備完了。」
「時間は、、そろそろだね。空港まで一緒に行く?」
「いや、家の前に関係者の人が迎えにくるらしいから、大丈夫だよ。」
「そっか。」
机の上においてある携帯が振動した。それを俺は開くと迎えが家の前に着いたという連絡だった。
「ああ、・・・・よし、もう行くよ。沙紀も気おつけてな。」
「うん。ありがと。」
家を出ると前にはひとつの黒い普通車が止まっていた。
「こんにちは。よろしくお願いします。」
スーツを着たこわもての人は「どうぞ」と言ってこう後部座席のドアを開けてくれる。それに乗り込むと車は静かにモーターの音をかすかに響かせながら出発した。
空港までは時間にして30分ほどでついた。車が停車したので降りようとするとまたしてもこわもての人が「どうぞ」といってドアを開けてくれた。
そして一枚の封筒を手渡された。
「これに飛行機のチケットと旅のスケジュール。宿泊先の地図。旅の経費です。」
「わかりました。」
そして飛行機に乗り、
東京の空へ金属の大きな塊は
必死に上へ上へ手を伸ばしながら
飛び立った。
空港に着くと、生暖かい風が顔をなでていった。
「こっちは暑いな。」
もうすでに夏が終わりそうだというのにここはまだ暑い。今の時刻は午後14時。そろそろ時間だ。
まずはホテルにチェックインをするためにホテルへ歩き始めた。
宿泊先のホテルは小さな木造の2階建ての旅館だった。
受付の前にまで行くと一人の女性が対応してきた。
「すみません。予約していた者なんですが。」
「お名前をお願いします。」
「あっ、はい。碓氷天翔です。」
「はい、ありがとうございます。」
「部屋へご案内します。」
「ありがとうございます。」
階段をのぼり、2階の一番端の部屋を通される。部屋の中は以外と広かった。
「おぉ、意外と広いな。暇だし思い出の場所でもまわって見るかな。」
とりあず荷物をおいてノートパソコン1台をかばんに入れ、必要なものを詰め込み部屋を出た。
「どこもかわってないんだなぁ。」
小学校の頃にいた学校、病院、図書館、親父の都合で半年だけ通った中学校。
「にしても田舎なだけあって人いねぇ~。」
そろそろ時間は午後4時を回るところだ。学校が終わったのかまばら制服すがたの人が見える。
海まで行くと、綺麗な夕日が広がっていた。
「ここはいつきても綺麗だ。」
しばらく心洗われる景色を堪能したあと、時間が迫ってきたので目的の場所に向かう。
あの暗号文に記してあった場所は、昔俺が半年通っていた中学校と家に間にある通学路だ。そこはなだらかな丘が広がっていて、種子島を一望できると同時に種子島宇宙センターも見えるのだ。そこから見える風車を見ながら昼寝をするのが帰宅部である俺の日課だった。
俺はそこがお気に入りの場所だった。だからいつも・・・・・・いつも。。。。
「いつも・・・・・?」
何かが引っかかる。とても、大切なことを忘れているような。何かが。
通学路の道をまっすぐ進み、途中からそれる。そこにはその場所が広がって・・・・・・誰かがいる。
あのシルエットには見覚えがある。
そう。
あれは。
相手がこっちに気づいたようで、体をこっちに向けてくる。
「こんにちは、久しぶりだねっ。カケルくんっ。」
とびっきりの美少女が俺の名前を読んでいた。




