疑いが拭えない
桜花が龍斗に近づいてきた。
「……な、なな、なんでこっち来るんだよ……」
龍斗に逃げ道はなかった。
「………」
桜花が龍斗の前で立ち止まり、顔を覗き込んだ。
「ッ!?」
龍斗が驚いてバランスを崩し、後ろに倒れそうになった。
「……っと」
その瞬間、桜花が龍斗の腕を引いて、後ろに倒れそうになった龍斗と椅子を前に戻した。
「大丈夫?」
桜花は一瞬、王子様ではなく、普通の幼馴染のような顔になった。
「…ッ……大…丈夫……」
龍斗の顔は赤かった。流石ヒロイン…!間違えた。ヒーロー!
「本当に?顔赤いけど……熱でもあるの?」
桜花が龍斗の額に手を当てようとした途端、龍斗がガバッと立ち上がり、桜花と距離を取った。
「熱……ねぇから……!」
美玲は龍斗と桜花を見てニヤニヤしている。
「…?龍斗、なんか変だよ。どうしたの?」
「へ、変じゃねぇし!どうもしてねぇ!」
「…それならいいけど」
桜花はまだ疑いが拭えないようだ。
「桜花ちゃ〜ん」
さっきの龍斗に対するぶりっ子っぷり(?)は何処へやら、美玲は桜花の腕にひしっとしがみつき、龍斗の方を見てニヤッとした。
「ん?どうしたの、美玲ちゃん」
桜花はしがみついた美玲をすっと見下ろした。桜花はその顔も美しかった。
「なんでもな〜い。龍斗くんの代わりをやってるだけ〜」
美玲は一瞬桜花の顔の良さに固まったが、すぐにいつもの調子を取り戻した。
「龍斗の代わりの?」
桜花が龍斗の方を見た。
「………」
龍斗は静かに怒っていた。般若のような顔をして。
「なんで龍斗は怒ってるんだろう?」
桜花は首を傾げた。
「美玲知らな〜い」
「ふ〜ん……」
桜花はじ〜〜〜〜っと龍斗を見つめた。
「……………ッ!?」
龍斗はやっと桜花の視線に気がついた。
その時、
キーんコーンカーンコーン
予鈴がなり、担任の佐田が教室に入ってきた。
「お〜い。席つけ〜」
佐田が気だるそうにあくびを噛み殺して言った。
「まったね〜桜花ちゃん」
美玲はぴょんっと桜花から手を離し、自分の席に向かった。
「うん。またね」
桜花は王子様スマイルをかまし、自分の席についた。
「……」
龍斗も苛立ちを抑え見れないまま、席についた。




